紙の本
銀の糸で紡がれたような繊細さ
2005/02/23 10:40
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投稿者:紫月 - この投稿者のレビュー一覧を見る
デビュー作『四日間の奇蹟』で「このミステリーがすごい!大賞」を受賞し、二作目『君の名残を』ですっかり私の心を虜にしてしまった浅倉卓弥氏の三作目です。
読み始めてまず思ったのは、前二作と比べるとずいぶんと地味な作品だな、と。
これまでの天才的なピアニストが織り成す妙なる調べ、平安時代へ飛ばされた若者たち、といったような派手な設定はなく、今回はただただ平凡な若者が主人公。
人間関係に悩み、会社を退社するあたりの事情もよくあることだと思ってしまいます。
しかし読み進むにつれ、いいところも悪いところもひっくるめて、ああ、やはり浅倉卓弥の世界なんだなと納得。
現実には、こういう偶然は厳しいんじゃないの?なんと思う箇所もありますが、そんなことは無視して物語の中に入り込めば、心地よいロマンに浸れます。
銀の糸で紡がれたような繊細な、美しい筆致。
生命という大きなテーマを気負いなく物語の中に埋め込む潔さ。
時の流れというものを扱った『君の名残を』や、生と死を問いかけた『四日間の奇蹟』に通じる深さがありました。
——雪は夜をも染め抜こうと自ら柔らかな光を放ち始める——
こうした、随所に散りばめられた雪景色の描写が本当に美しいのです。
また、著者の作品はどれも音を効果的に使ってあるのですが、私にはなぜだかどの作品も『静』を感じさせます。
一作目は、聞こえてくるはずもないのに作中の美しい音色が聞こえてくるようで、それでもとっても静かな小説だと思いました。動乱の時代を描いた二作目も、笛の音を想像すると同時に、静かな夜を思い浮かべました。今回は雪が降り注ぎ、すべての雑音が排除されてしまったかのような、静かな町の物語です。
休みの日や夜のひと時、一人でゆっくりと読んだら癒されそうな、そんな作品でした。
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「四日間の奇蹟」の作者。ずいぶんと趣が変わりました。前作のほうが好きかな。
冬の風景描画は北海道出身者には懐かしかったです。
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デビュー作の「四日間の奇蹟」があまりにも有名になり、その感動作の作者として興味があったので新作を買ってしまいました。実は、この作品の前に「君の名残を」って作品があったのですけど、平安時代の設定?(だったと思う)のでパスしてこちらにしました。
18歳のときの雪の夜、公園で少女と出会います。その夢のような出来事から、社会人になってデザイナーとして働き挫折して、逃げるように故郷に戻った26歳の冬に公園でその少女と再会します。
挫折から再生、、、このテーマがやさしい世界観で描かれるのは、この作者のデビュー作に共通する作風かもしれないし、また肉体と心の分離存在的な考えも、デビュー作に通じるものがあります。
しかし、「四日間の奇蹟」に比べると、感動はあまりないです。あまりに理屈が多いような感じで、途中の説明的台詞は辛いものがあります(^^;。悪くない作品だけど、「四日間の奇蹟」があるだけに期待も大きい、、、これはしょうがないよね。
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高校生の相模和樹は、雪の降る深夜、試験勉強に飽きて煙草を買いに出て 昔遊んだ公園で白ずくめの少女に出会う。
その後の8年で、彼は進学し就職し そして職を辞して故郷の町に帰って来る。そしてまた、雪の降る深夜 白い少女と再会するのだ。
白い少女の存在は、和樹が自分の存在を想うときなくてはならないものになる。しかし少女が誰なのか、彼の想像の外に実際に存在しているのかは、はっきりとはわからない。
だが、夜の闇にも白く光って見える 少女と会う公園の世界は、降る雪を見あげる時の自分の居場所が定まらない感じとあいまって、不思議な場所へと誘ってくれる。
命とは、一回限りのものではなく、さまざまな形を借り、そこを通り過ぎてゆくものなのだ、という生命感が新鮮でもあった。
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デビュー作『四日間の奇蹟』で「このミステリーがすごい!大賞」を受賞し、二作目『君の名残を』ですっかり私の心を虜にしてしまった浅倉卓弥氏の三作目です。
読み始めてまず思ったのは、前二作と比べるとずいぶんと地味な作品だな、と。
これまでの天才的なピアニストが織り成す妙なる調べ、平安時代へ飛ばされた若者たち、といったような派手な設定はなく、今回はただただ平凡な若者が主人公。
人間関係に悩み、会社を退社するあたりの事情もよくあることだと思ってしまいます。
しかし読み進むにつれ、いいところも悪いところもひっくるめて、ああ、やはり浅倉卓弥の世界なんだなと納得。
現実には、こういう偶然は厳しいんじゃないの?なんと思う箇所もありますが、そんなことは無視して物語の中に入り込めば、心地よいロマンに浸れます。
銀の糸で紡がれたような繊細な、美しい筆致。
生命という大きなテーマを気負いなく物語の中に埋め込む潔さ。
時の流れというものを扱った『君の名残を』や、生と死を問いかけた『四日間の奇蹟』に通じる深さがありました。
――雪は夜をも染め抜こうと自ら柔らかな光を放ち始める――
こうした、随所に散りばめられた雪景色の描写が本当に美しいのです。
また、著者の作品はどれも音を効果的に使ってあるのですが、私にはなぜだかどの作品も『静』を感じさせます。
一作目は、聞こえてくるはずもないのに作中の美しい音色が聞こえてくるようで、それでもとっても静かな小説だと思いました。動乱の時代を描いた二作目も、笛の音を想像すると同時に、静かな夜を思い浮かべました。今回は雪が降り注ぎ、すべての雑音が排除されてしまったかのような、静かな町の物語です。
休みの日や夜のひと時、一人でゆっくりと読んだら癒されそうな、そんな作品でした。
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まるで『花とゆめ』に漫画化されてそうな現代のフォークロア。
それなのに、ぐっと物語のなかにはいりこませる文章。
このひとは、そういうのがうまいと思った。
読んでいて、心が温まる。
私は、こういう話は大好き。
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心温まる北国のお話。
主人公が他人とは思えなくて、ついつい感情移入してしまった。風景描写も美しいと思う。
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主人公の青年はデザインの仕事をしていて、作中に出てくる彼の作ったポスターが私の密かな気に入りです。文章でイメージを膨らませたポスターを頭の中で自分なりに変えてみるのもとても楽しいです。(梨花)
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浅倉氏の作品はいつも何気ない日常から始まり、読者の期待とともに一枚一枚物語のヴェールが剥がされていく。
逃避する主人公に自分が重なった。私はどこから来てどこへ向かうのか。再考させられる。
終始穏やかな雰囲気で、なんだか優しい気持ちになれる本。
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070306。浅倉さんの本は他には『四日間の奇跡』しか読んでいないけど、文章の描写がとても細かい。映像にしたいのかな?今回読んでいて邪魔に思うときもありましたが。。。お話は静かに淡々と過ぎていきます。「いかに生くべきか」と、生死・命を考えさせられるキレイなお話。
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相変わらず、少しファンタジー。
読後感とかは悪くないんやけど、読むのがちょいしんどい。
話にスピード感がないし、細部にツッコミいれたくなるし。
しかも途中の台詞(内容も言い回しも)が相当難解で、
高校の現代文の試験の気持ちを思い出しました(笑)。
「別れの哀しみより、出会えたことに感謝する」
「失うことを恐れるより出会えたことに感謝するべき」
って台詞はとても気に入りました。
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すっごい印象が薄い。あまり記憶に残ってない。そのうえでのコメントだけれど、現実とファンタゾーがいまいち融合していないように思えた。主人公の現実部分は面白かったけど、雪子が関わってくる幻想部分はいまいちしっくりこなかったような。まぁそれはうちがファンタジーは好みじゃないからかもしれないけれど。哲学的な考え方をする主人公で、しかも作品もそれがテーマみたいで、物語も淡々としているため読み進めるのがちょっと面倒くさかった。
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〜改めて言うまでもないが、僕は雪子と出会えたことに感謝した。彼女が失われてしまったことを思うよりは彼女の言葉の数々に触れられたことを喜ぶ方がよっぽど素敵なことだったし、〜出会うすべてにそんなふうに思えればいい〜
おお〜バツイチの身にはなんとも響く言葉。
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「四日間の奇蹟」の人。延々と「僕が僕であるということはどういうことか」みたいな観念がツラツラと書かれ脳ミソ酸欠。
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高校2年の冬。定期考査の只中だった僕は、雪の舞い散る夜中に煙草を買いに出かけた。その帰り道、深い雪に覆われた公園で一人遊ぶ少女と遭遇する。怪訝に思った僕は少女に声をかけた。「貴方私が見えるのね?」それが少女から返って来た言葉だった。
別段感動するわけでも無いが、安心して読める話という感じ。あらかた読むと結末も大体見当はつきます。モチーフが冬という事もあってか、とても静かなイメージを受けました。
かくちゃん、すけちゃんというネーミングは妙に可愛く感じてほのぼのしたなぁ。
物語前半に印刷に関する描写部分があって、「そうそう、昔はこんな感じだったー」と個人的にノスタルジーに浸れました(笑)