紙の本
国民性の違いをあげてもいいと思いますよ、これでヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞を取れるの?って。直球で勝負してほしいんですけど
2007/02/26 20:29
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
造本が素適で、お気に入りのシリーズ、河出書房新社の奇想コレクションの一冊です。相変わらず、松尾たいこの装画は、その大味な色面構成風のところが魅力ですが、今回はいろはモノトーン風で抑え目。それが、当然のごとくシックな味をだしていて、叢書にぴったりと言えるでしょう。シリーズ造本設計 阿部聡、ブック・デザイン 祖父江慎+安藤智良(コズフィッシュ)だそうです。
訳者である大森望の解説なども利用させて頂いて、各編を簡単に紹介します。なお( )内は、初出年です。
・女王様でも(1992/4):ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、アシモフ誌読者賞、SFクロニクル賞の五冠に輝く風刺コメディ。孫娘の行動に家族が、というか母親が振り回されるお話。訳者・大森望の解説の言葉を利用させてもらえば、史上初の月経SF短編、とありますが違うでしょうね。むしろ、新興宗教の勧誘をパロディ化し、そのツールに月経を利用した、というのが分りやすい、風刺というよりはドタバタ。深みは感じません。
・タイムアウト(1989/7):現在子というものを軸に、マッド・サイエンティストが男女の心を弄ぶお話。それがタイトルとどう絡むかが見せ所です。この手の話によくあることですが、再読をしないと流れが掴み難いでしょう。特に、研究の実態を明かさずに話を展開させるため、伏線だらけのミステリを読んでいるような、技巧の割に中身は薄い・・・
・スパイス・ポグロム(1986/10):スペインのSF賞であるイグナトゥス、アシモフ誌読者賞受賞の、やはり風刺コメディというべきか。日本語が随所に散りばめられたエイリアン物で、日本人はこれだけで喜んでしまうでしょう。これに言語的なスラプスティック、韓流風の男女のこころの擦れ違いを加味すると、このお話になります。
・最後のウィネベーゴ(1988/7):ヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞、アシモフ誌読者賞、SFマガジン読者賞の五冠に輝く作品。カメラマンが路上でみかけた死んだジャッカル。躊躇いながら通報をしたものの、名前も告げずに、予定の取材現場に。彼が撮影するのは老夫婦が旅しながら利用している『正真正銘のウィネベーゴ。100パーセント本物』。ちなみに、ウィネベーゴは、これまた大森望の解説の言葉を借りれば「アイオワ州フォレストシティーに本拠を置くWinnebago Industries 社製の大型キャンピングカー(アメリカで言うモーターホーム)。
収められている作品中、唯一、ドタバタがない、そういう意味でも真面目な読者に評価されるのは分るのです。ただし、私はウィリスのもってまわった話の運び方が、どうも気に食わない。言いたいことがあるなら、技巧ではなくて中身そのものでストレートに勝負できないの?って思うんです。それはこの作品に限りません。「タイムアウト」しかり、「スパイス・ポグロム」しかり。いえいえ、『犬は勘定にいれません』『航路』も同じ。
無論、この構成があってこそ、読者は話の展開に頭をひねり、繰り返し読み直すことで伏線に気付き、結果として作品の印象が深まることは否定しません。読みにくくしているのは、あくまで構成であって文章も情報密度も文句なし。それを承知の上で書きたい。ストレートに書いたら、どうよ、って。そうしたら、SFじゃない、ミステリじゃない、って?
そうじゃないでしょ。できるでしょ。変化球じゃなくて直球勝負を見たいんです。絵画で言えばデッサン力を見たい。ウィリスならばできるはずですよね。技巧で話を膨らます、技巧をありがたがるのは分るんですが、読書の感動の本質は、そこじゃないんじゃないか、そう私は思うんですね。特に、こういう作品にぶつかると・・・
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愛するものを失う痛みと、滅びゆくものへの哀惜、そして赦し。犬が絶滅してしまった近未来のアメリカで孤独な男が出逢う、ささやかな奇蹟…。読後に深い余韻を残す表題作から抱腹絶倒コメディまで、アメリカSF界の女王ウィリスのベスト・オブ・ザ・ベスト4本を厳選する傑作集。ヒューゴー賞・ネビュラ賞・SFクロニクル誌読者賞・ローカス賞他、収録作4篇あわせて全12冠。
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『SFの女王』コニー・ウィリスの短中篇集。長編もいいけど短編もうまいよなぁ。深い余韻を残す表題作が中でも白眉。
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コニー・ウィリスはすごい!
SFの女王と言われる作家ですが、何よりも面白い小説を書く人なんです。
身近な題材を含めた取っつきやすい内容で、おかしくて、しまいに切なくなる…
これは短編集なので、初めての人にもおすすめ。
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このひとの、自分自身フェミニストなんだけど、リベフェミを笑い飛ばすみたいなところが好き。ブラックでキワドい風刺もやるけど、気張ったところもなくエンタメにも寄れちゃう。バランス感覚がいい。表題作がやっぱよかった。
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●『犬は勘定に入れません』以来、久々に読んだコニー・ウィリス。
うーん面白いわー。
うくくと笑けるお話3本+犬好きの紅涙を搾り出す1本と言うオトクな構成。
●『女王様でも』は、話の切れ味がちょっとアシモフの短編っぽいような。気のせいか。いいなあこのオチ。
『タイムアウト』と『スパイス・ボグロム』は、ユーモアSFハーレクインみたいですてき。
で、もちろん泣かせてくれるのはタイトルからして『最後のウィネベーゴ』でございます。
そんなに露骨なあざといやり方ではなく、シブくじわりと来る感じ。ミニシアターでかかる映画みたいな。(まあ、私ゃ犬飼ってたわりには全く動じませんでしたけど・・・諸般の事情により。)
装丁も、この話がお題ですね。私の中では『ベルカ、吠えないのか?』と甲乙つけがたいすばらしい犬表紙。
て、ちょっと色目が相似・・・・?
●なんだか地に足のついたSFと言う感じで、よろしゅうございました。
他のも読んでみようかな〜。
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SF短編集。生理ネタとラブコメ(?)2編と表題作の4編収録。表題作がダントツでよかった。終末ものとでもいうのかな。現在と過去が区別なく入り乱れるので最初は読みにくくて仕方がないんだけど、ラストに向かうにつれてどんどんその意味がわかってきて、泣かされる。古きよき、滅びゆくもの。切ないなあ。3作目の「スパイス・ポグロム」も好き。異性人の居候を中心にしたラブコメ。
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コニー・ウィリスの未来って、猫が絶滅してたり、犬が絶滅寸前だったり、なんだか身近なところで悲しいなあ。
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カバーの絵が好きです。それで読んでみたいと思いました。でも、読んで、この作家さんを知ることができて良かったです!他の作品も読んでみたいです。SFというジャンルもあまり触れたことがなかったんですけど、楽しく読めました。
女王様でも
最初は読んでて訳が分かりませんでした。理解できない単語ばかりで、最後まで読めるかどうかかなり不安になりました。でも、物語が佳境に入ると、やっと全ての内容が掴めてきて、繋がっていったんですが…「何これ?」って思いました(笑)。そもそもSFというジャンルにほとんど触れたことが無かったこともあって、軽いカルチャーショックでした(苦笑)。でも、こういう辛さやユーモアは大好きです。ぜひこの女性たちの議論に参加したかったです(爆)。
タイムアウト
前のお話でSFというジャンルと訳の分からなさに慣れたつもりだったんですが、ここでも最初の数ページは目から星が飛んでました(笑)。このお話はSFというイメージに少し近づきました。「時間転移」とか「実験」などの理系用語がたくさん出てきました。が、内容の大半は「不倫」や「駆け落ち」などの男女の話が9割です。でも、ちゃんと着地点はハッピーエンドで、SFと昼メロが良い感じにブレンドされていました。こういうやり方も、やはり女性的な印象を受けました。
スパイス・ポグロム
収録されている4話の中で一番目が回る展開で、面白い話です(笑)。「エイリアン」や「宇宙船」「無声通話器」といったSFらしい用語も満載です。でも、物々しい雰囲気はなくて、ドタバタでハチャメチャなラブコメになってます。キャラたちも個性豊かで好きです。続編があったらいいな~と思いました。
最後のウィネベーゴ
最後に表題作登場。今までの訳の分からなさが一切消えて、わりと現実的で終末の世界が描かれています。内容もSFというよりはミステリーに近いです。2つの過去の話と現在が混ぜこぜで展開していくという点では、訳の分からなさは変わらなかったです。しかし、それ自体がこの物語全体のトリックになっている…というのが真相です。そして、主人公の喜怒哀楽があまり描写されない分、ラストの数行は見事でした。その一点に物語の感情が全て凝縮されていて、読了後には心に優しく響く余韻が残りました。
長篇よりは「短篇の名手」と呼ばれる作家さんだそうです。ぜひ他の作品も読んでみたいです。SFというジャンルにも親しみが湧きました。前知識無しで良い作家さんに出会えるのは本当に幸せなことです。
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アメリカSF界の女王コニー・ウィリスの中短編集。コミカルな作品3つと、泣かせるケモノ小説の4編所収。中でも犬が絶滅した世界を舞台に、犬への愛、滅びゆくものへの哀切を描いた表題作が絶品。
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短編集。表題作は、犬が絶滅している未来の世界での悲しいようなノスタルジーな雰囲気があるんだけど、なんだかつらかったなぁ。
「女王様でも…」という、生理がらみの短編がくすくす笑えて面白かった。
しかしながら、ウィリスの力技長編に慣れてしまって無意識に同レベルを短編にまで期待してたのか、…この本はやっと読み終えたという感じ。
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たまたま読む本が無く(上下巻の下巻を持ってきたと知った時のショックと言ったら…!)通勤帰りに何か読む本を、と思って買った本です。このシリーズ、装丁がステキですよね。
とりあえず最初の「女王様でも…」が最高に面白かった!
女性ならそうそう、わかるわかる、って感じじゃないかと。
真ん中2本の中編も面白かったですし、最後のウィネベーゴは今まで読んできたこの人の作品とガラリと雰囲気が変わっていてそれはそれで興味深く読みました。犬は勘定に入れませんは読んだのですが他のも読んでみようかなあ~と思いました。
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好きなのはいちばん最初といちばん最後の作品。「女王様でも」はなんと生理SF。「女にだけ生理があるなんて不公平!なくなればいいのに!」と、女の人はたいてい一度は思ったことがあるでしょう。エコフェミ論争への皮肉ももりこんであっておもしろい。そして犬が死に絶えてしまった近未来世界が舞台の表題作のせつないこと。
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短編4編収録最初の2作は更年期のバアさんとしては、元気付けられる話だった。「スパイス ポグロム」は、人口密度が高くて、我儘な人間ばかりの「ソニー」での話。これが一番好きかも。「ソニー」に短期で是非観光に行きたい。表題作は、少し意味不明ながらもペットを飼う人にはしみじみと哀しい話。犬も絶滅させたら、一番人気のペットってなんだろう。女性の書くSF小説って、やっぱ面白いなあ。
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あーーーやっぱりおもしろいーーー。長編じゃなくてもおもしろかったーーーー。 読みながら謎なことが多くて(それはSFだから??)これはいったいなんの話?っていう感じで、でも大筋には一見関係なさそうな会話とか細かいところがおもしろくておかしくて、ヘラヘラ楽しく読んでいくと、最後のほうになって、そういうことなのかーとわかって衝撃を受ける、という。 「タイムアウト」なんて、へええーーと感心したあまり、すぐにもう一度読み直した。でも、わからないままに読んでいたほうがおもしろいような気もした。とにかく、わたしの場合、大筋には関係なさそうな会話とか描写が楽しくてたまらない。「タイムアウト」なんてとくに、まるでロマコメで(ちょっと「航路」の前半みたい)、もっともっと長く読みたいーと思った。ロマンティックだと思うんだけど。 「女王様でも」がいちばん好きかも。めちゃめちゃおかしくて笑ったー。なんか女家族がわいわいしてる感じが楽しくて。この家族の話ももっともっと長く読みたいなあ。ノーラ・エフロンの映画とか思い出す。これこそ、なんにも予備知識がなくて読んだほうがいいかも。「スパイス・ホログラム」はわたしにはSFすぎたか、ちょっと長く感じた。銀座とか三越とか出てきておもしろいけど。コメディだし。コメディのしつこさがちょっと、って感じか。 「最後のウィネベーゴ」。これはうってかわってシリアスな感じでコニー・ウィリスっぽくない。アメリカ現代小説って感じ。ミステリのような、ちょっと暗い雰囲気で、でも最後のほうでぐーっと感動が。でも途中ちょっとよくわからないというか不思議な感じもあり。これももう一度読もうかな。