紙の本
このオハナシばかりは読後感で世代差が出てしまいました。高一と高三の娘二人は絶賛、私はちょっと保留
2006/04/08 16:14
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ちくまプリマー新書の一冊で、この新書に小説が入る、それも書き下ろしの、とは思っていなかったものですから広告を見たときは半信半疑で、正直、手にした今でも「うそでしょ?」と思っています。正直、いくら品がいい新書だからって、装幀くらい変えろよ、っていいたくもなります。
その素晴らしい装幀は、クラフト・エヴィング商會。限りなく和の風情を漂わせながら、べとべとしない。ちょっとレトロだけれど、都会的。色もあっさりしていて上品。こういうセンスは、この会社?だけのものでしょう。大好き!しかもです、包帯クラブに The Bandage Club って英文字を入れるあたりが、上手い。
さて、最初に書いておけば、この小説を読み終わった高二(今度、高三)長女は、「いいよ、このお話」っていいました。親譲りで、どちらかというと甘めの展開にはダメをだすのが普通ですから、今回もてっきり×かと思っていたんですが、そうじゃあない。ま、主人公たちの年代もあって共感しやすい、ということもあるんでしょうが、それだけじゃあないでしょう。
構成も、実はかなり凝っていて、捻りもありますし、単にハッピー!っていう展開もしない。挫折もしっかりあるわけで、それを乗り越えるのだって、コミック風の劇的なというか造り物めいてはいないわけで、そこが評価されたのかな、なんて思います。それでいて、私に言わせればやっぱり小説だよな、って思えるところがあって、そこが娘と私の評価の差となって出てきています。
小説の紹介とくれば主人公を、というのが決まり事ではあるんですが、このお話で主人公を一人に絞る必要があるかといえば、ま、無理することもないかな、と思います。とりあえず最初に出てくるのが、タイトルにもなっている包帯クラブが出来た当時、16歳、高校二年生のワラ、こと笑美子が名前です。
ワラについての情報が一番多いのでついでに書いておけば母は自称34歳、実際は44歳という強かな女性、弟は二歳年下の性にたいする好奇心が活発化する14歳。で両親は17年前に結婚したのですが、5年前に父親が女を作ってしまい離婚。ですから母子家庭ではあるわけです。
そのワラが授業をサボって久遠市の中央地区にある総合病院の屋上にいたとき「彼女、そこの包帯ほどけている女子高生。パンツのひももほどけて動かれへんのかな」と声をかけてきたのが、後にクラブの一員となるディノこと井出埜辰耶です。実はワラより一つ年上ですが留年して、ワラとは違いますが今も北地区の進学校の高校二年です。学業に関しては優秀ですが、昨年からおかしな行動を取るようになって、周囲から白い目で見られています。
その屋上で、ワラが行なったこと、それが「包帯クラブ」となっていくわけです。自分の心がそこで傷付いた、そういう場所を捜しては包帯を巻いていくこ。それで、本人の心が癒されていく(流行り言葉で私は大嫌いなんですが)。その輪が広まっていきます。それゆえの障害も生まれるんですが・・・
他の登場人物を書いておけば、ワラと同じ高校に通っているのが中学時代に部員が四人の『方言クラブ』をやっていて、今も友だちのタンシオこと丹沢志緒美です。二人の違いはいろいろあるんでしょうが、一番の違いは、高2になる春休みにセックスも経験済のワラ、未体験ゆえに純情で失恋に哀しむタンシオということになります。
凄く面白い、っていうのではありません。どちらかというと、カバーデザイン同様、微温的な、ぬるま湯につかるような心地よさ。といって単にファンタジックかっていうと、登場人物たちは現代的な苦しみに心を傷つけています。ただ、それもドロドロのものではなく、ありがちなもの。天童って坦々とした話も書けるんだ、と再認識。
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天童荒太待望の新作はなんとちくまプリマー新書。この本の登場人物の感覚についていけるうちは、まだ自分の青春も終わっていないんだと思いました。
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人が受けた深い傷に、「それは傷だと思うよ」と口に出すことで、いたわりを伝えることも出来る。でも、包帯を巻くことで、余計に痛々しく感じられはしないだろうか?う〜ん、傷つきやすい少年少女たちの、胸の内を理解することは難しい。。。
それぞれの「報告」として少しだけ書かれていたが、私は大人になった後の彼らのことがもっと知りたいと思った。
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別に、他人に痛みを解ってもらおうなどとあまり思わない私にとっては、ちょっとぬるい作品に感じてしまいました。作者や登場人物のメッセージもよく解るんだけれど、人によって「合う」or「合わない」が分かれそう。合う人にとっては、とても優しい本かもしれない。(2006.02)
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軽快なタッチで、キャストも高校生ということでおきらくに読んでおりましたが、これが予想外にこたえています。さすが、天童荒太文学。
両親の離婚という経験から、どことなくトラウマを背負ってはいるものの
前向きな女子高生ワラ。人の心の傷だけでなく、世界のどこかで苦しんでいる
誰かの傷にまっすぐに立ち向かう少年ディノ。
そして、二人を取り巻く一見どこにでもいる普通の高校生たち。
日々の生活のなかで、私たちもよく理解できる大人がつくったシステムにたくさんの傷を受けている高校生たちが集まってできたのが、誰かの傷を癒すためのクラブ、包帯クラブ。
あまりに単純なやり方なのに、いい大人の私も、すっかり自分の傷に包帯を巻いてみたらどうだろう、そして、自分が誰かにつけた傷に包帯を巻いて上げられたらどうたろう、と作品に思いを重ねました。自分の傷や誰かの傷跡を包帯で巻いたらこの国は白い包帯でいっぱいになるのかな、って想像すると、誰かの犠牲の上で暮らしていることを忘れてはならない。と自戒します。この作業は物語のやり取りのなかにこめられているように思います。また普通の高校生の会話の中で、時折込められた世界へ向ける目は、天童氏のメッセージなのかもしれません。最近読んだ本の中で印象的だった「シエラレオネ」やそして、日本では報道されきれない、世界中の傷のこと。自分には何もできないと諦めている大人がとても多い気がします。でも、この本を読んで、自分のちいさな可能性を感じることができる気がしました。
「何もならないのはわかるよ。なにもならないことの証としてでも巻いていこうよ」
できないことを自分なりに抱えて生きること、それだけでも、何かの一歩になるかもしれないと、そんな勇気をもらえた一冊でした。たくさんの高校生にも読んでもらいたい本です。
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実はずっと気になっていて、本屋で眺めていました。でも、天童 荒太さんがテレビでこの本を書き上げるための背景を聞いてびっくりして、即買ってしまいました。
こんな短い本なのに、この人の町の細かい状況から、小さい頃から大人の頃まで全部きめてから、書いたんだって。
すごいなあ。
結構、内容は青春ものなんだなぁ。って感じでした。
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高校生から就職するまで、周りから見るとほんの些細なことでも、自分にとっては大きな棘になっているものがいくつかあった。
今では薄れてきたけど、この本を読んで、その棘たちを思い出した。今でもやっぱりじくじくと痛んでいる。
あの頃、この包帯クラブがあれば棘は抜けたかもしれない。その棘は、傷なんだよと認めたもらえたのかもしれない。
主人公たちに思わず感情移入していまい、涙を流してしまいました。
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久しぶりの天童荒太さんの小説。高速バスの中で、涙目になりながら読んだ。生きてく中で心の傷は絶えないけれど、傷だと認識して包帯を巻くことで癒すことができるというのはなんだかちょっと心が温まった。みんな一生懸命生きてるのに辛いことがいっぱいある現実がなんだか優しい目線で描かれていてよかった。ちょっと頑張ろうかなって思えた。
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鼻からップっとくるような笑いと友情姿にッグっときました。
終わり方ビーミョだったけど中身が面白かったのでいいですわ(ぇ
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どんな些細な傷でも、「それはちゃんとした傷なんだよ」と言ってくれる人があれば。見て見ぬふりした傷は化膿して腐るかもしれない。ちゃんと手当てされた傷は、かさぶたになって、いつか剥がれ落ちる…。
傷を負った人は、誰かの痛みをわかってあげられる人。
私も包帯を持って、街に出たくなった。
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天童荒太の最新作。ジャケがシンプルで印象的だから買ったけど、内容は「永遠の仔」に比べると、、、天童荒太の作品はいつも暗いよね。
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高校生の主人公が、人の心の傷、自分の心の傷について考え、行動を起すって話。いつも思ってることだけど、自分を中心に世界は回ってるようで、回ってなくて。自分が感じてる痛みと、同じような痛みを他の人も必ず持ってるわけで。そういう、当たり前なんだけど、普段は忘れがちなことを、掘り起こさせられるお話です。自分のココロの傷を認めながら、人のココロの傷にも気付いてあげられたらいいんだけど。私はそこまで出来た人間じゃないなー。
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それが傷なんだよ。私も言われたい、そう認められたい。そうすれば、心の奥が軽くなるのにね。等身大の子供達の物語。きっと誰もが、少しでもそういう気持ちを抱えてる。私もああゆう仲間が欲しいな。ディノのその後が気になります。
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自分が傷ついた場所に包帯を巻くことで心の傷を自覚し、気持ちが癒されるということを発見し、町の至る所に包帯を巻く高校生達の物語。狙いはわかるし、なるほど、ごもっとも、と思います。でも、どんなに傷ついても「こんちくしょう、負けてたまるか」と頑張っちゃう人の方が好きです。はい、基本的にこの本のコンセプトと合いません。物語も単調で退屈でした。報告書の形をとってるせいもあるだろうけど、説明過剰、言葉過剰なのがずいぶん気になった。
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自分の子どもが生まれたら読ませたい本。 こういう感性を持った人間に育って欲しい。まだ子供なんていないけど。