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投稿者:まさちえ - この投稿者のレビュー一覧を見る
獅子文六は、戦中戦後の大衆小説作家としては抜群に面白いです。本作品は昭和28年1月から31年5月にかけて執筆されたものですが(昨年購入した獅子文六全集に記載されていました)、NHK朝の連続テレビ小説の第1作(昭和36年4月から翌年3月)で放映されたとおり、人気小説だったようです(私はまだ生まれていませんでした。私は昭和40年代前半の中学生時代に最初に読みました)。フランス人の先妻との間に生まれた娘(麻里)の成長を見守る、昭和初期から戦後を回想したご本人の自叙伝です。細かい内容は読んでのお楽しみですが、苦労話も含めてユーモアたっぷりの獅子文六文学を堪能できます。併せてお勧めは「悦っちゃん」(執筆は「娘と私」より前ですが、元ネタは「娘と私」)で、感動的なラストです。獅子文六作品は、最近復刻でいくつか出版されています。獅子文六はユーモア作家とされていますが、近年の殺伐とした世相傾向の中で求められて復刻されているように思います。hontoのHPで現在出てくるのは本書「娘と私」以外に「てんやわんや」「コーヒーと恋愛 」「七時間半」「食味歳時記」「大番」「ちんちん電車」「海軍随筆」等です。もっともっと復刻して欲しいです。ちなみに「悦っちゃん」はまだ復刻されていません。平成18年にフランス語で翻訳・出版された「自由学校」も見当たりません。「獅子文六の二つの昭和 (牧村健一郎著、朝日選書)」もお勧めです。
紙の本
獅子文六はやっぱり良い!
2019/01/14 23:23
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
獅子文六氏は、父ひとり、娘ひとりという同じような境遇を描いた「悦ちゃん」について、主人公は男のような娘・麻理そのままのイメージで、後妻のデパートガールについては、本来の後妻・千鶴子にこうあってほしいと願って書き上げたという。そして、主人公・碌さんは自分とは正反対な暢気の人として描いた。室生犀星の「杏っ子」と並ぶ父娘ものの傑作だ。「この子がいなければ、私はもっといい作品が書けたかもしれない」といった身も蓋もないような本音まで吐露してしまう主人公、子守替わりのつもりで愛もなく結婚したはずの千鶴子との愛、もちろん多少の脚色はあるだろうが子を持つ、妻を持つ男として感動して読まずにはいられない
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この小説は 1953年から1956年にかけて雑誌に連載された小説。今読んでみると昭和の小説でありながら現代小説ではなく、かといって古典でもない。この半世紀の間に日本の価値観や文化が著しく変化したということに驚かされた。
ほとんど著者の自伝的小説といえる作品。昭和初期にフランス人との国際結婚で得た一人娘を母親の死によって男手で育てていく。またその途中から再婚して娘にとっての新しい母親を迎え、家族を形成していく姿、そして娘の結婚までを描いている。
この時代の中流家庭がどのような生活をし、また第二次世界大戦をどのように受け止めていたかを実感できた。私自身、戦争は知らないが市井の人々はアメリカとの開戦まではそれほど切迫感や暗さはあまりなく、日常を淡々と過ごしていたのだと感じた。
また男女の関係は今この小説のような表現や内容では男尊女卑と言われそうな書き方をしている。それだけ、男女平等という関係が変化していったのだろう。若い人が読めば、私以上にその変化に驚かされるだろう。
ただ、表現や行動等は今とは違っても、父が娘を思う気持ちは変わりない。あの時代に国際結婚で生まれたハーフの子ども、しかも母親を幼いときに亡くし、新しい母親を迎えるまでの数年は本当に著者にとっては親鳥が雛を守るように必死に育てたという感覚がその行間にあふれている。
昭和初期の普通の家庭の日常や価値観を知ることが出来る作品だ。
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前半の部分は獅子文六とは何と身勝手な男だろうと思って読んでいました。
でも話は最初から興味深くて引き込まれて行きました。
読み進むうちに獅子文六の娘に対する深い愛情があふれている事が分かってきます。
獅子文六が結婚という制度に向いてないことや、
子育ても出来る事なら放棄したいという気持ちを持ちながら後半では立派に娘を嫁に出し終えてほっとしているが少し寂しい気持ち等が素直に書かれていて、好感が持てました。
獅子文六の生き方も素敵でした。
もっと早くこの小説を読んでいたら男心が理解出来たかも知れません。
この本を読むのに10日間もかかりました。
少し長いですが、毎日サクサクと読め、私的には久しぶりのヒット作で面白かったです。
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【装幀・デザイン】
宇都宮美鈴 河村怜
【あらすじ】
文豪、獅子文六が「人間」としても「作家」としても激動の時を過ごした昭和初期から戦後を回想し、深い家族愛から綴られた自伝小説の傑作。亡き妻に捧げられたこの作品は、母を失った病弱な愛娘の成長を見届ける父親としての眼差し、作家としての苦難の時代を支え、継娘を育てあげ世を去った妻への愛、そしてそれらを全て受け止める一人の人間の大きな物語である。
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本当に大好きな作品。父と娘の物語ってなんか惹かれるんだよな〜。
楽しいときもあり、辛いときもあり、でも、ひとつひとつのエピソードがとてもあたたかい。
一番好きなシーンは、娘が産まれた日。男の人ってこんな感じなんだろうな〜って、微笑ましくて、でも、じんわり涙が出てくるような。ラストもとてもよい。
そしてこの作品は「悦ちゃん」とセットで読むべし!
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この父親、子供が小さいのに離れて暮らすと独身に戻ったように気楽になったり、生計が立たずまだ勉強したいと思ったり、30代はまだ子供だ、みたいに自分で言って、共感できるわー。子供が産まれたからって大人になるわけではない。育児ノイローゼの親は読んで気楽になってほしい。でも、再婚した妻と新婚旅行の夜に避妊薬わたすなんてがっかりさせてくれるわ。風俗にも悪びれず行くし、こんな家族の話の中で平気でこういう行動を書かれると、男ってほんと人間として生まれて偽善者として育つものなんだなと思う。
それにしても、新しい妻との間に子供が生まれることと自分の前妻との子のことで勝手に葛藤して、どこまで自分の世界に生きてるのやら。でも子持ち再婚の男はこんな気持ちなんだなとわかったのは良かった。
マリの結婚相手が年下なのを、10才以上年下の妻が婆さんくさく見えてきたから不安なんてほんとこの男はあきれるね。
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図書館で。
時代が違うから考え方が違うのは当たり前なのだけれども。やっぱり男親に子供を任せるのは心配だなぁ…なんて思いました。そういう意味で千鶴子さんとの結婚は何より娘の母親が必要だったというのはなんだか納得。でもこれを読み終わった後、調べたら静子さんを亡くされた後、一年ぐらいで再度結婚されててびっくり。しかも作中にはもう俺も長くないだの、今の妻は親戚のオバサンのようなものとか書いてあるけど息子も生まれたんだ…と知るとちょっと、うん、まあそれはそうとしてもって気になる。昔は60ぐらいでも世話する人が居て、結婚したんだなぁ…。とは言え新婚の娘の世話になるのもナンだし、お金が無い人ではないからそれはそれだったのかもしれない。
女性が仕事に就けて働いて経済的に自立できるという事は素晴らしいなぁと思います。男性を頼りにして生活していく事の困難というか苦労を考えたら…貧乏でも自分の稼ぎや借金で苦労する方がナンボかマシだものなぁ…。いや、他の人と比べて(太宰とか佐藤ハチローとか檀 一雄とか)獅子文六は余所に女性を作るわけでもないし、原稿料を全て飲み代に使ってしまうなんてことは無かったみたいですがそれでも偉そうにお前は何さまだ、と作中思う事は暫しありました。(時代が違うので仕方ないのですが)そして妻や娘の心中を実しやかに語っていますがそうかなぁ?と首を傾げる事もあり。後書きにあんなに良いパパじゃなかったわよと娘に言われた、とありましたが…うん、そうだろうな、なんて頷いてしまいました(笑)
さらにあとがきで四四十六をもじって獅子文六、文豪より上だから文六という解説が面白かったです。トンチが効いてるな~
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「この作品で、私は、わが身辺に起きた事実を、そのままに書いた」とあり、今まで読んだ獅子文六作品よりも抑制した文章で綴られている。
題名から想像していた“娘と自分”とのこと以上に、“再婚の妻と自分”とのことに比重が置かれていて、それに関して「自跋」で明かされているし、本書の献辞もその亡妻に贈られている。
作者は出来るだけ包み隠さず、率直にその時々の心情を振り返って語ろうと努めたのだと思う。「私という人間は、子供だとか、妻だとかのために、犠牲となることを、喜びとするような風に、できあがっていない」と記す、個人主義で我儘でへそ曲がりの作家の、時に妻や娘がいなかったらと我が不自由を嘆き、時に愛情や思慕を抱く、その何れもが偽りのない本心であるだろうところに、作者の誠実さが伝わってきた。
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0144
2019/09/26読了
自伝小説。とても大変な時代に苦労されたんだなあと…。一家族の物語としても、昭和の、戦争の記録としても面白い。
娘の出生から始まるが、本当に産まれたところから始まったのがびっくり。そこからの結婚までを描いていて、自分も親戚の一人としてこの家族を見ているような気分になる。
ますます獅子文六作品を読破したいと思った。
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GWを利用してやっと読み切れた!
獅子文六にハマって約2年。ちくま文庫で近年復刊された作品を読み漁り、評伝や企画展などで彼の生涯を知ったうえで、今だ、と思って読み始めた私小説「娘と私」。
タイトル通り、娘とのエピソードが中心なのかなと思ったら、2番目の妻を迎え3人家族となった文六一家と、戦中〜戦後の自身の苦悩について詳しく記されていた。
あまりにも正直な感情を書きすぎていて、千鶴子さんに少し同情してしまう箇所もあったけれど、読み終えると、また違った感慨が湧いてくる。
カラッと明るくモダンな作品で世間を楽しませた流行作家が、私生活でこんなに苦悩し奮闘していたことに驚き。
牧村さんの解説の結び、巴絵さん(作中では麻理さん)について触れた数行に何故か泣けた。
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こんなふうに何十年も夫婦やこどもの事を記していったら、私だったらどんな物語になるか…と考えさせられた。
時がたって夫婦として仕上がってゆく感じが読んでいて嬉しい気持ちになった。