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紙の本
いいのですが、どの話も島田荘司が書いた、といわれても何の違和感も抱かせないことについては、問題だとは思います。
2009/03/25 19:30
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いままで何度か同じことを書きましたが、基本は変わりません、苦手なんです、柄刀一。でも、彼は恵まれているんです。何がって装幀者に。いままで読んだ本だけではなく、遠目に眺めていたものも含めて、どの本のデザインも格好いいです。今回は坂野公一(welle design)が装幀を担当していますが、今まで同様スッキリ、クールな印象で、いいです。
で、今回、少しは小説のほうも評価が変わったかも、なんて思います。ま、どの話も島田荘司が書いた、といわれても何の違和感も抱かせないことについては、問題だとは思います。だって、まだ島田元気にバシバシ創作続けているのに、謎の提示も解決の仕方も、お話の舞台のイメージも似ているっていうのは、やっぱ、まずいしょ、これ。
といっても、今まで何冊か読んだ柄刀作品の中で一番理解しやすかったことも厳然たる事実です。どんなところが?早速、各話の内容紹介に入りましょう。
・龍の淵(「ジャーロ」2004年春号):イギリスの湖水地方、ペニン山脈寄りに位置する山間部の山荘。そこにある龍の姿をした流木の伝説と殺人事件の謎・・・
・光る棺の中の白骨(「ジャーロ」2004年秋号):ノルウェーのアルタの北にあるフローゲン村。フィヨルドのある小さな村の石造りの密閉された小屋で発見された白骨は・・・
・ペガサスと一角獣薬局(「ジャーロ」2005年秋号・2006年冬号):ウェールズ地方の北部に位置するシャルクウッドで二ヶ月前から姿が見られるようになったユニコーンとペガサス。そしてそれらに殺されたと思しい男の遺体が・・・
・チェスター街の日(「ジャーロ」2008年夏号):イングランド中東部のチェシャ州。パワースポットとして知られる“ランドエンド・ハウス”。目覚めた男が見たのは死んだはずの犬が、枯れたはずの木が元気な姿で・・・
・読者だけに判るボーンレイク事件(書下ろし):ボーンレイク湖畔に五つのロッジを持つ資産家は、地方の雑誌の企画、秋の星座と、地上の伝承や伝説との対比のために、龍の骨と呼ばれる湖底木の撮影に反対したが・・・
書誌
となります。最後の書誌を見ると「光る棺の中の白骨」にだけ、初出以外に
本格ミステリ作家クラブ編『本格ミステリ05』(講談社ノベルス2005年6月)
日本推理作家協会編『ザ・ベスト・ミステリーズ2005』(講談社2005年7月)
と二つのベスト・アンソロジーに選ばれていて、柄刀の代表作であることが分かります。私もそう思います。いい意味でカーの作品を連想させる、これってかなりポイント高いです。でも、あとは島田荘司。なんたって島田です。とくに標題作と「チェスター街の日」は、完全にカブっています。それと南美希風ですが、御手洗潔と似すぎています。ま、名探偵そのものが類型化していることは間違いないんですが・・・
最後は登場人物紹介。
南美希風:主人公。“世界の伝説と奇観”をテーマにした写真を撮り世界各国を歩いているカメラマンですが、取材先で出合った様々な事件をアマチュアとして解決しています。年齢は30代半ばとありますが、病弱だったせいか柄刀の描写ゆえか、20代の青年としか思えないのが問題でしょう。三、四年前にアメリカで心臓移植手術を受け、その結果今は普通の人と同じ生活を送るようになっています。
南美貴子:美希風の姉で、出版社勤務の雑誌編集者です。弟の美希風に“世界の伝説と奇観”をテーマにした写真の撮影依頼をしている張本人です。弟の体調を心配して、というか雑誌の締め切りを気にしてしばしば電話をかけてきます。弟の体を心配するという点では母親以上、ともいえる存在。
的場利夫:美希風の、適当に距離感のある年上の友人で40歳になる新聞記者。
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