紙の本
美しい世界がここにある
2011/02/22 15:34
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投稿者:なかはらとまと - この投稿者のレビュー一覧を見る
美しい世界がここにある。なにげない日常がこんなにも光り輝いて見えるのは、歌人でもある東直子さんの言葉の魔法のなせる技だろうか?「コキリコ・ピクニックランド」にまつわるエトセトラ。長崎くんの指に恋してしまう女の子の物語り。長崎くんに恋してるのか、指に恋してるのか、まったく分からないながらも長崎くんに惹かれ続ける、わたし。
やはり、歌人だなぁと感じさせる文章を引用させて下さい。とても素晴らしいのです。「言葉ではないものが、いいんですよ。毎日、毎日、家でも仕事場でもいろんな言葉があられみたいにぶつかってくるでしょう。もうずいぶん慣れました。慣れましたが、傷つくこともありますよ、生身ですからね。でも、花や蝶は黙ってきれいなものを見せてくれる。心を動かしてくれる」
心に潤いを与え続けてくれる東直子さん。感受性が豊かになれそうな、そんな、作品。連作短編で、読みやすく、お話が繋がっているので、楽しく読書出来ました。是非おススメしたい作品です。
紙の本
どこかで読んだ、っていう感じが付きまとうんですが、それが決して嫌な感じではありません。この上品なエロスはなかなかです
2007/02/10 17:24
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
装幀だけを見て選んだ本ですが、当たり!でした。でも、てっきりポプラ社のものかと思っていたんですよ、このブックデザイン。いわゆるソフトなハードカバーで、手にした感触がとてもいい。しかも、カバー写真がとても素敵なんです。長女に見せたら、それって毬藻?って聞かれてしまいましたけれど、緑色の球体が可愛らしい。無論色合いも素適です。
そんなカバー作品は勝本みつる、[ sound from a study in green ] Mitsuru Katsumoto。装丁が名久井直子、撮影は清水朝子。
目次の書き方が、ほんの少しだけ楽しいので写しておけば
長崎くんの指/目次 と、この「/」の入り方がいいです。で各話を( )内に初出を補って紹介すれば
・長崎くんの指 (『ウフ.』2005年 9月号):家出をして仕事と住居を探していた私が見つけたのは、遊園地の仕事と物置みたいなところ。それを提案してくれた長崎くんの指は、すっきりと細く、すんなりと長く、すべて適度にふくらんでいる几帳面さがたまらない、まさに知的で完璧な指だった
・バタフライガーデン (『ウフ.』2005年10月号):妹の娘の面倒を見ている私は、遊園地の温室。そこで働いている岩山さんに魅せられて
・アマレット (『ウフ.』2005年12月号):その人並みはずれた美貌のせいで小さい時から誤解されつづけてきたマリアさんが、会社の受付を辞めて辿り着いたのは、遊園地の観覧車
・道ばたさん (『ウフ.』2005年 1月号):麻美の家の前で行き倒れていた女性を引き取ったお母さんは、記憶を失った彼女を道ばたさん、
・横穴式 (『ウフ.』2005年 3月号):遊園地の洞窟アトラクションに心霊スポットの取材に行った私が出会ったのは
・長崎くんの今 (書き下ろし):服を脱ぎ散らかして寝てしまうことがある長崎くんもやっと一児の父に。そんな彼がふと思い出す
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夕暮れのひなたの国 (『短歌ヴァーサス』第4号)−あとがきにかえて
となります。読みながら川上弘美や角田光代、三浦しをん、それに小川洋子といった人たちを思い浮かべました。男の人との距離感、ちょっとフェティッシュなところ、人間関係の捉え方。同時代性としかいいようの無いものが、これらの人にはありますが、それが決して流行のお涙頂戴に流れないところも似ていて、いいです。
それから性的なものの表現が、とても上品で、女性からみたそれがとても自然に描けていて、これが耽美的な方向へ向かうと、決してそうはなりません。一つ上の世代が、ともすればベトベトしたセックスを描くのとは大きく違って、どこかサラっとしている、それでいて気取っているわけでもない(ま、しをん、はもっと露悪的ではありますが)。私は表題作が1番好きですが、他もすべて水準以上の出来。気負っていないところが素適です。
著者は歌人だそうで、これが初の小説集。「コキリコ・ピクニックランド」という遊園地を舞台に、七人の人間がゆったりと縁を結ぶ、そうとでも言いたい連作集です。連作といっても緊密さは控え目。なんていうか、繋がってはいるんですが、延ばした手と手が触れずに、それでいて求め合うような感じ。
著者略歴を見ると情報が満載。私は全く知りませんでしたが、それを見る限りはこの人、かなりの人気者らしいです。この分であれば、次作も期待できそうです。おなじ人間の縁(えにし)を描いても、加納朋子の『モノレール猫』に感じた甘さはありません。ちょっとクールな感じが、私好み。それにしても『ウフ.』っていう雑誌、心惹かれません?
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夢の中を漂っているような不思議な感じの本だ。詩人らしく言葉のあちこちに新鮮な響きがありここちいい。物語としてはおもしろいのかどうかわからない不思議さがある。
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2010.05.15. 久々に読み直して、ものすごく好みだということに気づく。こんな妙な雰囲気を持った小説だったっけ。アヤシイ色気がちらりとのぞくのもいい。東さんの初小説だと思うんだけど、原点はここにあるなあ。★の数アップします。
2006.12. 不思議な微妙な気持ちを残す連作短編集。表題作の「長崎くんの指」が1番良かったかな。★3つ
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さびれた遊園地を舞台にした不思議な話。うーん自分に合わなかったのか、なんともとりとめのない感じが…そこが良い所なのかもしれないけど、なんだかとにかく本当に不思議。
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みんな、いま、どうしているんだろう。長崎くんの今、を読んでも心に張った薄膜がなくなりません。私の心も、コキリコ・ピクニックランドで立ち尽くしたまま。灰色がかった、薄ぼんやりした水色の世界がぽやぽやと広がっています。
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『コキリコ・ピクニックランド』に引き寄せられる人々を描いた連作短篇集です。どの人々も世の中とちょこっとズレている。完璧じゃないところが気持ちいい。ちょっとへんてこでも生きていけるということで、救われるのです。でもそんな人は人間離れをしていてちょっとおっかない。そんなところも私を釘付けにする魅力を持った本です。
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錆びれた小さい遊園地を通して
関わる人達のそれぞれのお話
錆びれた遊園地に集まる人は
それぞれ
なんとなく寂しい人達
それだけに人間的なものもあるんだけれど
やっぱり
寂しいですねぇ・・・・・
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郊外のさびれた遊園地「コキリコ・ピクニックランド」がかならず出てくるオムバニスドラマのような小説集です。
装丁の「長崎くんの指」というタイトルに惹かれて買ってしまいました(笑)
家出をしてたまたま訪れたコキリコ・ピクニックランドに住み込みで働くようになった人の話、勤めていた銀行のお金を着服しあても無く逃げていた途中たまたま訪れたコキリコ・ピクニックランドで働くことになった人の話、行き倒れになっていた女性を助け一緒に暮らし始めてしまう母娘の話、雑誌社の心霊特集の取材の為にコキリコ・ピクニックランドを訪れそこで不思議な体験をしてしまう人の話、何十年もコキリコ・ピクニックランドの観覧車を回し続け観覧車の前で生涯を終えた人の話・・・
コキリコ・ピクニックランド人生劇場といった感じでした。
心霊特集の取材の為にコキリコ・ピクニックランドを訪れた女性記者が、最後にはあの世につれていかれるように闇に消えていくところが読んでてちょっと怖かったです。
最初と最後にタモリが出てきてもおかしくない感じでした(笑)
日常の中のちょっと不思議な物語ですね。。。
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摩訶不思議。
廃れた遊園地を舞台に繰り広げられる、人々の物語を描いた連作短編集。淡々とした中に、すごく独特で妙な雰囲気を漂わす作品。ちょっと危なげな感じだったり、ふわふわしたかと思えば、いきなりミステリー路線に入ってゾクゾクさせられたり。何とも一筋縄ではいかない。
微妙な余韻を残しつつ終わるラストに「えー!!」と思いつつ、そそられる。特に「横穴式」は◎。その先が気になって仕方ないけど。
「道ばたさん」の奇妙な舞いも、あれはあれで面白かった。
全体的に結局なんだったんだろうとか、どうなったんだろう?と疑問が残る作品のオンパレード。でもそれが不快じゃないのは、作品を包む不思議なオーラの魅力のせいかもしれない。
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不思議な遊園地「コキリコ・ピクニックランド」をめぐる7つの物語。
「コキリコ・ピクニックランド」行ってみたくなりました。
でも、6つめのお話は ちょっとゾクゾク〜っとしました。
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初めてこの方の本を読みましたが、東さんというのは、人気歌人らしい。そして戯曲とかも書いてる多才な人らしい。そしてこれが初小説らしい。
物語は短編で
『長崎くんの指』
『バタフライガーデン』
『アマレット』
『道ばたさん』
『横穴式』
『長崎くんの今』
全てに「コキリコ・ピクニックランド」という遊園地が関わってくる。
なんていうか、不思議な話というか、現実離れした話というか。世界に入るまでに少し時間がかかりました。
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成り行き。
ぜんぶ成り行きってこと。
*
6人の主人公たちの、誰一人にも、積極的な何、があるとはいえなくて。
それなのに、少しずつ普通じゃないドラマが展開されて。(そうして「普通」がわからなくなる)
そんな、常に常に覚醒状態で意識的に生きるなんてことは出来なくて、
いやむしろ、極端な緊張状態のときこそ、むしろ夢の中でするような気持ちでしか行動は選び取れないのだから、
なるほど物語なんてこんなものだ、と思う。
たわいもないというか。
*
何はともあれアマレットが飲みたくなります←ただのノン兵衛。
物語の中のお酒とか食べ物の描写って好きだわ。
「こっくりと濃くて甘いその飲み物は、喉を熱く舐めるように身体の中に落ちていった」
「こんな甘い酒がやめられなくなるなんて、あんた、疲れとるんじゃないかね。
そうだ、あんた乗ってみるかい?例の、あれに」
*
今日は月が綺麗です。明るくって。
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「コキリコ・ピクニックランド」という風変わりな遊園地を舞台に綴られる短編連作集。「長崎くんの指」ちょっと小川洋子っぽいかな。「バタフライガーデン」蝶の庭で過ごす夜。「アマレット」マリアさんと観覧車係の森田さんの交流。「道ばたさん」記憶喪失(?)の道ばたさんとの日々。「横穴式」恐怖の洞窟アトラクション。「長崎くんの今」立ったまま眠ってしまう長崎くんがパパになる?「夕暮れのひなたの国(あとがきにかえて)」おねいさんの話。これが一番ぞくっときた。実話なのでしょうか。これだけちょっと特別。
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普通に読み始めたけど、コレホラーなんですかね。
怖かったです。
古い遊園地に関わる人たちの連作短編。