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紙の本
若き留守居役の主人公の活躍
2014/09/04 21:48
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
早くも三作目となった本シリーズだが、主人公瀬能数馬は留守居役という重職を与えられ、戸惑いからまだ立ち上がれていない。同僚の留守居役や先輩からの指導を受ける立場である。留守居役、しかも江戸に派遣されている留守居役は他藩との交渉や、幕府から不利な指示が出ないようにすることが主な役目である。
つまり、藩の外部との外交を担当する役であるといっても良い。老中の堀田備前守の留守居役は加賀藩を放逐された札付きである。こういう曲者との折衝などは、それまで全く外向きの仕事とは縁のなかった数馬が戸惑うのは当然である。
慣れない留守居役の仕事に没頭する瀬能数馬であるが、許婚者は加賀にいる。それが本多家の娘である。本多家は家康の時代から徳川家に仕えていた。本多正信は家康の右腕として活躍したが、その後本多家は訳があって、現在は加賀藩にいる。数馬は本多家の後ろ盾があるので、地位は低いとは言えない。
もともと、瀬能家は旗本という将軍直参の身分であったが、やはり加賀藩の藩士となっている。本編での設定は、四代将軍家綱の時代であったが、焦点はその後継将軍を誰にするかを決めようとしていたことである。病弱な家綱の後継は、通常ならば長男であるべきだが、子供はいない。
そこで、幕閣が集まり意見を闘わせる。家綱は何と外様大名の加賀藩主、前田綱紀に将軍就任の意向を聞いてきた。家綱というよりは大老の酒井忠清が実務を仕切っている。幕閣が意見を出し合うとは言え、実質的には酒井大老が実権に物を言わせて場を牛耳る。大老、老中が意見を闘わせる場面はなかなか面白い。
前田綱紀は将軍への就任を断った。次いで京におわす親王に意向を伺う。鎌倉幕府で将軍が三代で途切れそうになった際に、親王を招聘しようとしたが失敗し、代わって公家から招いた故事をなぞったようだ。
本書の最後ではついに来るべき時が来た。いよいよ後継者争いは急を告げる。なかなかストーリーの盛り上げ方が巧みである。文庫本としては活字が大きく、したがってボリュームもやや足りないのだが、それを上回る面白さが上田の小説には備わっている。
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