「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
白い闇に包まれた公園で、僕は不思議な少女に出会った。「君?」 向き直った少女はゆっくりと自分を指差した。「貴方、私が見えるのね?」 それが最初のやりとりだった…。心暖まる現代のフォークロア。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
浅倉 卓弥
- 略歴
- 〈浅倉卓弥〉1966年札幌生まれ。東京大学文学部卒業。「四日間の奇蹟」で第1回「このミステリーがすごい!大賞」の大賞金賞を受賞しデビュー。他の著書に「君の名残を」がある。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
銀の糸で紡がれたような繊細さ
2005/02/23 10:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紫月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー作『四日間の奇蹟』で「このミステリーがすごい!大賞」を受賞し、二作目『君の名残を』ですっかり私の心を虜にしてしまった浅倉卓弥氏の三作目です。
読み始めてまず思ったのは、前二作と比べるとずいぶんと地味な作品だな、と。
これまでの天才的なピアニストが織り成す妙なる調べ、平安時代へ飛ばされた若者たち、といったような派手な設定はなく、今回はただただ平凡な若者が主人公。
人間関係に悩み、会社を退社するあたりの事情もよくあることだと思ってしまいます。
しかし読み進むにつれ、いいところも悪いところもひっくるめて、ああ、やはり浅倉卓弥の世界なんだなと納得。
現実には、こういう偶然は厳しいんじゃないの?なんと思う箇所もありますが、そんなことは無視して物語の中に入り込めば、心地よいロマンに浸れます。
銀の糸で紡がれたような繊細な、美しい筆致。
生命という大きなテーマを気負いなく物語の中に埋め込む潔さ。
時の流れというものを扱った『君の名残を』や、生と死を問いかけた『四日間の奇蹟』に通じる深さがありました。
——雪は夜をも染め抜こうと自ら柔らかな光を放ち始める——
こうした、随所に散りばめられた雪景色の描写が本当に美しいのです。
また、著者の作品はどれも音を効果的に使ってあるのですが、私にはなぜだかどの作品も『静』を感じさせます。
一作目は、聞こえてくるはずもないのに作中の美しい音色が聞こえてくるようで、それでもとっても静かな小説だと思いました。動乱の時代を描いた二作目も、笛の音を想像すると同時に、静かな夜を思い浮かべました。今回は雪が降り注ぎ、すべての雑音が排除されてしまったかのような、静かな町の物語です。
休みの日や夜のひと時、一人でゆっくりと読んだら癒されそうな、そんな作品でした。
紙の本
安定した筆致で読者を楽しませてくれる作家の出現は嬉しい限りである。
2005/02/20 19:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー作『四日間の奇蹟』のヒット(80万部らしい)と映画化決定で、ベストセラー作家への仲間入りを虎視眈々と狙っている浅倉氏であるが、第3作の本作でようやく宝島社以外の出版社から上梓、前途洋々な作家のひとりである。
本作は年に1度雪が積もるか否かのところに住んでいる読者の私なんかよりも、ずっと北国に住まれてる方の方が感情移入できることは容易に想像出来る。
それほど浅倉氏の情景描写は卓越している。
寒さの厳しさを身を持って体験している(浅倉氏は札幌出身らしい)氏のまなざしは一貫して優しい。
表紙の装丁も印象的で、まるで主人公の相模和樹が書いたようだ。
高校2年の冬に初めて雪子と出会って以来、8年ぶりに再会出来るには必然的に東京での挫折が必要であったのであるが、東京において挫折感を味わう過程が特に巧みに描かれてる。
特に水原・山根・吉田との関係というかバランスが現実的に書かれていて、読者も他人事ではない。
実際、主人公と同じような気持ち(挫折感&孤独感)を持って生きている人が多いような気がする。
というか、誰もが持ち合わせている“心の側面”をピンポイントに描いた作品なのである。
後半の8年前と全然変わっていない雪子を見て、驚き、やがて命の大切さを知って行く過程で読者の大半が心が洗われる。
--------------------------------------------------------------------------------
物語において妹、夏子の現実主義者としての演じる役割は大きい。
和樹は東京で馬が合わなかった吉田と夏子の婚約者である沢村とをオーバーラップしてるのだが、夏子に言わせれば所詮“似た物同志”なのである。
個人的な本音を言えば、この話は大人の童話としてもっと徹底してほしかった。
雪子が去って、美加との交際が始まるのであるが、雪子の生まれ変わり的存在として演出してほしかったなというのが私の希望である。
浅倉氏もロマンティックであるが私もロマンティックなのであろう(笑)
結果として本作は“現実とファンタジー”を融合させた力作と言えるであろう。
というのは、和樹が支えられたのは雪子だけではないからだ。
いや、雪子には“大事なことを教えられた”と言うべきであろう。
前述したが、妹・夏子の兄に対する“説教”に兄妹愛を強く感じたのであるが、ラストの“もうひとりの雪子”という着地点のつけ方からして浅倉氏も“兄弟愛”を力説したかったのだと思ったりする。
最後まで読み終えた後、もういちど序章の4ページを読み返して欲しい。
きっと感慨ひとしおになるであろう。
そう、公園はもうないのである。
読者も現実の世界に戻らなければならない切なさ。
真冬に読んで、せめて心の中だけでもぽっかぽかに暖かくしてほしい。
私だけでなく、浅倉氏の切望するところであろう。
トラキチのブックレビュー
紙の本
雪片のワルツ
2005/02/20 18:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る
17歳の冬、雪が降りしきる真夜中、家の近所の公園で出会った少女。—この世の存在ではない「雪子」。
主人公と彼女の出会いを描いた第一章のファンタジー色の強さに、ちょっと苦手…と感じて本を閉じてはいけない。
主人公が上京して働き始める第二章に入ると、ページを繰る手が止まらなくなる。
会社を「おそろしくいびつな生き物」と看破したことのある読者にとっては、興味深い組織論としても読めるだろう。
全編を通して印象に残るのは、色彩の扱われ方だ。
印刷会社にデザイナーとして就職した主人公の周りにあるのは、青、赤、黄、黒の組み合わせで表現される色の世界。
様々な色彩に揉まれた主人公が、帰郷して雪子と再会し、雪の白に浄化されていく中で世界との関わり方を捉えていく。
プロットと色彩がうまく融合している。
「生きるとは何か。」
「個は差異の中にしか存在しない。」
「言葉は常に事象の外側にある。」
本書は、こういった哲学的な問いを投げかけてくる深みのある作品でもある。
難点を言うならば、輪廻についての主人公と雪子の会話が、理に勝ちすぎているということか。
ただ、これは好みの問題だろう。
「生きていくということは失われていくものを見つめ続けることなのか」と悲嘆する主人公が成長を遂げる姿とラストのエピソードに、胸が温かくなる。
ここからは余談だが、本書に描かれた雪が実に美しい。
実際に雪が降ると、寒かったり、電車が止まったりして厄介極まりないのだが、本書を読むと、雪が恋しくて仕方なくなる。
チャイコフスキー「くるみ割り人形」の中に、「雪片のワルツ」という名曲があるが、あの曲を聴いた時と同じ感覚が味わえる。
雪片の冷たさ、物悲しさ、はかなさ、清らかさ、愛らしさ、軽やかさ、と同時に、降り積もる雪の荘厳さ、厳しさ、怖さまで伝わってくるあの感覚…。
しんしんと雪が降る日は、家にこもって、「雪片のワルツ」を聴きながら本書を読むといい。
そうすれば、翌朝、向こう三軒両隣の道路まで雪掻きする英気が養われるというものです。
紙の本
内容紹介
2004/12/24 17:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中央公論新社 - この投稿者のレビュー一覧を見る
北の街に暮らす高校生の僕は、白い闇に包まれた深夜の公園で、雪と戯れる少女と出会う。それから八年。都会の生活と大人の社会からはみ出してしまい逃げるように帰郷した僕は、雪夜の公園であの時のままの少女と再会する……。『四日間の奇蹟』の浅倉卓弥が贈る、心暖まる現代のフォークロア。