紙の本
「悪人」の方が…
2016/01/03 21:56
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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻はミステリとして読み始めたが、そうした視点は外した方が良いと気づいた。実際、イギリス人女性英語教師の殺人事件をヒントにしていることが分かったからで、逃亡者の心の奥底を追って読むべきと受け止めたからだ。一部、中だるみもあるが、ラストはよくかけていると思う。
紙の本
期待通り!
2014/03/29 10:15
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
信じたい人を信じられない人間の弱さ。
意味も無く怒りを爆発させてしまう人間の闇。
人の苦しみを「ウケる」と薄笑いを浮かべる人間の悪意。
弱さ、闇、悪意それぞれは異なっているものなのに、この小説を読むと同じもの、似通ったものに感じられる。
整形によって逃亡を続ける殺人犯は誰なのか。
3人の殺人犯と思われる人物を全く異なった舞台に登場させるストーリー展開はさすが吉田修一。
期待通りです!
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釈然としないラストながらも込み上げてくるものはあって、じわじわとこういう終わり方もありかなと思えてきた。
以下ネタバレあり。
八王子郊外の住宅地で夫婦が惨殺され、血文字で「怒」と残されていた不可解な事件。犯人山神は鋭い一重まぶたを二重まぶたに整形をし、右頬に縦に並ぶホクロのひとつを爪で抉り取るようにするなど手がかりを変えながら転々と逃亡生活を続ける。
山神を追う刑事北見は死にかけの猫と暮らし素性の知れない女に心を奪われている。
千葉の外れで暮らす洋平、愛子父娘の元には田代と名乗る左利きの素性不明の男。愛子と田代はやがて恋仲に。
ゲイの優馬は右頬に頬が三つ並ぶゲイの素性不明の直人と出会い恋仲に。
沖縄波照間島で暮らす泉は素性不明の田中に出会う。田中は泉の同級生辰哉の両親が営むペンションでやがて働き始める。
愛子は田代を山神だと疑い通報する。
優馬は直人を山神か? と疑い問いただす。後日直人は消え、警察署から直人を知っているかと聞かれ不安になった優馬は知らないと答える。
泉は那覇で白人米兵二人にレイプされかける。その現場にいなかった辰哉は自分を悔やみ恨む。田中はその現場を偶然見ていた。泉は波照間島からボートで渡る星島で田中のかつての住処を見る。そこには赤いペンキで怒の文字。不気味に思った泉は辰哉と再び星島を訪れ辰哉は怒の文字の他にマジックで書かれた文字を発見する。
「米兵にやられてる女を見た 知っている女だった ウケる どっかのおっさんがポリスって叫んで終了 逃げずに最後までやれと米兵 女気絶 ウケる」
それを見た辰哉はその後田中を刺殺する。田中は山神だった。ここで一気に失速。いままでの興奮返せよって思うくらい。
という。八王子事件の全貌が何もわからないまま犯人死亡で幕が閉じてしまうというなんとも言えない終わり方なのだけれど、
その後、特に北見の猫が死ぬところから涙が止まりませんでした。北見は最後まで素性を知れなかった、知ることをしなかった女と別れ、
愛子は誤通報したことで田代の信頼と居場所を失わせたことを悔やむなか戦い再び田代が戻ってくるというハッピーエンド。
優馬は直人のことを知ることになる。亡き直人と生前夢見た絶景の場所で愛する母と直人を同じ墓にいれる。
泉は波照間島を離れた。
きっとこの作品も映像化するでしょう。わたしは田中ではない山神のことをもっと知りたかった、北見と同じで。なぜ八王子で夫婦を殺したのか。暑い夏の中親切に麦茶をくれた婦人を殺したのか。なぜその後数時間その家でくつろいだのか。逃げて逃げて、なぜ逃げ続けたのか。怒、という文字の中になにがあったのか。もっと知りたかったけど、この終わりもありなんだろうなと思えてきたので結果、すごく面白作品だったんだと思います。
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疑うのは簡単だけど、信じるってほんと難しいんだ。
自分を信じること以上に相手を信じることは、とても難しい。
信じる気持ちとそうじゃない気持ちが交差、そこに鬱積する複雑な感情、イラつき、怒り、矛先を変えて辛く当り、自分を正当化する。
心の矛盾。
怒りか。
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感じたのは、怒りというより哀しみ。相手を信じきれない哀しさ、信じてもらえない哀しさ。信頼ってどこから生まれるんだろう。新聞連載されてた時にちょいちょい読んでたけど、上下巻2冊を3日で一気読み。「悪人」より登場人物が多い分、様々な想いが渦巻いてて、心が震えた。私の中ではベストオブ吉田修一。
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吉田修一さんほど、男も女も、年齢も、立場も違う人々の心を理解して、それを的確に文章にする事のできる方が他にいるでしょうか。流石です。本当に素晴らしい。たった今読み終わりましたが、怒り、恐怖、喜び、悲しみ、色んな感情が渦巻いて、気持ちが落ち着くまでに少し時間がかかりそうです。
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一晩で一気読み。週末トリップ。
「信じるか、信じないか」を繰り返し問う登場人物たち。日本人の希薄なつながりが撮りたいという言葉を残して亡くなったドキュメンタリー監督を思い出した。
私が信じたいのは自分のチカラだなあ。ほかはきっとあとからついて来てくれると。
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内容(「BOOK」データベースより)
愛子は田代から秘密を打ち明けられ、疑いを持った優馬の前から直人が消え、泉は田中が暮らす無人島である発見をする―。衝撃のラストまでページをめくる手が止まらない。『悪人』から7年、吉田修一の新たなる代表作!
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信じることの難しさと、疑うことの恐怖。
大切な人をただ信じたいだけなのに。
悪人テイストかと思っていたけど、実際のところは真逆の話なのかもしれない。
『結局、大切な人ができるというのは、これまで大切だったものが大切ではなくなることなのかもしれない。大切なものは増えるのでなく、減っていくのだ。』
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ストーリーは興味深く、なかなか前に話が進まないのがもどかしいのですが、とにかく先が気になって上下巻ともわりと一気読みしました。
しかし、事件の真相がはっきりせず、消化不良な感が否めません。
北見の彼女の存在も最後まで謎なまま、意味深なだけで謎が明かされないので、なんでもはっきりさせたい性格のわたしにはもやもやだけが残りました。
3つの別々の場所での、まったく違う人々の3つの話が、1つの事件を中心として語られます。
どこかでひとつに収束するのか?と勝手に思っていたら、そうではなかったんですね。
身近にいる人を信じることの難しさというか、人って奥深いんだぞということを知らされた気がします。
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主題は「怒り」だが、それについてはかなり抽象的。
むしろ、傷のある人々の群像劇が、心から人を信じる難しさを描いている。
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生きていく中で人は誰もが秘密を抱えてる。大切な人のそんな過去や秘密を引っ括めて信じる事が出来るのか。苦悩し葛藤する心情が薄暗い景色の中で語られる。ぐいぐい読ませるけど終盤はちょっと失速。「悪人」や「さよなら渓谷」には及ばず。
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怒り、何を以てそれは怒りと書き綴られたのだろう。
それは読んでいる私たちの感情なのかもしれない。
あまりの無力さ、そして醜さに対する。考え過ぎか。
上巻で述べた愚見が恥ずかしく思える、そんな下巻だった。
私の無知な利己的な発言など、切り捨てられて当然の様な圧倒感。
誰かを信じる、そうとても簡単なことなのだ。
でもその簡単なことで人は誰かを傷つけ、失い、後悔する。
単純でシンプルなことほど、様々な鎧を身に着け難しく見える。
疑うことで自分を守っている。そんな陳腐なこともまた真実だ。
誰かを信じる、簡単に見えて簡単ではない。
心の底から誰かを信じているかと問われれば、即答はできないだろう。
この物語に潜んでいる怒りは誰の前にも点在する。
自分の前に現れた時、思い描く様に行動できるであろうか。
多分できないであろう。それほど、難しいことなのかもしれない。
誰かを信じるということは、自らを信じることに繋がるのだろうか。
誰かを信じる、この想いを素直に受け止めたい。
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市橋達也事件が下地にあるがその事件そのものはメインではない。犯人は何が目的だったのかに焦点は当てられてないのでそれを期待する人には上巻は退屈に思われるかも。下巻で犯人と思われる3人に関わった人たちがどうなるのか。そこがメイン。振り回される。似ている顔は探せばある。
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信じる、信じない。
信じたい、でも信じられない。
他人を信じられなくなり、大切なものを失うことになる人間。
最後まで信じ切ることで、失いかけたものを手放さずに済んだ人々。
「怒り」は、犯罪を起こす要因にもなるし、他人を守る衝動を突き動かすことにもなる。
八王子夫婦殺害事件の犯人逮捕に向かって警察が迫り来る直前、思わぬ形で新たな事件が引き起こされる。
それは彼にとって、必然だったのか、それとも偶然だったのか。
三つのストーリーは最後まで交差することはないのだけれど、それぞれの人の持つ感情の揺れ具合は似ている。
ただし、どこまで人を信じ切れるか、その思いの強弱が、切ない終わりを迎えるか、幸せな結末を迎えるかの分岐点になる。
吉田修一の作品の中では、「悪人」に近い内容のものだと思うが、最後まで面白く読めた。