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紙の本
早川はどうしちゃんたんでしょう、このレベルの作品をハードカバーで出す?いくらブーム、売れるといってもこれじゃあねえ、素敵なカバーデザインが泣いてます
2005/09/14 20:29
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めての作家なので、ドキドキで手にしました。HAYAKAWA Mystery Worldの一冊で、ブックデザイン、というかカバーがこのシリーズ中最高の出来で、誰の担当かと思ったらthe GARDEN 石川絢士、Format Designは多田進とあります。で、石川絢士は東京創元社から同時期に出た北村薫『ニッポン硬貨の謎 エラリー・クイーン最後の事件』の装幀もしています。この人、なかなかいいですね。
でも、話の見当もつきませんので、まずブックカバー後の内容案内にある「古き良き探偵小説の香り息づく本格ミステリ」ていうのは、いいですよねえ。前衛的なミステリ、ってのも好きではあるんですが、時に全く理解できないこともありますし。しかも、舞台がヴィクトリア朝ロンドンです、こう何ていうか、探偵がもっとも似合うシチュエーションですよね。
舞台は1894年の11月、大英帝国首都ロンドンです。21歳になる遊佐藤十郎は、主人である鷲見新平が捜し求めていた一冊の稀覯書『ハートレイの魔女の書』を手に入れたばかりですが、災難に出会っています。まず、新平が家賃も払わずに消えてしまいました。そして、新平のことをよく知っていた大家が態度を豹変させ、彼に立ち退きを迫ってきたのです。
主人と連絡も取れず、お金も無い藤十郎はサザークのサリー座で占い女に手相を見てもらいます。その女が告げたのは「あんたの幸運の鍵はトラファルガー広場に落ちている」というものでした。それがカバーの紹介文に出ている、藤十郎がため息をついている場面につながっていきます。
そして、お金と食事、寝床にありつけるということから、渋々ですが藤十郎は公爵ハートレイの依頼を引き受け、ロンドンの街じゅうを右往左往することになり、その結果《十二人の道化クラブ》に起きている事件の調査に乗り出すことになります。王を13番目の会員に抱く《十二人の道化クラブ》、名誉ある会員のうちには黄色い猿による調査を歓迎しないむきもあります。
うーん、悪くないんですよ。ま、藤十郎のウジウジしたところは、何だか島田荘司の御手洗潔シリーズに出てくる石岡というか、京極夏彦の京極堂シリーズの関口というか、21歳の若い男が何やってんだろう、最低!とは思うし、これって、映画のヤングシャーロックレベルの話ジャン、といいたくもなるんですね。文章も、舞台の設定もお手の物といった上手さがあって、安心して読めるけれど、それ以上では絶対にありません。
カバー折り返しに著者案内が出ていました。真瀬もとは、1999年、本来敵役のモーリアティ教授を探偵役に据えたホームズ物のパスティーシュ『シャーロキアン・クロニクル エキセントリック・ゲーム』で新書館《小説ウィングス》大賞を受賞してデビュー。その後も新書館、角川書店のヤング・アダルト部門で、次々に作品を発表。切なさに満ちた幻想味ある歴史ミステリが十代から二十代の女性を中心に好評を博す、とあります。
道理で、といいますか確かに十代から二十代の女性を中心に好評を博す、というのがよく分るのですが、そこまでかな、って。ともかく、表面的なんです。人間関係もなにもかも。で、十二人の道化クラブって書いてあっても、所詮印象的なのは半分くらいで、人物の描き分け、殆ど出来ていませんし。それに、間抜け過ぎますよね、『ハートレイの魔女の書』の件。
結局、リアリティ、ゼロだけならともかく、遊び心も伝わってきません。ファッション小説レベル。
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