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不朽の名作シグルイ原案者の日本史本。
『権力者がいかに残虐な圧政をしいて民衆を搾取してきたか、そんな措置に対して民衆がいかにしぶとく抵抗を繰り広げてきたかを語る歴史本』という解説のとおり、あまりにも農民の側に立ち過ぎた視点からは、「施政者側の事情も考慮すべきだろう」とか「善良な商人も問答無用で被害に巻き込まれたこともあるだろう」といった逆側からの視点が気になってくる。だが、こんな心配も解説により上手く総括される。
曰く、小説家による歴史本は、どうしても物語になってしまうのだと。社会を”構造"や”システム”でなく”物語”として捉える。正しい歴史解釈としては間違っているのかもしれないが、そもそも人は歴史のほとんどを物語から学んできたといっても過言ではない。そのような物語抜きの歴史を正確に捉えるのが学者の仕事であるならば、徹底的に物語化して価値観を世に問うのが小説家の仕事なのかもしれない。
残虐な圧政は悪であり、改革の必要があるのは間違いない。ただ、その物語と歴史的事実は別物として認識しなければいけない。なぜならば、物語から学べるのは個人の価値観に過ぎず、ただ歴史からのみ、当時を生きる人々の、世界の価値観を学べるのだから。