紙の本
「どんな情報をどのように伝えるか」で世の中が動く。
2015/10/20 11:00
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投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者自身が取材した情報戦を演出する「PR会社」の事例を中心に国際情報戦の実例を紹介。
感情に訴える言葉や映像が短時間で国を越えて人々を駆り立てる。最近の例を挙げれば、ボートの転覆で死亡してしまった幼い少年の写真の掲載がシリア難民への関心を一気に押し上げたことなどもそうだろう。どうすれば人間を揺さぶれるかを熟知していることが世界を動かそうとする「情報戦」の鍵であるようだ。
挙げられた実例から、情報の受け取り手である人間は「そう思いたい」方向へはちょっとした力で動かされてしまうものなのだということを再確認させられた。こういう文章ばかり読んでいると自分がどんどん疑り深くなっていく気がして悲しくもなる。せめてはそれが現代というものさ、と「裏を読む」楽しみに置き換えてしまいたいと思う。
紙の本
わかりやすい
2023/01/08 13:43
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投稿者:なつめ - この投稿者のレビュー一覧を見る
国際関係での情報戦の大切さが、よくわかりよかったです。この分野では、日本は後れを取っていることが、納得できました。
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今(2016年)からたった25年ほど前までは、「如何に情報を守るか」が主流だったように思います。当時は「情報を出す」行為は基本として「ディスインフォメーション工作」の一環として存在し、それをどうやって見破るかが主眼だったと記憶しています。
現代においても「情報を守る」ことや「ディスインフォメーション工作」は当然存在しているのだと思いますが、それよりも、現代の情報化社会では「情報を出すことで、世論を形成する」ことが、より大きな影響を社会に与えることを本書は教えてくれます。
本書は序盤で、今では一般にも有名になった「ボスニア戦争」におけるルーダー・フィン社によるPR戦略で戦争の勝敗をも左右させた例や、2012年のアメリカ合衆国大統領選挙(バラク・オバマ氏が勝利した選挙)を具体例として、「情報を出す情報戦」とは何かが記載されています。
中盤からは、ビンラディン氏率いるアルカイダと(主に)アメリカ合衆国との非対称戦において、両者が繰り広げた情報戦に留まらず、ビンラディン氏殺害や、ビンラディン氏亡き後の非対称戦を具体例として、より深く現代の情報線について掘り下げています。
我々一般市民もまた、情報戦の真っ只中にいること、否、むしろ情報戦の張本人であることを明確な形で気づかせてくれる貴重な一冊です。
【本書抜粋 高橋徹】
目の前の情報が、なぜいま、このような形であなたのもとに届いたのか、情報源からあなたまでの間にどのような意志と力が働いたのか、それを推察し見抜くことで、世界が全く違う姿となってたち現れてくる。
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前作『戦争広告代理店』のような、メディア戦の話。前作のように一つの事例を深く紹介する内容ではなく、広く浅く多くの事例を紹介している。
情報をいかにして操作(この表現は必ずしも適切ではないかもしれない)して、自らが伝えたいことを伝えているかという話が書かれている。多くの為政者、とりわけアメリカ大統領が、どのようなメディア戦略を立て、行動しているかが克明に記されている。
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9.11を軸にした米国側とアルカイダ側のPR戦略について書かれていました。タイトルから想像してた内容と少しずれていたというか、話が局地的だったイメージがあります。
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著者には「ドキュメント戦争広告代理店」で賞も得たノンフィクション作家だが、NHKディレクターでもある。本書は、その書で紹介したPRで国際政治を動かした例をボスニア、ビンラディン、オバマ、東京オリンピック選考で示して、その効果を明らかにする。
ほうっておくと、いつのまにか劣勢に陥ってしまうのだ。日本ももっと重視して活用すべきと誰でも思うだろう。
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ユーゴ内戦の内幕を暴いた「戦争広告代理店」からもう12年も経つのかと驚いたのですが、世界はますますメディアによるイメージ操作に操られるようになっているようです。急速に普及したインターネットメディアに主戦場を移して、その情報戦を繰り広げるPR会社たち。テロリストも、対テロ戦争も、メディアを通じて状況をコントロールしているのは間違いない事実のようです。筆者は日本も積極的に「メディア情報戦」を仕掛けて国益とすることを説いており、決してそれを否定する立場ではないのですが、はたして無批判にこの現状を受け容れて良いものかどうか。すくなくともこうした情報操作のもとに我々はさまざまな判断を強いられているということを知っておく必要はありそうですね。
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”メディア情報戦”の名のとおりまさに戦争。平行して読んでる「孫子兵法」のなかでも情報戦は最重要項目として位置づけられている。こりゃおちおち昼寝してる場合じゃないなぁ。
しかし情報戦そのものを”楽し”んでいいのかな?面白けりゃいいか。
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ワシントンを動かす三角形は、ホワイトハウス、議会、そしてメディア。
欧米人のトラウマを刺激するのに最も効果的な方法は、西洋史に永久に残る汚点であるナチスのユダヤ人大虐殺と同じようなことが起きていると主張することである。
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この分野については、20年前アメリカにいたときに、英語を上達させたければMTVではなく、CNNを見た方がいいよと言われ、時々見ていたらイラク戦争勃発のニュースをCNNが報道していたことや、大統領選の際に、民主党と共和党の候補者が直接討論することくらいの予備知識かしなかった。よって、読む前や読み始めた時には、楽しめるかどうかわからなかったが、いざ読み出すと、おもしろい物語のように一気に読んでしまった。
著者が初めに言うように、この本を読んで国際メディアで伝えられる人の発言やその発言の仕方、短い映像に対する見方が確かに変わった気がする。発言や映像に込められた意図を考えるようになったし、何回も聞くバズワードを自分が使うことによって、そのことばによって暗示される見方を国際的に議論される対象して自分が持ち、更に伝搬してしまうことを知った。更に、そうすることによって、自分がしらずしらずの内に「悪者」をつくりあげてしまうことへの警戒心を持つようになった。
そして、国際メディア上でどう判断されるかは、民主的か否か、報道や言論の自由はあるか、人権の抑圧はないか、平等であり、差別はないかなど、私見ではキリスト教的な考え方を背景に持つ、倫理観に基づいてなされるという指摘は、我が国が様々な他国との関わりの中で保有している問題に対してどう振る舞うべきなのか、今の振る舞い方がどう判断されるのかを考える視座を提供してくれる。もし、中国が民主化されたら日本の国際的な立場はどうなるかという問いは、これまで考えもしなかった見方をさせてくれた。
東京がオリンピック開催を勝ち取ったことや、イスラム圏初開催という大義名分があったトルコがどうして選ばれなかったのかなどにも、国際メディアとの関わりが影響していたことも知った。
最後までおもしろかった。
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現在の国際メディア情報戦の基本テクニック
・サウンドバイト(要人の発言の短い断片)
・バズワード(メディアを騒がす流行言葉;)
・サダマイズ(特定の人物を悪の権化として標的にすること;サダム・フセインより)
「ワシントンを動かす三角形」
・ホワイトハウス
・議会
・メガメディア
「PR」
あらゆる対象(メディア、政策決定者、有権者代表の議会、オピニオンリーダーなど)と、様々な工夫と努力でコミュニケーションを重ね、世論を形作ること
その他
アルカイダ、アッサハブ、アルジャジーラ
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20140701読了
アメリカ大統領はメディア対応のテクニックを学び、スキルを培うのが当然とされているのだと。テレビ討論でいかに目指すイメージを視聴者に届けるか。そのための言動をちゃんと訓練しているのだから、トップに立つ政治家として当然身につけておくべき素養ということだろう。P92「アメリカの民主主義では、日本では否定的に「パフォーマンス」などと言われかねないテレビ向けのテクニックを磨くことはあたりまえだと考えられている。これは一つのゲームなのだ。」●PR会社は、民主主義の原則(報道の自由、経営と編集の分離等)が生きている社会で商売として成り立つ。●情報がなぜいま、この形で届いたのか。源からここに至るまでどのような意思と力(バイアス)がかかっているか。それを観察し見抜く力を養うこと。●サウンドバイト…インタビューをカットして切り出すこと。サウンドバイト向けの話し方とは、長くても数十秒の間にもっとも重要なことをシンプルな文章で短く伝えること。小泉首相はこれが抜群にうまかった。バズワード…流行語大賞のようにうるさいほどメディアを騒がすはやり言葉。サダマイズ…ある人物を標的にして悪の権化に仕立て上げる。この人物を攻撃することで人々の心を動かし、狙い通りの世論を形成する。例としてはサダム・フセイン、カダフィ大佐。●P226 2020年五輪招致のアピールで海外に印象的なエピソードは「おもてなし」ではなく「安全」であるという分析。現金を落としても返ってくる、それも1年で3000万ドル以上、と具体的に強調したことがよかった。「安全」は日本の売りのひとつ。
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前半は英雄譚的な読み物としておもしろく、後半はいろいろ考えさせられる内容だった。テレビの人なので、アメリカのテレビメディアの影響力の話が中心で、彼らの文脈にいかに乗せていくかという視点でPRが語られていく。
ちょっとオールドファッションな気もしないでもないけれど、ワールドワイドで考えたときには、外国メディアや通信社の報道として「引用」されることが多いので、根っこの情報源として重視すべきというのは、まあそうなんだろうなと思う。
PRの本質は、一般に日本人が苦手なロビー活動的な働きかけにあるので、日本(企業)が情報空間の中で優位に立つには、「正しいと思われるために正しく取り組むことは決して正しいことではなく、正しいと思われるために根回しすることは決して悪いことではないのですよ」というふうな価値観を変えるところから始めないといけないので、なかなか大変だなあ、と思った。
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国際メガメディアを使ったPR戦略が,国際政治を動かし,冷戦後の世界の紛争に多大な影響を及ぼしている。ボスニア紛争で注目されたこの手法が,国際世論をどう動かしてきたのか,その力学を,ビンラディンやボストン爆破事件,2020オリンピック招致を巡る駆け引きを通して眺めていく。
民族浄化というバズワードを設定し,切り取りやすいシンプルで明快な発言(サウンドバイト)をメディア受けする要人に語らせ,ミロシェビッチを極悪人として描くことで(サダマイズ),「セルビア許すまじ」と人々の感情に訴えかけたPR会社。その手口は洗練されていて,プロパガンダの新潮流を感じさせる。重要なのは,決して法に触れる行為はしないこと。一方当事者に肩入れはしても,意図的に虚偽の情報を流すようなPRは御法度。不正が明らかになったときのダメージは大きく,不正は明らかになるからだ。その制限の中で,いかにして目的を達成するかがポイントになる。
国際政治のプレーヤーに必須の情報戦略。これはもはやゲームの前提であって,当然ウクライナで現在進行中の事象でも活用されていると見るべきだ。日本は,というといささか心もとなく思えるが,五輪誘致成功に見られるように,まったく話にならないというレベルでもないようだ。
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○NHKのディレクターで、数々のドキュメンタリー作品や著書のある、高木徹氏の著作。
○国際的に行われるメディア戦略や、情報戦の重要性について、アメリカのPR会社の担当者への取材や、メディアのキーマンへの取材、具体的な情報戦略の過程や結果を通じて、これからの日本のメディア戦略のあり方を描いた作品。
○単なるインタビューやニュースだと思っていたことの裏側に、これほどまでに深く・幅広い戦略が練られているということを初めて知った。また、とても興味深かった。
○単純にテレビや新聞を読んでいるだけでは分からないが、これからは、裏側の戦略についても、目を向けてみたい。