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読了。
タイトルの通り、スピノザ『神学政治論』を読み解いた一冊です。スピノザといえば現代に至るまで陰に日向に強い影響力を持つ大学者、主著『エチカ』は別格としても、『神学政治論』も彼の思想を知る上では欠かせません。
本書の読みどころは何といっても『神学政治論』の解釈にあります。『神学政治論』は発表当時から無神論との誹りを受け、近現代の解釈でも神を否定するための戦略的な著作とされてきました。
ですが著者はそれは誤りだと断言します。
著者は言います。スピノザは「普遍的信仰の教義」が真実かどうかは問題としていない、そして同時にそれが文法的に正しく、有用であるがゆえに肯定すると。
上記が示されるくだりはとにかくスリリングです。知的刺激に富む、とはまさにこれだと言わんばかりの読み応え。ページをめくる手が止まらないのは久しぶりでした。
著者の論理に賛成するにせよ、反対するにせよお勧めの一冊です。
なお、スピノザの主著である『エチカ』の読み解きについては、同著者の『スピノザの世界―神あるいは自然』(これは名著!)がお勧めです。是非。