紙の本
千葉の目的って・・・
2021/06/20 17:58
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公・千葉潔は赤貧に苦しみ、死んだ母を食うことのよって生き延びたという凄まじい過去を持ち、「ひのもと救霊会」に拾われた。このような男が宗教的信念を持てるのかどうか、最後は教祖となった彼は救霊会を破滅へと導いていくというのは恐ろしい話だ、その危惧はある新興宗教の神憑りの教祖にも彼の怖さは指摘されていた、そして彼は救霊会もろとも滅んでいくことになるのだ
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投稿者:東行 - この投稿者のレビュー一覧を見る
30数年振りに再読。高橋和己の中では、憂鬱なる党派が一番印象に残っていて
復刻され購入して再読したのがきっかけで、邪宗門も再読しました。
前回の記憶がまったくなくなっており、改めて高橋氏の真面目な文学に触れました。
本当に夭逝した事残念です。
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戦時下の弾圧で壊滅し、戦後復活し急進化した“教団“。その興亡を壮大なスケールで描く、39歳で早逝した天才作家による伝説の巨篇。今もあまたの読書人が絶賛する永遠の“必読書”! 解説:佐藤優。
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下巻。
戦後の混乱の中、復員した千葉潔の指導により、教団は破滅へと向かう。最終的にそれを生き延びる人間はそう多くはない。
『あとがき』によると、この小説は、確かに幾つかの弾圧された宗教をモデルとした側面もあるが、基本的には『〈世なおし〉の思想を、教団の膨張にともなう様々の妥協を排して極限化すればどうなるか』という『思考実験』の結果である……とのこと。解説にある『観念小説』としてはそれは正しいし、面白いのだが、逆に現在の小説作法の観点から見ると、人物造形的にもストーリー的にも極端から極端に走る傾向が強くなってしまうのは確か。
かつて熱狂的な支持を受けながら、その後は忘れられたのは、この辺りに原因があったのかもしれないなぁ……。
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軍事統制下を抜け、戦後の貧困を引き受けようとした宗教団体の破綻を描く。天才的筆致とは本書をして言うのだろう。
生死、貧困、救済と滅び。血みどろで生きる息遣いが感じられる小説。
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上巻に続き下巻も、引き込まれ打ちのめされながら読破。
壮大で激しいストーリー。宗教・思想・戦争・集団心理など様々な要素を組み込みまとめられた構成力。
そして、見事な人物描写。主人公・清水潔や阿礼・阿貴姉妹を中心に教団関係者の姿を通して、さまざまな「人間」の本質や生き様が見えてくる。
これほど「圧倒的」な小説はなかなか巡り会えない。今年一番の読書体験だった。
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戦時中までの経緯は、それなりに面白く読んだ。ひのもと教霊会の教義にも共感できた。
しかし、戦後、彼らがいったい何を求めたのか、千葉潔がいったい何を企みあのような行動をとったのか、何一つ理解できなかった。理解できない読書はつまらない。
巻き込まれた農民があまりに不憫。
継主の阿貴があまりに不憫。
千葉潔たちは敗北後、なぜ神部を脱出したのだろう?
終盤の描写はあまりにもくどい。
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20180312
『悲の器』に続く高橋和巳の文学。戦争を体験したものでないと書けない悲哀がある。激しく悲しく、ぞっとする人間の感情描写である。
ひのもと救霊会という宗教団体は、思想によって人々の秩序を育む団体であったが、第二次世界大戦付近の国家統制によって弾圧され壊滅されることになる。救霊会の人々は、思想を捨てて生を取るよりも、政治権力に立ち向かい死を取った。
三代目教主となった千葉潔は、母の肉を食い、戦争で人を殺し、主たる目的が無いものの、国家への憎悪や復讐を持ち、自爆特攻への思想を強め死んでいった。登場人物全てが虐げられ、自己の精神と社会の矛盾から、正常な精神を保てなくる。自分はどうであるのか?と自問自答するばかりでとても毒がある作品だ。
高橋和巳が述べることは、かつて日本が持っていた世直しの観念=宗教の観念=人が持つ生きるという観念を究極まで昇華させていった時には、死が目の前にあると言うことである。
//MEMO//
全体主義 vs 宗教思想
全体主義→個人の意見はなし
宗教→思想の自由。その人個人を発露するもの
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自分の中で小説とは気軽に異世界にトリップできるものであり楽しめれば十分であるが、ここまで圧倒される物をたまに読むとまた違った素晴らしさを感じる。僕にとって宗教とは神道や仏教、キリスト教にしろとても深く馴染みがあるものではく尚更新興宗教のようなものはよく分からないものであり、また第二次大戦や作者が生きた時代における感覚は薄かったが圧倒されひしひしと考えさせられる話だった。スケールが大きく、かなり前衛的にも思える宗教団体を扱いながら登場人物は実際の時代との結びつき方がとても仔細でリアルさが凄かった。この救霊会や千葉を通して当時の宗教や政治、情勢を考えることはかなり自分の価値観を揺さぶるものがあり、自分の中でもかなり貴重な読書体験の1つになった。
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戦前戦後のとある新興宗教の興亡を描いた長編小説です。
宗教とは?信仰とは?政治とは?農業とは?社会とは?権力とは?戦争とは?国家とは?、、、それらについての作者の考えが重厚な筆致を通じて伝わってきます。そしてそれらが個別のものではなく、現実がそうであるように、深く絡み合い影響しあいながら物語は強い推進力をもって展開し、読み進めるたびに圧倒されます。
作者の知識、思考、思想、哲学のすべてをぶつけた感じの壮大なスケール。教団内の風習など、設定のディテールも凝ってあって、(モデルにした教団があるにしても)作者の頭の中に存在するものとは思えないほどのリアリティ。
無駄なキャラ、無駄なシーンは一切ありません。すべてのキャラに生きてきた背景が見えるし、全てのシーンには「伏線」なんて小手先の表現技術は不要で、歴史としてごく自然に繋がりがあるのを感じます。そして風景が何よりも雄弁に人の心情を語ってくれます。思わずため息がもれるような叙情的な叙景文?がそこかしこにあります。
分厚い文庫の上下巻あわせて約1200ページに字がびっちり、しかも硬質な純文学に不慣れな自分には難しい文体で、上下巻読了まで一ヶ月かかったけど、極端な展開もあるし魅力的なキャラ揃いだし、エンタメ性も強いと思います。ところどころに埋められている「初見の単語によるつまづき」「理屈ぽくて回りくどい表現による停滞」程度では物語の爆進力は損なわれず、最後まで楽しめました。登場人物が読者の頭の中で勝手に動き出すのを感じるくらいまで慣れてきたら、あとはどんどん世の中が動いていくのを目で追うだけです。現に上巻の序盤を読み進めて消化するのが一番時間がかかりました。
自分に宗教、哲学、思想的な素養はないのでほとんどエンタメとして消化することしかできてないと思ってますが、新興宗教を舞台にした大河ドラマとしてとても面白かったです。
余談ですが、新井英樹の漫画『キーチ!!』『キーチVS』と共通する部分が多くありますので、一方を読んだことがない方はぜひ両方読んでみていただきたいと思います。
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お前ら騙したな?!
上巻背表紙の「日本が世界に誇る知識人による世界文学」(佐藤優)の一文に大きな不安と嫌な予感を覚えつつも、このブクログを含めた読書レビュー等の評価が高かったので興味を持ち読み始め、もうすぐ面白くなると何度も自分を宥めつつ読み進めたのですが、見事騙されました…
確かに上手くは書けている。
実在の団体や実際の事件や出来事、また組織や思想などを絡めて上手く書かれているとは思います。
だけどそれだけ。
こんなことがありました、そしてこんなことがありました、その繰り返し本当にそれだけ…
登場人物の心の動きなどが感じられるストーリーは何も無いから、だから登場人物の行動や行く末にも全く興味が持てない。何か驚いたり心動かされるような展開も何一つ無い…また作中で参照される思想や哲学なども、佐藤優という薄っぺらい妖怪がいかにも好んで引用しそうな、わかりやすいところを自分が分かるところだけ拝借してオリジナル解釈したような、そんな記述がいくつも見受けられました。ソクラテスよりソフィストの方が優れているという一文には乾いた笑いしか浮かびませんでした…
背表紙にあらすじが書いてあり、それはもう思いっきりストーリーのネタバレ書いてあるんだけど、読む前にそれ読んでしまって…
正直コレもう読まなくてよかったじゃん…って、それが読後最初の感想です。
娯楽が少なかった時代には面白かった小説なのかもしれませんが、文章に味わいもなく会話は退屈、また急に知らない奴の話が始まったり、思想や哲学の浅い知識を自分語りされるプロット自体も読んでいて無理だった…センスも何もかもが古すぎて。
”フランス人の人懐っこそうな喋り方”とか、勉強しかしたことがない優等生が偏差値を証明するために知らないことを頑張って想像して書いた、みたいなスマホ太郎な内容も多かったです…フランス人が話すところ見たことあるのかな?唾飛ばしまくってまくしたててくるけど?
夭折したアーティストを過大評価してしまうのは、文学を愛する者だけではなく、感受性のある人間ならジャンルを問わず誰でもそうだと思う。
でもこれは早逝した才能への幻想というより、全共闘世代老害クソジジイが50年経ってもジョン・レノンが〜とかほざいてる懐古主義そのものでしょ…
あるいは流行のファッションダサいと上から目線で中央線沿線に住み、一生ヒールの高い靴を履くことも無く、花どころか蕾すら付けることなく腐って死んでいくあの人種が好むカルチャーの臭いがします…
自分はこれなら埴谷雄高の死霊の文章やノリの方がよっぽど好きです…
河出にもがっかりしました。
そしてお前らにも。
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上下巻1200ページを超し、難解な語句、概念も多数含みながらも一気に読む熱を読者に呼び起こす。
戦前から戦後にかけての大きな宗教団体の盛衰を主たる舞台としながら、その教祖やその後継者、信者たちのリアルな存在感のあるキャラから成る群像劇である。
あるいは歴史的な背景の中で、本書をつうじて著者の日本国、天皇制、日本民族、歴史認識、信仰、組織論といった諸々の事象を総括していった印象も強い。
ただそれが我が国の政治の季節でもあった1960年代に書かれ、どこか共産主義革命に対する期待が見え隠れするところが本作の限界なのかもしれない。
本作はその内包する過激さゆえか、書物自体が入手しにくい時期があった。
それでも今回の読書から本作が十分時代に耐えうるテキストとして今後も熟読に値する作品であることを確信する。
また本作を読むきっかけになったのが、村上春樹の1ℚ84だったことから、その類似点を将来考察したいと考えている。
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戦前、弾圧するために、宗教の青年たちを積極的に徴兵して、そのことが結果、戦後に好戦的になってしまったの皮肉すぎる。
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しんどい読書だった。朝日ジャーナルでの連載作品とのこと。なるほど少しずつ読んだ方がいい。
情報量が多い上に描写が精神的にしんどい。とにかくしんどいというのが読後の正直な感想。
人間の精神や土着の信仰から生まれる宗教という内的な営みが多くの人に支持された結果、国家や政治という外的なものと関わらざるを得えなくなった先に起こる、戦争という国家の大転換。
民主的な団体だったが故に起こる内部分裂や、国家権力に弾圧され絡め取られていく様は必然であるだけにやるせない。
弾圧により幹部は投獄され分裂したひのもと救霊会の信徒たちは全国各地へ、南方の島や満州などの植民地へ散らばる。
そこでの各信徒達の目を通して全体的には大東亜戦争そのものを俯瞰するような構成になっている。
教団内部の分裂は、宗教的精神的な人間の思考の分裂を象徴しているように見える。
ひのもと救霊会の教えには多くの読者が素直に共感すると思う。私もこんな世界が本当にあったらなと思った。
最も貧しい人々の心から自然発生した土着の信仰を尊重し、善意と助け合いに基づく教団の信念が、弾圧にあった際、また壊滅ののちに、既存の宗教家や共産党、または占領軍によって、それぞれの文脈で好き勝手に解釈され唾棄されるくだりは胸を抉られる辛さ。
話の流れ自体は複雑なものではなく文章も読みやすいし面白いので続けて読んでしまい結果しんどくなる。日本人として人間として辛かった。
(上下巻を通しての感想)
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牧歌的な雰囲気すら漂う平和に暮らしていたはずの宗教団体。
それの狂気に満ちた悲壮感漂う坂道を転げ落ちるかのような終焉。
最初に堀江駒がボロボロの千葉潔を拾わなければ別の結末があったのか。
追い詰めたのは国組織か。どこでボタンを掛け違えたのか。
えもいわれぬ虚無感。