紙の本
誰が為、何が為の政治
2020/04/21 08:10
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投稿者:司馬青史 - この投稿者のレビュー一覧を見る
政治とは人々の幸福のためにある。
政治と聞くと、どこか力のある人々や一部の人々のために行われるようなイメージがある。悲しいかな、それは歴史の中で繰り返されてきた事実である。
しかし、政治と言うのは本来、人々のために行われる、幸せのために行われるモノではないだろうか? むろん、現実には人々全員が満足して、幸せになる政治と言うのは存在しない。
それでも、1人でも多くの人のため、幸せになるための政治こそが、理想だろう。
300年余り前、江戸時代の日本でそれを実践したのが本作品の主人公・保科正之だ。
正之はその不遇な境遇にも関わらず、歪む事なく、誰かを憎む事もしなかった。むしろ、自らの境遇を糧にして、人々のために尽くす政治を実行した。
世界で最初の年金制度の創設や、救急医療制度の創設、基金のための社倉制度、大胆な財政出動による災害復興…等々、正之の実行した政治はどれも先進的だ。先進的ではあるが、その根底には人々のため、幸せのためという思いがあった。
そんな正之がいたからこそ、江戸時代の日本は世界でも数少ない、高度な社会を実現する事ができた。
しかし、現在の日本は、政治はどうだろうか?
一体、今どれだけの人が人々のための政治、最小不幸の政治を思い、実行しているだろうか?
保科正之に対し、今の私たちは胸を張って政治を語れるだろうか?
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名君の碑 保科正之の生涯
2012/11/05 14:45
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投稿者:よっしー - この投稿者のレビュー一覧を見る
何という爽快な読後感だろう。江戸時代にこのような政治家がいたことに驚きとともに誇りに思う。会津の家訓は、正之によって編まれたものだが、幕末の折に旧態として必ずしも高い評価はない。しかし、編まれた当時を記す本書を読むと必然であったと。徳川二代将軍秀忠の異母弟だが、成人まで隠れて育ったという不遇な人生。後にも名乗りを上げられない。しかし、卑屈にならず、むしろ徳川家の安泰のみを念頭においた生き様は、昨今「ありえない」姿である。私は、同作者による「知恵伊豆に聞け」「われに千里の思いあり(前田三代)」を先に読んでいたので、同時代を立体的に見ることができた。
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江戸時代初期、二代将軍秀忠のご落胤として生まれた幸松は、信州高遠の保科家を継ぐ。やがて異母兄である三代将軍家光に引き立てられ、幕閣に於いて重きをなすに至る。会津へ転封となった後も、名利を求めず、傲ることなく、「足るを知る」こそ君主の道とした清しい生涯を、時に熱く、時に冷静に描く著者渾身の書。
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最後まで読みきれず。
テーマが地味すぎるせいなのか、硬い文体のせいなのか途中で退屈してしまい断念。
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保科正之、徳川4代将軍家綱時代に活躍した、民政を重点にした政策を行った名君で、会津藩祖。あまり知られていない殿様だが、現代の政治家、特に首相や大臣クラスの政治家に見習ってもらいたい人物。小説なので読みやすいのですが、約700頁とボリュームがあります。
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NHKの番組「BS歴史館 今いてほしい!?日本を変えたリーダーたち(2)保科正之」2012.4.27を見て感動し、すぐに本屋に飛んで行きました。
本著の著者中村彰彦氏も出演されておりました。懇切に保科正之の業績を説明する一方、朝敵として認知された会津藩の祖というフィルターを通してしか昨今は語られないことに静かに憤慨しておられる姿が鬼気迫っていました。
同じ出演者の黒鉄ヒロシ氏は「名君中の名君」と絶賛。
そこまで人にして言わしめる人物を丁寧に書ききった名小説です。
正之の出生こそが正之を運命付けたのであり、生涯その則を越えることなく卓越した業績を残したことがよく分かります。
会津藩主として副将軍ということは、現在に直すと福島県知事兼内閣総理大臣のようなものでしょうか。
名君中の名君、リーダー中のリーダーとは正之のほか確かに思い浮かびません。
スーパーマンと番組で誰かが言っており、まさにそのとおり。あの時代に正之なかりせば、徳川体制の崩壊はもっと早かっただろうと確信させます。
経営の一助にと思って軽く読みすすめましたが、この本は深く感銘を受けました。
会津藩の歴史をもっと深く知りたくなる出会いの本でした。
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2013.1読了
保科正之の伝記。歴史は苦手なので知らないことばかり。
くしくも今年の大河ドラマは、会津藩の八重が主人公。戊辰戦争で会津藩が京都守護職につくきっかけの家訓を残した人らしい(解説より)。
玉川上水の整備、年金制度の創設、残酷な刑の廃止など江戸時代の政治を武家から民をおもう政治に変えた人。この伝記を読む限り素晴らしい人。自分や保科家のことは顧みず、将軍家綱の補佐役として、江戸幕府を支えた。
うがった見方をすれば、自分の足元の藩の政治は家老に任せて、将軍を優先させただけという見方もできる。藩をうまく運ぶよりそっちの将軍家メインに仕えたほうがご褒美もらえたり、出世できたりするでしょう。藩政をがんばってくれた家老があってこその人だ。
逆に、世継ぎにあまり恵まれなかったのも、将軍家ばかり見てたからでしょう。こっちはお任せできる女性が見つからなかったから、うまくいかなかった。これを裏切りの章として、奥さんがひどかったエピソードを載せているが、自分の家を全く顧みなかったから、見破れないし、正せなかったんじゃないのと思う。私が出産を控えているから、そう思うのかもしれない。
現代の感覚で解釈してはいけないのかもしれないけど。
総じて周りで支える人に恵まれての名君だろうなと思う。この人ばかりがすごいのではない。
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会津松平家初代藩主である保科正之を主人公とした作品。
保科正之という人を私は「天地明察」で初めて知った。この作品の中での彼は、私のイメージしていた所謂「大名」とは全く違っていた。私の中の大名って、なんかこう民百姓のことなんかどーでもよくて、徳川ラブ!お上ラブ!みたいな上を見て尻尾ばかり振ってる的な…漠然とそんな感じだった。
ところが、保科正之は全く違った。島原の乱を契機に、何故一揆が発生するのか?何故民は飢えるのか?何故こんな事が起こるのか?と考え続け、その結果様々な善政を実行し、会津藩の安寧を実現する。まだ大阪夏の陣どころか関ヶ原からもそんなに経っていない時代。多くの大名はいわゆる「武闘派」で、民百姓のことなんざ屁とも思ってない。そんな時代に、もう戦いで世を治める時代は終わった、これからは文政で民を守り慈しみ、その結果藩政を豊かにし、ひいては徳川幕府の安定につなげる。こんなものの考え方をして実行した大名がいたのか?!と猛烈に惹かれた。ちなみに同作中の水戸光圀もグレイジーオヤジっぷりを遺憾なく発揮していて、こっちは冲方丁氏が別の作品で大暴れさせてるらしいのでそっちを読みたい。つか冲方先生お願いだから保科正之の本書いて!
他にも江戸城天守閣が明暦の大火、所謂、振袖火事で全焼したあと、再建しようとする案に反対。理由は昔は必要だったけど今は戦も終わってるし戦闘要塞としての天守閣なんか必要ないよね?だったらその金で江戸の町を再建した方がいいよね?というもの。このあたりの考え方が時代の先行き過ぎ。さらに玉川上水を作って江戸の町を潤そう!という案に対して「江戸への水路作ったらそこから進軍されちゃうじゃん!」という反対意見にも「誰が攻めてくるの?」と至極まっとうな意見で一蹴。他にもそれまで常識と言われてきたやり方を変えていき、成果を出していく。
それまでの常識にとらわれず、何が問題で、どうしたらその問題を解決できるのか?を常に学び、考え、実行し続けている。そして目的・目標がぶれていない。一に徳川家のため、二に民のため。やっぱりブレない軸って大事だよね。
勿論将軍の異母兄弟であり、叔父であり補弼役でもあり、ちょっと特殊な立場だったというのもあると思うけど、それにしてもやはり凄い。変えないのは楽。偉くなればそれは尚更じゃないかな?それを改革を続ける行動力。凄いよねぇ。
ここまで無理だとしても、この姿勢は見習っていきたいものだなぁ
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面白かった。
700ページ弱のボリュームだが、自分でも信じられないほどのペースで読み終わった。正直、キモチ悪いくらいの名君ぶりで、どこまで本当なのか?という気もするが、将軍の側室がどういう手順で将軍の寝室まで行くことになるかなど、まるで見てきたかのような詳細な描写で、その時代の背景も含めて書いてくれているので、リアリティーがある。
この作者の他の作品も読んでみたくなった。
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10数年ぶりに、読んだ。やはり保科正之が主人公とあって、秀忠の妻お江与が悪く書かれすぎるのが気の毒としかいいようがない。その点を除けば、本当に読み出したら止まらない作品。今回読み直して、島原の乱の際に、保科が家臣に不備な点を問いただしたり、武家諸法度のここがいけないという点を将軍家光に進言したりと感心しきり。
あと、高遠、山形、会津とお国替えするにしたがって、引き継ぎされていった家臣の処遇に関して、藩主としての心がけというものはこんなものだと勉強になった。
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三代将軍徳川家光の異母弟であり、名君と謳われた保科正之について書いた本です。
保科正之には数多くの功績があり、有名なのは殉死の禁止、社倉制度を作ってコメを蓄えたことにより飢餓でも餓死者をなくしたり、90歳以上の老人に扶持を与える年金制度を作ったり、と様々な政策を実現しました。
晩年は家族の不幸などもあったようで、数多くの見事な政策だけでなく、こういった人間味のある保科正之がよく分かりました。
↓ ブログも書いています。
http://fuji2000.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-479b.html
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そこそこページ数がありますが、読みにくさは感じません。
会津で「負わせ高」の廃止や江戸城天守閣再建に異議申し立てるところなど、ぐっときます。
保科正之公は、清廉を体で表すような偉人だと思います。
会津藩家訓十五か条も、私はその一に非常に感銘を受けるのですが、一方で、この類稀なる名君を藩祖とした会津藩の末路を思うと、無念というか、物悲しい気持ちになります。
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清流を泳ぐ鮎のように、始めから終わりまで清涼のなかを泳ぐように読めます。
江戸の名君と言えば、真っ先に米沢・上杉鷹山公を想い出しますが、その100年以上も前に、徳川方にこれほどの名君がいたとは知りませんでした。三代・徳川家光の腹違いの兄弟で、会津藩初代藩主。
時代考証は細部に至るまで丹念に調べられており、何より著者の保科正之に対する愛情がひしひしと感じられます。会津藩の家訓15カ条を制定し、「大君の儀、一心大切に忠勤」を第1条に定めたことから、会津藩は佐幕派となって保科正之ともども歴史から遠ざけられたようですが、足るを知り、私心なくことにあたる保科正之像はもっと知られてよいと思いました。読後は、心洗われる気分です。
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長編だけど分かりやすく読みやすくもあると思う。ただ、登場人物のセリフが少ないぶん感情面とか平坦に感じ、司馬遼太郎みたいな小説的読み応えは無いかも。
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少し長かったけど、保科正之は気になる存在。
『天地明察』にも登場する賢者。
文中ところどころ、現代に通じる蘊蓄があり、
勉強になりました。