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読割 50
紙の本
陽だまりの偽り (双葉文庫)
著者 長岡 弘樹 (著)
物忘れのひどくなってきた老人が、嫁から預かった金を紛失。だがこのことで、老人は同居している彼女の気持ちに触れる—表題作。市役所管理の駐車場で人が転落死した。事件は役所内の...
陽だまりの偽り (双葉文庫)
陽だまりの偽り
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商品説明
物忘れのひどくなってきた老人が、嫁から預かった金を紛失。だがこのことで、老人は同居している彼女の気持ちに触れる—表題作。市役所管理の駐車場で人が転落死した。事件は役所内の人事に思いもよらぬ影響を与えた—「プレイヤー」。日常に起きた事件をきっかけに浮かびあがる、人間の弱さや温もり、保身や欲望。誰しも身に覚えのある心情を巧みに描きだした5編。2008年度日本推理作家協会賞受賞作家のデビュー作、待望の文庫化。【「BOOK」データベースの商品解説】
収録作品一覧
陽だまりの偽り | 5−57 | |
---|---|---|
淡い青のなかに | 59−109 | |
プレイヤー | 111−166 |
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紙の本
わりとよかったで~
2019/06/20 19:27
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
『傍聞き』の長岡弘樹の初期短篇集が『陽だまりの偽り』。
わりとよかったです。
デビュー作より、その後の方がよくなってるから、これから期待できそう。
紙の本
よくできた作品ですが、弱いかな。
2018/06/16 02:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
「傍聞き」がベストセラーになった長岡氏のデビュー作。
5話からなる短編集です。
「傍聞き」も確かに読んでいるはずなのに、どんな話だったか思い出せません。
この作品も5話それぞれに良く出来た物語になっているとは思うのですが、いつまでも忘れられない程印象に残っているか?と訊かれれば正直自信がありません。
良くも悪くも癖が無さ過ぎるのかもしれません。
ケチを付けるところは全然ないけれど、手放しで褒めることもできないというのが私の感想です。
紙の本
貴方の周りにありそうなミステリ譚
2016/08/28 23:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:テトラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
今や現代を代表する短編の名手ともされる長岡弘樹。彼のデビュー作は読者の町にもいるであろう人々が出くわした事件、もしくは事件とも呼べない出来事をテーマにした日常の謎系ミステリの宝箱である。
物忘れがひどくなった老人が必死にそれを隠そうとする。
自身のキャリアを高めるために必死に働くがために一人息子を問題児にしてしまったキャリアウーマン。
卒なく業務をこなし、出世の道を順調に上がろうとする公務員。
同僚にケガをさせたことで自責の念から職を辞し、実家の写真屋を受け継ぐが資金難に四苦八苦する元報道カメラマン。
ある事件から息子との関係が悪くなった荒物屋の店主。
全て特別な人たちではなく、我々が町ですれ違い、また見かける市井の人々である。そしてそんな人たちでも大なり小なり問題を抱えており、それぞれに隠された事件や出来事があるのだ。
これら事件や出来事を通じてお互いが抱いていた誤解が氷解するハートウォーミングな話を主にしたのがこれらの短編集。中に「プレイヤー」のような思わぬ悪意に気付かされる毒のある話もあるが。
気付いてみると5編中4編はハートウォーミング系の物語であり、しかもそれらが全て親子の関係を扱っているのが興味深い。
「陽だまりの偽り」はどことなくぎこちない嫁と義父の、「淡い青のなかに」と「写心」は母と子の、そして「重い扉が」はと父と子の関係がそれぞれ作品のテーマとなっている。
それはお互いがどこか嫌われたくないと思っているからこそ無理に気を遣う状況が逆に確執を生む、どこの家庭にもあるような人間関係の綾が隠されていることに気付かされる。逆に正直に話せばお互いの気持ちが解り、笑顔になるような些末な事でもある。
人は大人になるにつれ、なかなか本心を話さなくなる。むしろ思いをそのまま口にすることが大人げないと誹りを受けたりもするようになり、次第に口数が少なくなり、相手の表情や行動から推測するようになってくる。そしてそれが誤解を生むのだ。実はなんとも思っていないのに一方では嫌われているのではと勘違いしたり、良かれと思ってやったことが迷惑だと思われたり。逆に本心を正直に云えなくなっていることで大人は子供時代よりも退化しているかもしれない。
作者長岡弘樹はそんな物云わぬ人々に自然発生する確執を汲み取り、ミステリに仕立て上げる。恐らくはこの中の作品に自分や身の回りの人々に当て嵌まるシチュエーションがある読者もいるのではないだろうか。
私は特に中学生の息子を持つがゆえに「重い扉が」が印象に残った。いつか来るであろう会話のない親子関係。その時どのように対応し、大人になった時に良好な関係になることができるのか。我が事のように思った。
しかしこのような作品を読むと我々は実に詰まらないことに悩んで自滅しているのだなと思う。ちょっと一息ついて考えれば、そこまで固執する必要がないのに、なぜかこだわりを捨てきれずに走ってしまう。歪みを直そうとして無理をするがゆえにさらに歪んでしまい、状況を悪化させる。他人から見れば大したことのないことを実に大きく考える。本書にはそんな人生喜劇のようなミステリが収められている。
全5作の水準は実に高い。正直ベストは選べない。どれもが意外性に富み、そして登場人物たちの意外な真意に気付かされた。実に無駄のない洗練された文体に物語運び。デビュー作にして高水準。今これほど評価されているのもあながち偽りではない。また一人良質のミステリマインドを持った作家が出てきた。これからも読んでいこう。