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一言でミステリといってみても中身はさまざま。当たり前だけど、いちいち例をあげて教えてくれるとすごく納得します。それにしても驚かされるのは作者の読書量。私なんか比じゃないくらい読んでます。それだけじゃなくて読んだ本のことをものすごく覚えてる人です。尊敬。
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ミステリにまつわるエッセイ集。日常から読んだ本からミステリ的悦びや楽しみを見出す。ミステリに対して真摯な目を持ち取り組まれる姿が格好いい。作中の言葉「男の中の男」が、ぴたりときます。
北村薫が編んだミステリアンソロジーには、一見ミステリに当てはまらない作品もあります。しかしここで書かれているように、ミステリとしての面白さを抽出する目を持つと世界は変わっていくのです。これぞ読書の悦びであり、ミステリファンの業でしょうな。そう、すべてはミステリになるのです。
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著者は本当に文章がうまいなあ。なんでこんなにすっきりした文章が書けるんだろう。うらやましい。
マニアックなミステリの話とか、日常に潜むミステリのネタとかが実に上手に料理されてて、ミステリファンとしては満腹。良書です。
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北村薫作品は過去にシリーズでいくつか読みました。その際エッセイは文庫化しているものを全部読んだつもりでしたが、どうやらこれは読み飛ばしてしまったようです。
博識な人の話は面白いもので、本作も北村薫のミステリ知識、文学知識が満載で面白い。知識としての面白さと文章としての面白さが合わさって、ただただ楽しい時間を与えてくれる一冊でした。
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ミステリガイドかと思いきや、ミステリの奥深さを教えてくれる本だった。
マニアさんには物足りないだろうけれど、私はミステリ初心者なので、なるほどと頷きながら読んだ。
途中「これをまだ読んでいない方は、本編を読んでからにしてね」との注意書きがあり、途中で本を閉じて、課題本(ネタ本)を読まねばならないのが面倒といえば面倒だったが、ちゃんとその通りにして良かったと思った。
本の内容だけならキープするほどではないのだが、集英社版は大野氏の猫の木版画が素敵で、手放せない。
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本書でもきれいな日本語は健在、読んでいて安心する文章です、どこがポイントなんでしょう…。
テーマは多岐にわたり、気分は日常ミステリ、面白いエッセイでした。
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ミステリー作家北村薫が、推理小説の古典から落語家の小噺、他愛ない日常会話などのなかの〈謎〉を語るエッセイ。
本書全体に「誤読と解釈の違い」がテーマとしてあり、夢野久作の『瓶詰地獄』に対する自身の誤読から、久生十蘭の『湖畔』を誤読している他の人の話、さらにミステリーの実作者として読者の困惑を招いた失敗例まで挙げている。こうしたフェアさは好ましく、作者としてどう書くか、読者としてどう読むかの試行錯誤をしているのがわかる。でも「読者はトリックを読むのではなく、《作者を読む》のである」はどうかなぁ。作者の意図を読むってこと?「この文章がここに書きつけられたこと自体の意味を読む」ぐらいの意味合いならわかる。
「思わぬところから叔母の話になる」「原典と新版」に出てくる叔母さんの話は心惹かれた。洒落者で、童話の同人作家で、制作ノートを燃やした叔母さん。野溝七生子の小説の主人公みたい。「言葉とはその内に人の思いを秘めるものだと思い、また、表現というのが、《自分のぎりぎりのところから無意識にでも身を引いた時には力弱くなることがある》という、ごく当たり前のことを感じた」というくだりは印象深かった。
小説の紹介者としても上手で、この叔母さんの失われた作品はなんとかして読みたくなるし、夢野久作の『崑崙茶』も青空文庫で読んでしまった。
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ふと18年前に発売されたばかりの文庫積読本を手に取って読み始めた。その頃は北村薫文庫本コンプリートを目指していた。見てみると、市内最大の喜久屋書店の名入りの帯がついている。「おもしろい!と言われる予定です。(羊の絵)新年の一冊に‥‥」開店したばかりの頃の推し本だったのだろう。
北村薫のエッセイである。彼のエッセイを読んだ方は分かると思うが、大抵は本に関する博覧強記を記す。絶対気をつけなくてはならないのは、自分を卑下しないことである。一冊の本から次から次へと連想して、本に関するトリビアなことを記しているが、知らなかったからと言って貴方が読書家であることを揺るがすことにはならない。北村薫が変人なのである。
ミステリ好きが昂じると、こういうことも起きる。ある日、有栖川有栖氏と著者が銭湯に行く。靴箱の番号札が有栖川有栖氏の場合「73」だったのを見る。一般的に人は自分の好きな数字を選ぶだろう。著者が有栖川氏に「何故それを選んだのか」尋ねると「意味はない」との答え。ふと著者は「何故、それを選んだか推理しましょう」という。
「理屈がつくんですか」
「はい」
(1)有栖川有栖はエラリー・クィーンのファンである。
(2)クィーンは言葉遊びが好きだ。ダイイングメッセージなど彼の得意とするところ。
(3)73をひっくり返してご覧なさい。エラリー(ELLERY)の最初の2文字「EL」になるじゃありませんか!
‥‥ちょっとかっこ良すぎるけど実話らしい。(189p)
私は北村薫によって、本格推理小説のなんたるかを学んだ。彼の小説は、ほぼ〈人は殺さない〉。日常推理モノである。それでも「これは、本格だ!」という見方を確立させた、第一人者である。また、所謂社会派ではない有栖川有栖氏などの推理小説も「トリックに重きを置いているわけではない」と喝破する。
何が本格か、そうではないかを分けるのか?北村薫は、このように定義する。
本格にとって、最も大事なのは、トリックでもなければ論理でもない。その素材を扱う人間の心の震えである。それが、物語と結びついた時、〈本格推理小説〉が生まれる。(140p)
蓋し、至言なり。