紙の本
居場所を見いだせないでいる子どもたちへ
2018/10/28 10:30
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まな - この投稿者のレビュー一覧を見る
小学中級からの対象年齢だそうですが、漢字にふりがながふってはあるものの、「交換船」「留置場」「移民局」など、小学生にはわかりにくいかもしれない言葉が登場します。「徴兵検査」など、中には解説がついてるものもあります。
著者の『教育再定義への試み』『日本人は何を捨ててきたのか 思想家・鶴見俊輔の肉声』などを読んで、ある程度バックグラウンドを知ったうえで絵本を読みました。
日本に居場所を見いだせず、なかば突き放されるような形でアメリカ留学をした頃から日本で終戦を迎えるまでの著者の実体験を絵本にしたものです。他の著書や対談集よりも、絵本という事もあり、著者の内面に寄り添うような形で話が進んでいきます。
戦争体験の話でもありますが、当時を美化するようなできごとを載せているのではなく、一時代を生きる個人の話として、読むことができます。
留学先のアメリカでは人種の観点から外人であり、戦時中の日本では周囲との異なる視野や価値観から同じ日本人として馴染めず、日本の中に居ながらにして外人であり続けることになった著者。
この本は、目に映る狭い範囲に留まらず、外へ視野を広げて活路を見出す勇気や励ましをくれる絵本だと思います。これからの時代を生きる子どもや大人にとって何よりの応援になるかもしれません。
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これも多分、今だからこその本ですね。
外人ってなんでしょうね。
鶴見さんのような立場の人間から見れば、それはとても曖昧です。
多分私たちも、じっくり考えればそれはとても曖昧なのです。
それがハッキリしていることと思うのは、多分、ひとつだけの見方をしているから。
それが壊れたとき、人はどうなるのでしょうか。
分かるのは、外人だろうが、外人じゃなかろうが、人だということです。
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鶴見俊輔さんが亡くなって追悼読書第2弾。
20年前に月刊絵本ででたものがちょうど5月に傑作集入り(ハードカバー化)して、訃報のしばらく前に取り寄せ依頼をしていたもの。まさか追悼読書になるとは思わなかった。
アメリカ留学中に日米開戦をむかえ、交換船で帰国して海軍に入った話、アメリカにいても、日本に帰ってきても「外人」だった心境をかたり、最後の結びとして、地球規模で考えれば日本人よりも「外人」のほうが圧倒多数のなかでどういう物の考え方をしてゆけばいいのか、と問いかけている。
小学生から読めて、大人もいっしょに読んで考えたい。はからずも鶴見さんが最期にほんとうに伝えたかった遺言のような作品だった。
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鶴見さんの文章は読んだことあっても、どんな方か知らなかったので、こんな経験をされていたなんて!とびっくりでした。
こういう視点での戦争、は初めて読んだかも。
最後の文章
「地球上の人間全体の中で、日本人にとっては、外人のほうが多い。日本人は、外人にとりかこまれて、この世界でくらしているのに、日本人本位に考えるのでは、わたしたちは地球上に住みにくくなります。」
こういう経験をした鶴見さんだからこそ説得力があるし、グッときた。
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地球人全体の中で、日本人にとっては、外人のほうが多い。日本人は、外人に、とりかこまれて、この世界で暮らしているのに日本人本位に、考えるのでは、わたしたちは地球上に住みにくくなります。ー本文より
今の世界の不安情勢の最中、排他的な思想が渦巻いている中、鶴見さんの言葉は、ずしりと心に響く。排他しても何も解決しない。
平和とは互いを認め理解することなんだろう。
壮絶な少年時代を送り、戦争、空襲でいつ死ぬかわからないときでさえ、アメリカを憎むことはできなかったと言う著者。
何度も読みたい本。
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声高ではない反戦、かな。幼少期を外国で過ごすと自分の依って立つところがなかなかしっかりしないという話を聞くけれど、どこに行っても外人と感じてしまう・・・厳しいなあと思う。
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まるでおとぎ話みたいな牧歌的な語り口で戦争の体験が語られる本です(「昔々、おじいさんとおばあさんが住んでいました」という感じです)。
人が死んだりひどく傷つけられたりするシーンは出てきませんし、激しく感情的になるシーンもありません。
でも、行間や夢みるような挿絵から、何かが激しく伝わってきて、胸をつかれます。
人の愚かさと優しさが交互に出てきて、でも、善悪で結論づけたりもしていません。
国籍ってなんだろう? 憎悪ってなんだろう? 考えてほしい… そんな風に宿題を出されたような本でした。多くの人におすすめしたいです。
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歴史の対談の本を読んで、この人に興味を持ったので読んでみた。
戦前に外国の正しい情報を持っている人は、みんな日本が負けると知っていた。この人はどうして、負ける時に敗戦国にいたいと思ったんだろう?
何日かおきに血を吐くような持病を持っている人まで徴兵されたのか…。今は大丈夫なの?
なぜ自分がここにいるのかよくわからないという頼りない気分が、今ではわたしのくらしをささえている力になっている…。わたしも、こんなふうに生きられるのかな。
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古い本ですが、いまでも、というか、多様性がサケバレルいまのほうが切実に必要な一冊かも……。
短いのですぐ読めますが、なかみは深いよ。
2019/06/04 更新
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小学生のときは、佐々木マキさんの絵の、形をなさない物、人の形がようやく保てているようなグニャグニャしたかたまりに気を取られて文字が入ってこなかった。
ときを経て手にとったとき、あのとき目をそらしていた絵は、やわらかな水彩のにじみとともに心に入ってきた。表情や状況を細かに絵で再現しないことで、それぞれの読み手に任せるところがよいのだと思う。
本の内容筆者が戦時下に置かれた状況を淡々と書きながらも、多くの質問を投げかけていくような、そんなお話でした。
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_わたしは、アメリカにいた時、外人でした_
16歳から19歳をアメリカで過ごした著者。大学へ進学し、温かいアメリカ人家庭に下宿していた時、大平洋戦争が始まる。
開戦の知らせを聞いた時も、兵役を終えて生き残り終戦を迎えたときも、
_わたしはアメリカを憎むことができないままでした_
アメリカでは外人。戦争中の日本では日本人を外人と感じて。そして70年経って、
_今もわたしは外人です。_
絵本の形式を取り、子どもにもわかるように語られているけど、これは凄みのあるノンフィクション。
佐々木マキさんの柔らかで抽象的な絵が、心象風景を巧みに表します。
現代の私たちが今こそ向き合いたいテーマについて、宿題をもらったような絵本でした。
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紹介するのはとても難しい絵本です。
佐々木マキさんの絵が鶴見俊輔さんが伝えたいことは、こんなことなのかな、こんな心情だったのかな、と想像する助けになりました。
言葉って何だろう、生きるって何だろう、国って何だろう、戦争って何だろう、個人って何だろう…
何だろうは、難だろう!?いろんなことを軟らかく考えられる人でありたいな、と思いました。
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児童書だけど、子供には少し難しいかもしれない。
大人でも、受け止められたのか、読み手の本質が問われると思う。
短いページ数で淡々と書かれているのでさらっとも読めるし、モヤのように広がる静かな恐怖のようなものも感じる。
最後の1ページがずしりときた。
「地球上の人間全体の中で、日本人にとっては、外人のほうが多い。日本人は、外人にとりかこまれて、この世界でくらしているのに、日本人本位に考えるのでは、わたしたちは地球上に住みにくくなります。」
著者の体験をもっと知りたい。
あの時代を生きるということの壮絶さ、平和になって海外に自由に行き来できるようになった今の時代はあの時代と変わったのか、恐ろしくもある質問をしてみたかった。
星3つにしましたが、これは私の人間力ゆえです。
もっとこの本に値する人間になってから再読したい。
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大人になって「そういえばあんなことを言っていた人がいたな。」って思うことがある。絵本や童話は、その時楽しいだけじゃない。そういう価値観が失われていく時代に、子供が大きくなっていくのに、ちょっとあらがってみるのは、大人の責任じゃないだろうか。
ふとそんなことを考えた絵本です。ブログでも感想を書きました。
https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202105290000/
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鶴見俊輔さんの名前は知っていましたが。アメリカ留学や交換船のことは初めて読みました。こういったはなしを子どもたちも知っておくことは大事なことだと思います。