紙の本
新訳の名に恥じない名訳。こんなに面白い作品だったのかと初めてわかった。
2007/02/06 23:39
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
素晴らしい!
ケストナーというのはわたしにとってどうにも微妙な名前であった。気にはなるのだが、面白さがよくわからないのだ。『エミールと探偵たち』『雪の中の三人男』『飛ぶ教室』……。
しらじらしい。という気もする。ユーモアや道徳がわざとらしい。ような気もする。だけど、それが楽しめない決定的な理由ではないような気もしていた。そんな本ならほかにもいくらでもあるのだから。
『飛ぶ教室』を読むのは今回で三度目(それぞれ違う訳本で)となる。これまでケストナーをいまいち楽しめなかったのは、翻訳が原因だったのか!と胸のつかえがすっきり取れた。
ですます調や直訳調がないだけでもずいぶん違う。テンポがよくて、もたもたとしないから、泣かせ所や落とし所がきちんと生きている。めりはりが利いているおかげで、実務学校生との決闘、ウーリとマティアスの友情、禁煙さんとの邂逅、ジョニーの涙、いろいろなシーンがキュッと締まって、わかっちゃいるのにじーんときてしまった。
子どもたちの台詞も、旧訳とくらべるとずいぶんよくなった。白々しいお利口ちゃんだった生徒たちが、洋画の名優たちくらいには生き生きとし始めた。(微妙な褒め方だけど、わたしは映画を通してしか外国の子どもを知らないのだから仕方がない。)
生き生きし始めたのは子どもたちだけじゃない。旧訳では、クロイツカム先生は風変わりでもなかったし、ベーク先生はいい人でもなかった。地の文でそう説明されていたからそうだとわかるだけで、文章から人柄が伝わってくることはなかったのだ。
たとえ原典が名作でも、日本語化された作品もそうであるとは限らない。名作『Das Fliegende Klassenzimmer』が、2006年になってようやく名作『飛ぶ教室』として日本に“初”紹介されました。
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あらゆる世代が楽しめる、最高の児童文学。大人と子供、勇気と友情、日常と非日常、あふれるやさしさと、ほんの少しの厳しさ、物語に詰め込まれた素敵なエッセンスを、たっぷり味わってください。
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子供っていうのは子供に色々考えているものです。決して大人には理解してもらえないけど。
ここに出てくる子供たちに多少共感しながらもどこか冷めた目で見てしまうのはもう子供じゃないからでしょうか。
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ドイツの作家、ケストナーの児童文学作品です。
その他、児童文学では「点子ちゃんとアントン」「エミールと探偵たち」「ふたりのロッテ」などが有名ですね。
「飛ぶ教室」は
ギムナジウムで暮らす5人の少年の、クリスマスまでの冬の何日かを描いた
楽しいおはなし、です。
けんかや友情、大人とのかかわり、親への気持ち・・・
ストーリィはスタンダードですが、読んでいて楽しいのは
少年たちへの作者の暖かい視線を感じるから。
簡潔でべたつかず、ユーモアに満ちた文章からは
ケストナーの「すなおで軽やかなこころ」を見ることができます。
訳者丘沢静也氏の解説にも書かれています。
『人生は綱渡り。だがケストナーは悲壮ぶらずに、ユーモアというバランス棒を持って、軽快に綱渡りしてみせた。「人生を重く考えることは、かんたんだ。しかし人生を軽く考えることは、むずかしい。」』(p.226)
そう思う。
むずかしさにチャレンジしているからこそ、すなおで軽やかな姿勢は好ましい。
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なんでもっと早くに読んでおかなかったんだろう。
せめて中高生のころに読んでいたら、ちょっと考え変わってたかも。
訳もとてもわかりやすく、あっという間に読み終わってしまった。もっと読みたい!と思えるような本。
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「勇気のある人間が賢くなり、賢い人間が勇気をもってはじめて、人類の進歩というものが感じられるようになるだろう。」「ぼくって、ものすごい臆病者なのさ。でもね利口だから、誰にも気づかれないようにしてるんだ。」
個人的にはマルティン、ウーリがお気に入り。禁煙さんと正義さんの会話も好き。マルティンが帰宅できたときは本当に嬉しかった。
やっぱり男の子の友情ってとてもいいなあ。
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クリスマス前なので「飛ぶ教室」。山口訳は受け付けなかった。丘沢氏の翻訳は中学生口調に近づいているけれど、ときどき妙な訳が。あとがきにあるように、ドイツ語で読まないとしっくりこないのかなぁ?
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少年達の生活をつづったお話。実際、色々な問題や悲しみ、もどかしさをかんじていているけれど、それらを全部包み込むようなやさしさに溢れています。
読み終わったあとに、なんともいえない幸福感が込みあがってくる。
そんな感じ。
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少年時代同名?の漫画が短期間連載され
この本も読んでみたいと思っていたが、なぜか読まずにいた。
大人になったからこそ気づくこともある。
大人だから書けることもある。
友情、愛情、優しさをサラリと。
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なんともスウィートな小説。
なかでも孤独に学校裏の禁煙車両で暮らしている「禁煙さん」と教師であり寮の監視役の「正義さん」のエピソード、もともと舞台になっている学校で一緒だったのだけど離れ離れになっていたのだ。生徒たちの素敵なサプライズで再びめぐり合う。正義さんはクリスマスにお金がなくて家に帰れない生徒のマルティンに切符代をプレゼントし、「君たちはわたしに金塩酸をプレゼントしてくれたからね」と言う。こことても好き。
もちろんスウィートじゃない部分もいい小説。特に弱虫とからかわれがちなユーりが自分の勇敢さを見せ付けるために飛び降り劇を見せて、大怪我をするのだけど、それに対して禁煙さんが「もしこれをしなければこの子は別の病気になってしまっただろう」というところだ。作者は前書きで勇気と賢さが大切だと説く。賢さなしの勇気は乱暴で、勇気なしの賢さは冗談と半ば怒る。この二つが合わさってやっと人は成長するのだと。生徒ももちろん制しー徴するが大人の禁煙さんと正義さんも成長する。勇気と賢さを持って。
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よくわからなかった、というのが素直な感想です。どこか、何かに熱を入れることができず、何か心に残すこともできませんでした。読み継がれている作品に手大して、何も抱けないというのはとても情けないし、恥ずかしい。
読み終わったのは1ヶ月半も前のことなので、いまでは読んだ雰囲気をかろうじて思い出せる、といったところでしょうか。長年連れ添う、連れ添った仲間と一緒に、世の中に影響を与えなくても自分たちには与えるできごとをする、そんな感じ方をしています。たぶんお酒と共に読むのが適していると思います。
2008.9.27. 23:05 自室にて読了
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2008.11
ちょっとイメージが違っていた。ファンタジーな感じの本かと思ってました(何か勘違いした、私?)
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BLな目線で読むと最高(笑)な古典。
男の子ばかりの登場で、しかも女装少年までとは時代をかなり先取っている。
腐女子が喜びそうだ(笑)。ライトノベルっぽくしたら大喜びだろう。
友情がいっぱいだ。正義さんと禁煙さん、仲良すぎ……。腕を組むなんて。
正義さんことヨハン先生の話を聞いて生徒たちが改心(?)していく過程がステキだった。
ただ、ヨハン先生の話の教訓は心を割って話せる人の必要性なのに最後まで
マルティンが家族のことを話そうとしなかったのは物語的にどうかと思う。
本全体が雪のように真っ白でその雪景色がありありと浮かんできた。凄くステキなクリスマスストーリーだった。
文章がシンプルで下手な技巧を伴わないため、感情が素直に伝わってきた。
それでも、もっと上手く訳してもらいたい。文のつながりとか。
彼らのその後を知りたいと思った。最初はキャラクターが五人もいて、その個性を
把握するのに時間を要してしまった。
それにしても、語り部は結局誰なんだろう。空想と現実の融合だとも考えられるが、なかなか粋なことをしてくれる。
大人と子どもが明確化していて、ヨハン先生みたいな大人になりたいと思う。
最後のクリスマスプレゼントなんてお約束だけど、なんて粋な計らいをするんだろう…ステキだ……。
やはり古典というものはおもしろいから現在まで読み継がれているのだろう。
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古典、特に海外ものってずっと嫌いだったんですよ。
あの個性もリズム感もなくしてしまう訳、変に格調高い文章、児童向けにはよく見られる「です・ます」文。さらには子供のときに無理やり課題図書で読まされ、嫌いというより嫌悪してたんです。
それがこれを読んだら「あれ?」と。
古典新訳文庫にはまるきっかけとなりました。
なんとなくタイトルに惹かれて購入。正直な感想、すっごいおもしろかった!これが新訳か、やったな光文社!と思いました。こんなに面白いんだったら書店で文庫担当時代にもっとプッシュしておくんだった。ごめんなさい、光文社(土下座)。
登場人物がみんな素敵。主役の子供たちもそうだけど、」それを見守る大人たちも素敵すぎる。
元がいいのか訳がいいのか、名前が横文字なのにキャラクターがすんなり頭になじむ。初めてかもしれません、登場人物がしばらくぶりに出てきたのに「誰だっけ?」と前のページをめくらなかった本は(笑)
じんわりしてほろりとして、くすっと笑って、本当にステキなお話でした。
子供のころに読みたかったなー。
でも大人になってから読めたのも幸せかも。
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飛ぶ教室に引き続き、新訳版を読んでみた。
旧訳版読んだのがもう10年前だからあまり覚えてないけど読みやすくなってた印象。
見えない車輪に押しつぶされてゆく主人公の姿が痛ましい。