投稿元:
レビューを見る
少し未来の物語。
3歳くらいまでならば、自閉症が完治できる時代。
主人公のルウは、それが間に合わなかった、最後の自閉症世代。
しかし、数学とパターン解析の才能に優れているため
製薬会社にちゃんとした仕事を持ち、
一人暮らしをし、フェンシングクラブに入っていて、そこに好きな女性もいる。
そんなある日、新しくやってきた上司が、成人にも効く新薬が開発されたから、
それを受けなければクビだと言ってきた。
ルウを始め、自閉症セクションの同僚たちは悩み始める。
彼らの出した結論は……
あらすじから最初に受ける印象は、『アルジャーノンに花束を』。
実際、そう言うイメージを持ってたんだけど、
『アルジャーノン』がかなり最初の方から新薬を投与されて、
知能が向上していく様を描かれているのに対して、
こちらは、全体の90%くらいが、主人公ルウの生活と考えに占められている。
だから、非常に自閉症患者の考え方や行動が理解できる。
小難しい専門書を読むより、自閉症の概観を知ることができるかもしれない。
さて、感想。
この作品の感想はラストに集約されると思う。
あのラストはどうなんだろう?
無責任な読者としての感想は、望んでないラストだなぁ。
あんまり書くと、ぽろっとネタバレしちゃいそうなので、
興味がある人は是非読んで欲しい。
また、ルウを囲む人々はみんないい人でも、やはり敵役はいるわけで、
彼の言葉は、本書の中の言葉を使えば"ノーマル"の人々の代弁なんだと思う。
一読者としては、主人公に味方するから、彼は見るからに嫌な奴なんだけど、
普段の生活では多かれ少なかれ、そう言う風に見ているのではないだろうか?
それに気づかされただけ、非常に幸せな本と出会ったと言えるかもしれない。
オススメ。
投稿元:
レビューを見る
ネビュラ賞受賞作。
脳に障害を持つゆえに特殊な能力を持つ主人公。
同様の仲間とそれなりに楽しい日々を送っているが、新しい上司の為に仕事が脅かされる上、会社がらみの脳手術の実験台になることを要求される。
「光の先に常にくらやみがあるならば、くらやみの速さは光よりも早いはず」という言葉がくりかえし使われ、様々な暗喩に用いられる。
周囲の人の努力により上司は更迭され、手術は自由意志となった。
最終的に、彼が選択した道は。
投稿元:
レビューを見る
自閉症の主人公ルウの感じ方、彼の目から見た世界が丁寧に描かれていて、他者の内面に触れるという、貴重な(それが小説という架空のものであっても)経験を与えてくれた。自分は他人とうまくやれないと思ったり、疎外感を味わったりしたことがあるなら、共感を持って読めるのでは。最後の展開については、それまでのルウに共感して読み進めていただけに、複雑な思いだけれど、それが彼の意志であり選択なら・・・。
投稿元:
レビューを見る
よく「アルジャーノンに花束を」と比されるけれど、こちらのほうが「普通」なのだと思う。
特別なことが起こらないという意味において。
自分と周囲の違和を冷静に語る視線が興味深い。
私が私自身であることは私を傷つけないが、私が私自身であることを理由に疎外されるとき、私は傷つく。という部分に共感。
だからこその、ラスト。
投稿元:
レビューを見る
●おもしろかったです。
波瀾万丈、ではなく静謐に満ちた、
思考させられる面白さ。●主人公は、同じく自閉症である同僚たちとともに、それゆえの高い能力を発揮して現在の会社に職を得ている。日々の生活は充ち足りていて、さまざまな患者たちが集うセンターの他に、フェンシングクラブにも通ったり。そこには、好きな女性がいる。さて、会社に新しい上司が赴任した。その上司は、自閉症の彼らを優遇しすぎていると考え、外科的に治療するためのプログラムへの参加を強制して来る。・・・
●やはり、主人公ルウの冷静さがすばらしい。生得のものであれ、後天的に形成された人格的なものであれ、よき人格であることには変わりなし。
ルウみたいに振る舞える人がもちっと増えれば、世の中相当平和で穏和で満ち足りた世界になるんじゃなかろうか。そして、思わずこれまでの来し方を、深く反省してしまう私だったのでした・・・。ガク。●ところで蛇足ながら。どうして表紙には“ネビュラ賞受賞”の文字が印刷されてるんでしょうね? ハヤカワ文庫では昔から見かけますが、これって伝統??
デザイン的には、あった方がバランス取れて美しいような気もするけど。
投稿元:
レビューを見る
「光の速さが、秒速十八万六千マイルだとしたら、暗闇の速さはどのくらいなの?」
ラストに向かっての盛り上がりではなく、その過程を楽しむという意味で秀作。自閉症の主人公ルウの世界観がとても好きだ。だからこそ「それにぼくはいつまでも彼女が好きです」の台詞に切なくなる。
投稿元:
レビューを見る
読み始めは主人公の純粋な感情が読んでて非常に刺激的でした。純粋に世の中を疑う、猜疑心の大切さを再確認させられました。
しかしそんな主人公の魅力的な思考回路も途中で飽きてしまいました。
投稿元:
レビューを見る
「アルジャーノンに花束を」と似たような雰囲気を持つ本書。
自閉症の主人公の苦悩が細かく書かれている。
自閉症と言えば映画のレインマンくらいしか見たことがなく、人と喋る時に考えが回り過ぎて身動きができなくなってしまう人ぐらいの認識しかなかったけれど、この本を読んでその考えは一新された。
主人公のルウは自分のやり方、ルールを重んじているけれども、他の人の心情も汲みとることができ、普通の生活を営んでいる。
いや、一つの物事をとことん掘り下げて思い悩む様は普通の人より真剣に人生に取り組んでいるように感じた。
普通な人が様々を要因をごっちゃにして、世間と折り合って妥協した答えをだすのに比べ、問題を完全に他の問題から断絶して理屈のみで解決しようという姿勢には、天才の片鱗が垣間見れる。
自閉症が治せるだんとなって、自閉症が治ってしまった僕は、昔の僕と別人なのではないか?自分とはどこからどこまでが自分なのだろう?と、深淵な問いを読者に投げかける。
自閉症とは普通の人間より劣った状態ではなく、一般的な脳の回路とは違うだけ、感じかたが違うだけ、そしてそれは人間ならば誰しもそうで、その具合が大きいだけ、ただそれだけのことなのだと思った。
投稿元:
レビューを見る
「光の先に常にくらやみがあるならば、くらやみの速さは光よりも早いはず」
ちょっとこの時色々辛くて途中で挫折。いつかリベンジするのだ。
投稿元:
レビューを見る
訳がちょっとくどいなと思ったけど、自閉症の細やかな心、また、治療をした後の最後の章がなんだか寂しい。
投稿元:
レビューを見る
アスペルガー症候群の治療の未来を描いた、現代のアルジャーノン。そうか、自閉症の息子さんがいるのか、この作家。
投稿元:
レビューを見る
ふう。詰まり詰まりしつつ読みました。
自閉症の青年ルウが主人公。
彼は非常に高い知能の持ち主です。向学心もハンパない。
彼の視点で物語が進みます。
「ふつう」ということはどういうことなのか、考えさせられました。
自閉症という先入観で、彼を自分より格下に扱う人も出て来ます。
人間に優劣はないと考えています。
しかしワタシにも人を蔑んでしまうことがあります。
例えば、学歴や出身や性別で人格を判断する人。
あと、学ぶことをしない人。
そういう人たちは劣っていると思ってしまいます。
いけないことでしょうか。
投稿元:
レビューを見る
自閉症とはなんなのかという疑問に始まり、人の考え方、生き方について深く考えさせられる。現実でない小説の世界から伝わってくる独特なリアルが私たちに迫ってくる。
いったい私たちは何をもって障害とし、なにをもって改めよといえるのか。改めることが幸せなのか。
といったことを読んだ当時(中学生)は感じた記憶があり、出会えてよかった作品です。ただ今読んだら同じように深く考えるかというとそれは読んでみないと分かりません(笑)
投稿元:
レビューを見る
『21世紀版「アルジャーノンに花束を」』との触れ込みで読む。主人公は自閉症。人の表情や言葉のニュアンスが分からなかったり、イレギュラーなことに動揺したりはするが、知能は高い。「ノーマルになる」手術は受けずに終わるのかと思いきや、ページが残り少なくなってから受けるし、一時的に知能が下がるしで驚かされた。著者の息子が自閉症で、タイトルは息子の言葉とのこと。 2010/9/12 読了。
投稿元:
レビューを見る
『光の速さが、秒速十八万六千マイルだとしたら、暗闇の速さはどのくらいなの?』
『暗闇に早さはないんだよ』
『でも光の先に常にくらやみがあるならば、くらやみの速さは光よりも早いはずだよ』
現代版『アルジャーノン』と言われているが、自閉症のお子さんを持った作者の嘘偽りを捨てた生々しい描写に竦む。
ちょっと訳がくどい、というのは頷けるが、私にとってはそれは何の障害にもならない。むしろもどかしさや溜めこそが作者の揺れ動く心を表現しているようで好ましいくらいだ。
打算のない言葉は美しく、けれど受け入れられない。
美談ではないが、私は上記の会話が本当に好きだ。