紙の本
上巻は下巻を楽しむ刺身のツマのようなもの…という心構えをおすすめします。
2001/03/31 00:50
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
私のかたわらで下巻を読み進めている夫に、この書評の見出しについて話したところ、「スティーブン・キングはいつもそうなんだよ。後半で急に盛り上がる」という言葉が返ってきた。なるほど、確かに『ダーク・ハーフ』なんかもそうであった。
夫はかなり早い時期からキングを読んでいる。『IT』などは「読めばいいのに」とさんざん言われていたが、本棚に鎮座している単行本のあの厚み!−−今となっては、洗面所で子どもの踏み台にしてやった方がいいのではと思っている。
だから私はキングのホラーを読むために、わざわざ文庫本を買ったり、図書館に文庫本を借りに行ったりしたのだ。
私は、キング原作の映画は何本か観ていたが、初めて読んだのは『グリーン・マイル』、それも新潮文庫が全部出終わってから一気に読んだという遅れてきた読者なのである。だが、最初が『グリーン・マイル』だからこそ惹きつけられたのだろう。
「大人向けの素晴らしいファンタジーだったな」と、全部を読み通した時に感じた。そして、いい作家だな…と。
こんなファンタジックなものを書く人のホラーならもっと読みたいと思って、他をいくつか読んでみたのである。結果、『グリーン・マイル』のような雰囲気のものは見つけられず、読むたびにキモをつかまれたようなオトロチイめにあって、寝入りばなや夜明けにうなされたのだ。だまされたのかなあと思っている。
だが、『グリーン・マイル』の印象から、この作家は年を重ねていくといつか、本格的に純粋なファンタジ−を書き出すのではないかという気がしていた。むしろ、そうしてほしい、深読みのできない甘っちょろいファンタジーばかりが出てくるので、本格派の作家がぜひ児童物に参入してほしいと思っていた。
このたび願いがかなって御慶というものである。
キングのホラー世界が展開していくのがキャッスルロックの町なら、ファンタジー世界が展開していくのがデレインという名の王国である。そこは、フラッグという何百年も生きてきた魔術師の腹黒い術中にハマりつつある。
フラッグは、この王国を思いのままにしようと、次男を生み落とした瞬間に王妃を亡き者とし、続いて世にも珍しい毒薬をローランド王に盛る。
たぐいまれな資質を備えた長男のピーターが王位を継承できないように、王の毒殺はピーターの仕業に仕立てられる。ピーターは「針の塔」のてっぺんに幽閉され、次男トマスが王位に…。
これが上巻の大まかな筋で、茶目っ気たっぷりのシニカルな言い回しであっという間に読めてしまう。だが、お楽しみはこれからだとばかりに、設定だけに留まったという印象。
少しきついことを言う。「売上を上げるために上下巻に分けないでもよかったのに」と文句をつけたい。文字組みやレイアウトを工夫すれば、コストを抑えて、ちょっと厚めの1巻に編集できたと思う。上巻の展開だけ見ると定価がとても高く感じられる。下巻で元がとれた気がしないでもないが、デレイン王国シリーズの読者確保のためには、その方が得策だったのではないか。
そのぶ厚い1冊なら、私の頭の中を洗面所の踏み台のイメージがよぎることはなかったかもしれない。
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スティーブン・キングが愛娘のために書いたお話。夜、枕元で読んで聞かせるには、ちょうどいいかもしれません。大人が読んでももちろんおもしろいです。
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キングが愛娘のために書いた、はじめての児童文学。おとぎ話なので、キングの他作品を薦めるにはちょっと早いお子さんなどに良いかも?とはいえ、単純な勧善懲悪でもなく、十分大人の鑑賞にも耐えます。
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スティーヴン・キングが愛娘と友人の息子のために書いたファンタジー。子供が飽きずに楽しめるようにという配慮なのか、短いスパンで山場(小山場ぐらい)が設定されていて、何度も何度も、小さくハラハラドキドキさせられる。そのせいか一気に読み進めるにはリズムが合わず、かなり苦痛だった。
さらに「むかしむかし……」という冒頭から、すっかり舞台設定に取り残される。なんせ、王様やお姫さまや王子さまになった自分を想像したことも、お城に憧れたこともない。「むかしむかし…」といえば、『まんが日本昔ばなし』のほうが身近に感じられるんだからしょうがない。しかも、登場人物のグズグズ感にイラつく。あぁあ、要は合わなかったってことだ。
でも、活き活きとした感じは楽しめたし、話の筋も悪くないから、「子供が子供の時代に読む」というタイミングさえ逃さなければ、けっこう面白い本なのではないかと。(2006.6.29 読了/上下巻/図書館)
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S・キング初の冒険ファンタジーで、自分の娘の為の児童文学。だから、ちょっと歳をとっている人が読むと多少の物足りなさは否めないかな。可もなく不可もありませんでした。
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スティーブン・キングが娘のために描いたという小説です。
悪い魔法使いに立ち向かう王子という、ありきたりな設定にかかわらず読み手を飽きさせない工夫を凝らしているあたりがさすがと思います。
娘のために書き下ろしたのが元となっているだけあって、児童向けでもあります。
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キングが、ダークタワーシリーズとのからみが、を除いていち児童書としてみれば、とりたてて見るべきものもなく…。
かといって、ダークタワーとのからみもたいしたことはない。残念な本。
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サーシャが奇麗。こんな教養のあるひとになりたい。おうさまが無神経です。びっくりする。心情がつらいくらいわかる。
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…なんというか、非常に読みにくかったです。子供に読ませるのをためらうような表現が多く、さらにそれが物語に必要あるのか否か…に非常に頭を抱えるもので…ファンタジーなのになぁ〜。
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スティーヴン・キングが
自分の娘ナオミとピーター・ストラウブの
(このとき共同で「タリスマン」を執筆中)
息子ベンのために書いた たった一つの
児童書だそうです
「むかしむかし、デレインという名前の
王国に、王様とふたりの息子がいました」
こんな書き出しで始まります
まさに正統派おとぎ話のスタイルです
でもって いちいちお話おじさん風の
啓蒙的なセリフが入ってくるのです
それがちょっと気になって
うるさい感じがしますが・・
話のここかしこに何気なく散りばめられた
キーワードが用意されて
さすがキングならではの展開に
なってますからご安心あれ〜
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個人的にファンタジーといったらこの話。大好きです。
キングの他の小説って読んだことないのですが、推理物とかホラーとか殺伐とした物語が多いイメージがあります。
これは間逆。しょっぱなから下ネタ(当時の自分にとっては)入るのはびっくりしたけど。
いやもう…フラッグの残酷さ加減に惚れぼれですよね。
このやろうと思いつつももっと活躍してくれ、みたいな。なんなんだこのかっこいい悪役。
そういえば小学生のころこれで感想画描いたっけな。
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小学生の時に読んで難しかったのを覚えている。わからないところがあったが、面白かったのことも覚えている!
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キングが子どものために書いたファンタジー小説ですが、タワーシリーズの派生ですし、オトナが読んでも十分にワクワクします。
老王ローランドには二人の王子がいた。ドラゴンの心を持つ勇敢な王子、兄のピーター。父親によく似ている弟のトマス。
立派過ぎる故に兄を恨む弟。そんな弟につけこみ、王国支配を目論む魔術師フラッグ。国の行く末はどうなるのだろうか――。
上下巻ですが、字も大きくて読みやすい。そして、兄がいつものキング節でとんでもないピンチからどう脱出するのか。王道ストーリーかもしれませんが、本当にワクワクします。
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『スタンド・バイ・ミー』『ショーシャンクの空に』などを手がけるスティーヴン・キングのファンタジー小説です。
実は、キング初挑戦だったりして。ホラーが苦手なのでちょっと敬遠していたのですが、これはキング唯一の児童書ということで手に取ってみました。
娘にあてたお話を改稿したもので、とても読みやすくスリル満点の面白い児童書でした。
ドラゴンは序盤にちょっと出てくるだけで、基本は王国の謀略ものです。
どんなに駄目な人間でも強かったり、立派な人間でも間違ったりと、大人になる前に知っておくべき大切な事が書かれていたと思います。
ただ、お子様から「これどーゆー意味?」って聞かれても慌てませんように。
上巻は特に夜の生活やらキタナイ大人の実態やら、かなりダイレクトな描写があって、正直ドギマギしました……!
かなり容赦ない内容ですが、個人的にはその強烈なアクを中和させて児童書として成立させた読みやすく易しい翻訳が絶妙だったと思います。
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私がまだ中学生だった時、初めて手に取ったスティーヴンキングの本がこれでした
この作品は娘へのプレゼントとして書かれた、作者唯一の児童向けの小説です
児童と言っても、中高生向けですかね
子供向けファンタジーなのに、大丈夫なのか、と思うような描写もありますし
ドラゴン、魔法、王、といった正当派ファンタジーなのだけれども内容はすごく薄暗い雰囲気を漂わせています
子供の時はわくわく読めて、大人になって読むと政治や彼らの人間くささといった深いところへ、側面を変えて何度でも楽しむことができます
作者が好きな人は、どうせ子供向けだし、と読むことをやめないでぜひ手に取ってもらいたいです