紙の本
評価は高いけど・・・
2015/08/26 14:06
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投稿者:ツンドク - この投稿者のレビュー一覧を見る
グローバル経済が行きわたり辺境が無くなったために採算のとれる投資先がなくなり、利子率が史上最低になって、資本主義の終焉を迎えた、という現状分析(私の読み違いがなければ)には同感するところがありますが、「じゃあどうするの?」というのが物足りない気がします。随分評価が高い本なのでもっと「目からうろこ」を期待していたのですが、読み込み方が未熟なのでしょうか。本書と観点は違うが原田泰著「反資本主義の亡霊」(日経プレミアシリーズ)なんて本と読み比べても面白い。
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共産主義は失敗に終わり資本主義が勝利したように思っていましたが、以前読んだ本には「いずれ資本主義も滅びる」ようなことが書かれていて、それがずっと気になっていました。この本のタイトルと帯を見て、この本を手に取りました。
この本の著者である水野氏によれば、それは「国債長期金利の低さ」が、資本主義の死を意味するとのことです。日本の長期国債金利は長い間1%を切るという低金利で、これが日本の強さだと多くの本に書かれたように私もそう思ってきました。
この本を読んで、長期間に亘る低金利は、日本の経済が強い弱いという問題とは別に、日本では資本主義がそろそろ終わりに近づいていることを意味しているのかもしれませんね。
資本主義が終わることは必ずしも国民全体のためには悪いことではないかもしれません、どのような形がそれを引き継ぐかは、水野氏は明確に記述していないように思いましたが、その方向性らしきものはあったかもしれません。
私が社会人を引退する10年後には、その形が見えているのかもしれません、もしかしたらもっと早く多くの分野で芽生えているかもしれませんが。
この本で最も印象を受けたのは、冒頭にある部分で「なぜ利子率の低下がそれほどまでに重大事件かと言えば、金利はすなわち資本利潤率と同じだから、利潤率が極端に低いということは、すでに資本主義が資本主義として機能していないという兆候である(p16)」、という部分です。
以下は気になったポイントです。
・利子率が低いのは17世紀初頭のイタリアで見られた、当時の著書にも、ローマ帝国衰退以来、欧州の歴史において初めて資本が提供された、これは革命である(利子率が下がっていること)と述べられている(p16)
・16世紀のイタリアは山の頂上までワインのためのブドウ畑になっていた、ワイン製造業は当時の最先端産業なので、ブドウ畑を新たにつくることがないとは、利潤を生み出す投資先がもうないということを意味した(p17)
・利潤率の低下は、設備投資をしても、十分な利益を生み出さない設備、つまり過剰な設備になっていることを意味する(p19)
・ラテン語を独占していたローマ・カトリックと俗語(ドイツ語、英語)でしか情報を得られないプロテスタントとの戦いであった(p43)
・金融緩和の有効性を主張する人達の言い分は、貨幣数量説に基づく、貨幣の流通速度は、一定のもとで「貨幣の数量が物価水準を決定する」という理論、MV=PT(M:貨幣数量、V:速度、P:物価水準、T:取引数量)、しかしこの理論は低金利のもとでは崩れている(p44)
・アメリカは石油価格の主導権を取り返すために1983年に石油先物を取引するWTI市場を作った、これは石油を金融商品化することを意味する、これでメジャーの都合のいい値段で売り買いできるようにした(p50)
・本来は1970年代で終焉の始まりを迎えたはずの資本主義を、アメリカは「電子・金融空間」を創設することで、延命させた(p57)
・1477年のピーク時を100とすると、実質賃金は1597年には、24まで下がった、1477年と同じ水準に回復するのは、1886年となる(p70)
・長い16世紀の新興国であったイギリスでも消費者物価が1477年から上昇し続けた、イギリスの一人当たりのGDPが当時の先進国のイタリアに追いついた時点で価格革命は収束した、それは17世紀半ば、同様に中国の一人当たりのGDPが日米に追いついた時点で、21世紀の価格革命は収束する。日本の成長率を1%、中国を8%として、およそ20年かかる(p79)
・1995年までは、国境のなかに住む国民と資本の利害は一致していたので、資本主義と民主主義は衝突しなかった(p82)
・日本の国内の中小企業の利潤率は1973年にピークをつけた、その時点で国内において拡大路線が終わったことを示唆している(p107)
・長い16世紀のスペイン帝国が戦争を繰り返したのは、当時のシステムが転換しようとしているにも拘わらず、過去のシステムを強化してなんとかしのごうとしたから。今の先進国の経済政策は、当時のスペイン帝国に似ている(p126)
・近代欧州の歴史を理解する上でのターニングポイントとなったのは、16-17世紀にかけて海の国イギリス(英国教会)と、陸の国スペイン(ローマカトリック)の間で起きた戦争である(p141)
・現在は、海の国であるアメリカの覇権体制が崩壊し、EU・中国・ロシアといった陸の国が台頭しつつある(p142)
・12世紀のイタリア、フィレンツエに資本主義の萌芽を認める出来事があった、1)利子を容認、利子と取るという行為は神の所有物である「時間」を人間が奪い取ること(1215年ラテラノ公会議)、2)イタリアのボローニャ大学が、神聖ローマ皇帝から大学として認められた、13世紀にはローマ法王からも認可、中世においては「知」も神の所有物であった(p158)
・知の所有については、宗教改革で、ラテン語から俗語への交代劇を実現させた(p159)
・どの時代であっても、資本主義の本質は、中心・周辺という分割にもとづいて、富やマネーを周辺から集めて、中心に集中させることには変わりは無い(p165)
・世界総人口のうち豊かになれる上限定員は15%前後である、20世紀までの130年間は、先進国の15%の人々が残りの85%から資源を安く購入して、その利益を享受していた(p166)
・日本のキャッシュフローにおいて、家計部門と企業部門を合わせた資金余剰は、48兆円であり、対GDP比率で10.1%もある、これが銀行・生保の金融機関を通じて国債の購入費に当てる事のできる金額(p191)
2014年3月22日作成
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水野氏の著書は(私にとって)山本七平に勝るとも劣らず外れなしですが、今回も得られるインプリケーションが大きく大満足。
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資本主義は終わると思っていたが、とんでもない、既に終わって30年以上経っていたなんて。
資本主義に取って代わる、皆が豊かで楽しく暮らせる社会システムを、皆で知恵を絞って考え、構築して行こうぜ。(^o^)/
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新自由主義とかグローバリズムとかに本能的に疑惑を感じている僕なのですが、この本はかなり役に立ちました。
僕はもう20年くらいクルマの広告に携わっています。クルマをつくる人達は凄いんですよ。パーツひとつ何銭単位でコストダウンして、1円安くするために寝ないで設計して。そんな思いを重ねてつくった製品を売って、利潤を得る。…でも、輸出比率の高い我が国の場合、為替相場が1円動けばそんな努力は関係なく、一瞬で数億円が吹っ飛んだりするわけです。しかもその相場を動かしておるのが、現代ではヘッジファンドと呼ばれる一私企業であったりするわけで。
どうもこれはおかしいだろうと思っていたのです。
そもそもバブル時代に、実際にモノをつくるメーカーよりも、株や土地を売買するだけのブローカーの方が何倍も儲かるという事になった時にも、ものすごい違和感を感じていたのですが、
本書によって、その疑問が解き明かされました。
「金利ゼロっておかしくね?」とか「生産拠点を中国からベトナム、ミャンマー、次はアフリカ?その次はあるの?」とか疑問に思っていたことをしっかり押さえてくれる。
やはり資本主義はそれだけでは解決できないところまできてしまった。ゼロ金利というのが、既に資本主義の賞味期限が尽きてしまったことを知らせています。これは十六世紀のイタリア・ジェノヴァ以来と言うことで、その「長い十六世紀」と言われた停滞は、まだヨーロッパ、アジア、アメリカ新大陸に存在していた空間的フロンティアの開発によって突破することが出来ました。しかし現代ではもうフロンティアは存在しません。
資本主義は「中央」に「周辺」から富が集まるシステム。そのために常にフロンティアを必要として膨張を続ける。ロシア、東欧、中国、BRICS、アフリカと来たところで空間的フロンティアは打ち止め。(アメリカは電子空間にフロンティアを求めた)その結果同じ国の中で「周辺」を作り出すことでシステムの延命を図る。それが各先進国内での経済的弱者の増加である。中産階級を貧困に転落させて「周辺」とし、経済的優位者=中央はますます富んでいく。という説明が実に腹に落ちました。
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ゼロ金利、ゼロ成長は経済の一時的な停滞ではなく資本主義がもはや正常に機能しなくなった結果だと説く。そのため、現状を打破するには従来型の成長戦略ではなく資本主義に代わる新たなシステムや価値観への転換が必要で、それは「脱成長という成長」を志向するものになる。
民主主義と資本主義は必ずしもセットではない、ということに気付かされた。それどころか経済がグローバル化する過程で資本主義が最優先された結果、知らず知らずのうちに民主主義がなおざりにされつつあるという事実。資本主義は本質的に格差を生む性格を持っている。
そんな資本主義ではあるが、私たちは成長という観念を捨ててそれに代わる価値観を持つことが出来るだろうか?
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拡大することが資本主義の本質だが、物理的空間も電子金融空間もフロンティアはもうない。新興国が成長してきたのでエネルギーを安価に入手することは困難。民主主義は価値観を同じくする中間層があってはじめて機能する。中間層の没落は民主主義の基盤の破壊。グローバル資本は国民国家を超える。などなど大変刺激的。とすると戦争でガラガラポンでやり直しって感じになるのでしょうか。そっちに近づいている気はします。
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本書は2014年3月に発行された本だが、小生は2014年4月に一度読んでいる。このほど再び本書を読み、時の流れと共にさらに説得力を増してきたと思った。
「西欧的な近代化は、途上国から資源を安く購入することで成り立っていたが、途上国の近代化によってその条件はもはや消滅した」。まさにその通りではないか。本書を高く評価したい。
以下は2014年4月に読書した時のレビュー。
『本書は,「経済書」なのか「政治書」なのか、それとも「文明書」なのか、とにかくすごい本である。
本書によると、資本主義はもう「終わっている」となる。 なるほど昨今のウクライナ情勢を見ても、本書の見解は理解できないわけではないが、はたして・・・。
本書が語る雄大な歴史的見解は、まるで著者が「マルクス」であるかのようにも思え、しばしばうなづきながらも、ところどころでは首をかしげた。
著者の今までの著作よりも、一段と読みやすく、わかりやすい「経済書?」であると高く評価したい。』
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正直、過去の著作とかなりバッティングする議論で、目新しさが無い。
噛み砕いて書いているといえばそうだが、それにしてもこれで改めて出版する必要ある?という疑問が強く残った。こういう出版の仕方には賛同できない。
考え方には非常に共感するのだが。
初めてこの人に触れるのであれば、読んでもいいとは思うが、それ以外は無駄読みになる。
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グローバル経済が現在直面している状況は、
(1)資本の増殖の為に収奪対象とする辺境は殆ど残されていない。
(2)豊かになれる上限定員は15%程度である。
以前は南北国家間格差であったが、新興国も辺境
でなくなってきたので、国家の内側に辺境を生み出す (格差の拡大、中間層の没落)。
(3)それでも足りず未来世代からの収奪をも起こしている (ツケの支払いは未来世代へ)。
(4)紙幣を増刷、増税と企業減税で資本の塊集をしても、
投資先が少なくなっている。
(5)地球の資源は無限という前提で走っている。中国・インドなどの人口大過剰国まで近代化して資源多消費国にしている。当然、地球システム自体が崩壊へ向かう
では、どう対処するかとなると、
(1)資本主義にブレーキを掛けて延命させる。
(2)財政健全化する。(あと4-5年の猶予しかないか?)
(3)猶予期間でポスト資本主義の社会を用意する。
(5)ポスト資本主義の社会がどういう社会であるか不明である。現在は企業(資本)の力が強すぎて、国家も労働者も対抗できない。G20の国家間で合意できれば世界GDPの87%を占めるので巨大企業に対応可能。
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成長教の信者は地獄に落ちるという警告の書。その事に気がついてきた人も増えてきたので、資本主義は終焉すると。あとは国家と個人の関係性の問題で、個々人は国が崩壊しても自分だけは生き残れるように準備しておかなきゃいけないんだろうな。全員が救われるわけないし。これぞ究極の自己責任だけど。アベノミクスで幸福になれるなんて信じてる人は通販番組で夢や希望を煽られて衝動買いしちゃう人だろう。
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「長い16世紀」を繰り返す「長い21世紀」という歴史の見取り図を示してくれる本書は100年単位のマクロの書です。ですが読んでいる途中から先日読んだ「里山資本主義」を思い出してしまいました。中国山地に取材したミクロな経済ですが、やはりテーマはマネーとエネルギー。海の国アメリカVS陸のヨーロッパの最終対立局面で、森の国ニッポンを存在付けれるか?「里山資本主義」だけではなく、本書単独というより様々なテーマに対して「なるほど!」の補助線をいっぱいひいてくれる参考書だと思いました。
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利子率の低下がなぜ重要かと言えば、金利は資本利潤率とほぼ同じであるから。資本を投下し、利潤を得て資本を自己増殖させることが資本主義の基本的な性質だからり、利潤率が極端に低いということは、すでに資本主義が機能していない兆候。
今までは2割の先進国が8割の途上国を貧しくさせたままで発展してきたために、先進国は国民全員が一定の豊かさを享受できた。しかしグローバリゼーションの進んだ現代では、資本はやすやすと国境を越える。ゆえに、貧富の2局化が1国内で現れる。
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非常に勉強になる1冊でした。過去の歴史は必ず繰り返される。資本主義の考え方自体が限界に来ている。これから先に何をどう考えて行動すべきなのか? 改めて考えさせられる1冊となりました。
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内容紹介
バブルのツケをバブルで支払う。
この危険な循環こそが決定的な破局をもたらす!
資本主義の最終局面=バブル多発時代にむけた処方箋。
資本主義の最終局面にいち早く立つ日本。
世界史上、長期にわたるゼロ金利が示すものは、資本を投資しても利潤の出ない資本主義の「死」だ。
死の瀬戸際の資本主義は、グローバル化を進め国民を置き去りにし、国家さえも使用人としてバブルを多発させ、生き延びようとしている。
終わりの近づく資本主義にそれでもしがみつき、かりそめの「成長」を目指すことは、
「国民なき国家」を作り上げ、破局への道を整えているにすぎない。
グローバル化の本質を鋭利に分析し、世界経済危機を最も早くから警告していたエコノミストが、
日本再生のための道と「世界総ゼロ金利」後の新たなシステムを提言する!
【主な内容】
●「世界総ゼロ金利」時代のあとに何が起きるのか?
・成長を果たした国からゼロ金利になり、「日本化」する。この危機の「本質」とは?
・「バブル清算型」の資本主義でアメリカはどうなる?
・中国はアメリカ没落後の覇権国になれるのか?
・中国バブルが弾るたあとの、世界経済は?
・日本の財政赤字、国債問題にどう対処するべきか?
・EU崩壊は起きるのか? ドイツはギリシャを切り捨てるのか?
・アフリカのグローバル化のあと、資本は何を狙うのか?
●「世界総ゼロ金利」=資本主義の終焉で
なぜ日本にチャンスが生まれるのか?
【目次】
はじめに――資本主義が死ぬとき
第一章 資本主義の延命策でかえって苦しむアメリカ
第二章 新興国の近代化がもたらすパラドックス
第三章 日本の未来をつくる脱成長モデル
第四章 西欧の終焉
第五章 資本主義はいかにして終わるのか