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―――わたしらが思うことなんて、おとなにはどうでもいいんです。―――
八番筋商店街をとりまく大人や子どもの話。
14歳だったタケヤスたちは30歳目前になり、商店街の近くに建設予定の巨大モールに賛成か反対かの会議に出ることになる。
その話を持ち込んできたのが、商店街を追い出された一家の息子であり、タケヤスの同級生だったカジオだった。
構成と、心の機微を描くことに長けている。
解説で小籔が述べるとおり、「心を複雑にごそごそされる」。こういう感覚って、いちど癖になってしまうとやめられないとまらない。
複雑な家庭の子どもたちは大人になって、また違う複雑さを抱えていく。津村さんは悪いことは悪い、とそれなりにこちらがもやもやしない解決策をとってくれるから好きだ。がんばることが阿呆らしいと思わずに済む救いがある。それは今回も然りだ。
タケヤスが幼いころ父親からの電話にめんどうくさいと対応してしたシーンと、謎解きのようなヨシズミのじいさんの死の真相がインパクトあった。
男どもはカヤナが好きだろうけど
わたしはホカリのが断然好きだな。
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衰退しつつある商店街の中にある店の家で育った同級生たちを今と過去で織り成す物語。
事件や揉め事をベースにした人間模様は面白いです。主な登場人物がそれぞれ家庭に問題を抱えているという設定もしっくりきますね。
解説が小籔さんが書かれていて、それも面白いですよ。私が思っていることを文章にしてくれてる感じがします。
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商店街のおっさんおばはんのどろどろに疲れた。でも、それよりもカヤナの方がよっぽど気持ち悪かった。程度の差はあれ、ああいう女性はどこにでも必ずいる。
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ううう、ちょっと読むの疲れた。
この人特有の文章で、商店街のことをダラダラと書かれた感じ。
やっぱり女性が主人公で会社ものの方が好きかな。
商店街ものでは、宮本輝さんの「夢見通りの人々」がワタシ的ベストです。
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<内容>
30歳を目前に会社を辞めたタケヤス。実家に戻り友人と再会するも、地元の八番筋商店街は近郊に巨大モール建設のためカウンシル(青年団)の面々が騒がしい。そんな中、ある噂をきっかけに転向したカジオと再会し・・・・・・。人生の岐路を迎えた男女を描く物語。≪解説・小藪千豊≫(カバーあらすじより)
<感想>
どんな集団にも、外から見た違和感みたいなものはあるのだろうと思う。かつては村の掟みたいなものだっただろうし、現在では職場の集団だったり、サークル活動だったり、ママ友グループみたいなものだったりにその違和感は見出される気がする。物語の舞台である八番街カウンシルにも、闇とまではいかないまでも、入ってみないとわからない歪な論理や、中の人間たちの駆け引き、共同幻想などが渦巻いている。
作者の津村さんは個人的・社会的な閉塞感を描くのがうまいと思っていたが、今作では地方集団や家庭に潜む閉塞感みたいなものまでがテーマとしてあるように思えた。カウンシルとの距離、父親との距離、従姉妹(友人)との距離、そういったものと不器用に向き合い、葛藤するという重苦しくなりがちなテーマでさえ、ややライトに、サラッと書いてしまうのは、やはりさすがだと思う。
外に出ないと気づかない世界の狭さがあり、中にいないと気づかない世界の広がりもある。少年期をその狭くて広い世界で過ごし、一度抜け出した主人公たちが、そういう場面に対峙したときに何を思い、何を選び取るのか。「自分だったらどう思っただろう」「この感覚なんか覚えてる」、作者の淡々とした語り口のなかでそういう思いが何度も喚起された。
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仕事に疲れ地元商店街に戻ると,どことなく似た同世代がそれぞれの生活をしていた。古くから商店街に棲む商売人達は「ただの大人」から「自身の生活と思惑を抱える,面倒でもつき合わねばならぬ壮年期の人および高齢者」に変わっていた。閉塞的な地域コミュニティに関わる新参の若手世代を主軸に描いた群像劇。
イラッとすることや理不尽なことを描かせると秀逸だなーといつも思います(同世代だからだろうか)。作中のカヤナは日常でもたまに見かけるタイプ,“外見の高評価を知ってそれを活用すること以外の努力を一切しない女性”を象徴的に表現してて。作者はカヤナの対局にいるような人なんだろうなーと想いを馳せるばかりなのでした(※ちょう失礼)。
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12冊目。小説で賞を取り、その後体調を崩して仕事を辞めた三十路の男が主人公。久々に帰った地元では大型ショッピングモールの建設話が持ち上がり、商店街が巣を突かれたハチの巣のように慌てふためいている。
田舎の閉鎖性の犠牲になったカジオ、友人ホカリを中心として、現在と過去(高校時代)を行き来しながら物語が進んでゆく。田舎独特の噎せ返るような濃度と臭いの人間関係と、そこそこに爽やかな読後感の共存は、津村記久子っぽいなぁという感じ。
他の小説でも感じたことだが、子供であることの無力感を悔やむ心境と、その成長が知らず知らずのうちに物語として描かれている感じが素晴らしい。
やはりというか、やたらと毒づいた会話やト書きの部分も多いので、嫌な人には嫌な小説ではあるが、それでいて誠実な感じのする主人公は嫌いではない。
しいていえば、過去と現在に行ったりきたりで、作者の表現せんとしていることにうまく付いていけないような感じがした。その意味で、他の小説のほうが自分は好きかも。
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津村さんの作品は、どこが面白いのかと訊かれても、はっきり答えにくい。でも、はっきり言えるのは、面白いということだ。会社員や働く人を描くことが多い伊井直行さんの作品もそうだが、気付くと読み耽っている。
3人の元同級生たちが自宅兼店舗がある商店街で日々暮らしている。30歳に近づきつつある3人の生き方は3者3様で、それなりに考え方はよじれている。そのよじれ方をどう思うかで、本作に対する感想は異なるだろう。自分はばっちりだった。でも、どうしてなのか分からないから★★★★。
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カウンシルのメンバーの面々に最初の一言からうんざりさせられたのでなかなか読むのが辛かった。でもいつもの津村記久子の小説だったので主人公と一緒になんかダラダラしながら読んだ。ダラダラ感が好きだ。あと、カヤナの商店街が存続してほしいか聞かれたときの回答が、女だからわからないみたいな答えで、心底ぞっとした。
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商店街で生活している人たち。
小説の新人賞を取ったのを機に、仕事を辞めたタケヤス。
祖父が営んでいた文具店を継ぐために商店街に戻ってきたヨシズミ。
商店街や家族を疎んでいながらも、貯金のためにそこで生活するホカリ。
かつて商店街に住んでいた同級生で、無実の罪を着せられ引っ越していったカジオ。
地主のエトのおじいさんが亡くなり、残された土地にショッピングモールが建設されるという噂が立ち、その関係者ということで戻ってきたカジオ。
賛成か反対か、意見が別れる商店街の青年会。
判断を求められているエトのおばあさん、
土岐田医師と美女のカヤナの関係。
亡くなったヨシズミの祖父が亡くなる直前にいた人たち真相。
いろいろ登場人物たちの特徴や過去が細かくあるんです。
でもいっぱいあって書ききれない。
ネタバレ。
タケヤスの失踪したダメ父が見た告白によって、ヨシズミの祖父が倒れたときにいたのは、カジオではなくて土岐田医師とカヤナ。
それを寄り合いの席で暴露したヨシズミ、かっこよす。
男に寄生しながら地元にずっといるカヤナの存在、なんだか孤独だな。
著者の話は悪いやつを気持ちよく言葉で成敗するシーンが、なんとも痛快。
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昨今の商店街といえば、シャッター通りのようになっているのに開いている店は大した危機感もなさそうで、さらにはどことなくお金に苦労していなさそうな人々のいる奇妙な空間。その裏側を少し覗き見したような気になる。ほんのりミステリー風味。
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モータープールというものが何なのか分からず、調べたところ駐車場だと分かった。大阪に親戚もいるのに今まで知らなかった。タケヤス、ヨシズミ、ホカリ、カジオらメインの登場人物は育った環境などからもっと荒れた人間になっていてもおかしくないのに皆ちゃんとした良識や倫理観があり、特にカジオなんかは自分たち家族が受けた仕打ちを少なくとも表向きにはまったく恨んでないように振る舞っており、正直理解できないところもあるが、人の振り見て我が振り直せというか、軽蔑するものと同じ穴のムジナにならない強い心が今の世の中とくに大切だ。
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ちょっとしんどいなぁな描写が淡々と紡がれる。ドラマチックに展開しないからこそ救われる部分も、掬われる部分もある。
津村さんが書く女性が好きだな。今回はホカリ
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大好きで何度も読んでいる本。
だから結末は知っているんだけど、最後ヨシズミがカウンシルでとあることを暴くシーンは毎回読んでいて興奮する。
「おっそろそろくるか…きたー!!」という感じ。
一生地元から出て行かない人たちの描写がリアル。
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再読。「水車小屋のネネ」まで読み続けてきた現在、津村さんの書いていることは一貫しているな・・・と実感。