投稿元:
レビューを見る
江戸モノ本でちょこちょこ登場するので図書館で拝借。
今でもこういう嗜好の方がいらっしゃるのですね。
個人的には…ちょっと怖い。
綺麗と感じるものもあるけど奇形としか感じないものもあり。
投稿元:
レビューを見る
表紙の種々様々な花。花弁が丸くつながったもの、細かく裂けた多くの花びらがあるもの、縮れたもの、八重のもの、斑入りのもの、と多種多様だが、これ、みんな朝顔なのである。
朝顔(Ipomonea niil)が日本に入ってきたのは奈良時代のようだ。いわゆる朝顔というと普通に思い浮かべる3つに尖った葉と青く丸い花をつけるものだったという。その後、ごくまれに変異型が出る程度だった朝顔の世界が激変するのは江戸時代である。
この時代、一大園芸ブームが巻き起こる。さまざまな植物で変わった色や形、斑入りのものがもてはやされ、朝顔もそうした流れに乗って、さまざまな形のものが生み出されていく。
朝顔は1年草であり、種子で殖やすしかない。種子を結ばない変異(後述)を再現するには苦労を伴うが、一方で、短い期間で世代数を重ねることができるため、多様な色や形のものが生み出された。
困難はありつつも、非常に珍しいものができるというのが人々の心をくすぐったのか、変化朝顔は何度か大流行している。文化文政期が第一次ブーム、その後、江戸時代の終わり頃に第二次ブームが訪れ、明治中頃にはさらに第三次ブームが起こる。日本において、朝顔が遺伝学の研究にも用いられるようになった頃、残念なことに第二次世界大戦が起こる。研究どころではなくなり、また多くの朝顔系統が失われた。戦後、細々と残っていた変化朝顔の種子が国立遺伝学研究所に集められ、その後、九州大学で保存され、かつての変化朝顔の復元も試みられている。分子生物学的手法によって遺伝的背景もかなり明らかになってきた。
こうした変化朝顔の美しい写真図鑑に、変異の種類、その分類、遺伝学的背景の解説を加えたのが本書である。眺めて楽しく、読んでなるほどと思わせる、薄いが中身の詰まった1冊。
変化朝顔の「変化」を大きく分けると、花・葉・つるのそれぞれの変化がある。
花に関しては、色や模様、花弁の形、花弁の重なり方、花の大きさなどがある。
葉についても、色が異なるもの、斑入りとなるもの、形が異なるもの(丸くなったり逆に切れ目の数が増えたり針のように細くなったり)とさまざま。
つるは通常は巻きつくが、巻きつかないものや短いもの、太いものもある。
こうした変異は、表現型としては多様だが、基本となる変異が掛け合わせによって組み合わされた結果、起こる。基本の変異は1つの遺伝子に変異が生じることで起こる(1つの遺伝子に変異が起こると葉にも花にもつるにも変化が生じる場合もある)。例えば、ごくごく単純にいえば、葉色が黄色になる変異と、花が八重咲きになる変異のものを掛け合わせると、一定の率で、黄色い葉の八重咲きの朝顔が出てくることになる。
「メンデルの法則」を覚えていらっしゃるだろうか。1つの遺伝子は1対(2個)ある。仮に正常遺伝子をMとすると、野生型はMMとなる。変化朝顔の場合、ここに変異が生じ、似ているが少し異なるmという遺伝子になる。Mmの個体があったとき、このmの性質が「表に現れやすい」場合は優性変異と呼ばれ、「隠される」場合は劣性変異と呼ばれる。劣性変異の場合は2つともmでないと表現型としては現れない。
(メンデルの場合はエンドウマメを用いた。皺のあるマメと普通のマメの例が教科書などによく出てきたはずである。皺のあるマメはmmにあたる。)
さて、変化朝顔で種子を結ばない場合というのは、このmmが種子を作らない場合である。こうしたときはどうするかというと、Mmの親木を保存し、ここからmmを作るという作業を行う。単純計算で1/4がmmとなるはずである。
変異が1種類であればさほど面倒ではないが、いくつもの変異を持つ非常に珍しい形だとその労力も相当のものだろうという想像は付く。
朝顔で遺伝子変異がそもそもどうして生じるのかというと、大部分は「動く遺伝子」、トランスポゾンの働きによるという。トランスポゾンが遺伝子内に入り込み、また抜け出すことで、遺伝子に数塩基の痕跡が残ることがある。こうした場合、遺伝子の働きが損なわれることがある。これが遺伝子mにあたるものである。
本書では基本の変異が表にまとめられており、図鑑には基本変異のアイコンが添えられる。この変異とこの変異が重なるとこんな形になるのか、というのが一目でわかり、興味深い。
変化朝顔が見たい、あるいはさらに栽培に挑戦してみたいという方には、変化朝顔が見られるところ、種苗の入手先の案内もある。
めくるめく変化朝顔の世界、なかなかすごそうだ。
<参考>
『小さくて頼もしいモデル生物〜歴史を知って活かしきる』*生物学で使われるモデル動物あれこれを紹介する1冊。朝顔の項を書いているのが本書の著者でした。
『一朝の夢』*変化朝顔栽培に情熱を注ぐ物静かな同心が、朝顔を通じて意外な人物と交流し、大事件に巻き込まれる時代小説。
『ぬけまいる』*伊勢参りに向かう女三人。さまざまな人と知り合い、すれ違いますが、朝顔栽培に励むちょっと気の弱い男がちらっと出てきます。
**朝顔とは全く関係ないのですが・・・。巻末の著者紹介写真には、多分、ワニガメと思われるカメが一緒に写っているのですが、解説がないっ。カメ好きの方なんでしょうか。ちょっと興味がw。
投稿元:
レビューを見る
豊富な画像に、平易でわかりやすい説明、あまり突っ込み過ぎてない解説がとても好感が持てる一冊、手元に置いておきたい楽しさがありました。
投稿元:
レビューを見る
知らなければ朝顔とは思えない写真が満載されている.
趣味として朝顔をいじりまわしてきた日本人が江戸時代からたくさんいたということである.
種を結ばない種類を,メンデルの法則により数世代後に低い確率でゲットするなんてのは,ある意味ゲーム感覚だったのかもしれない.
ともかく写真も綺麗で眺めているだけでも楽しい本.それぞれの朝顔の名前もかっこいい.例えば「青縮緬立田葉薄茶地淡紅紫刷毛目絞筒白切弁車咲牡丹」とか.どのページもこんなのばかり.
投稿元:
レビューを見る
千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館にある「くらしの植物苑」で変化朝顔の展示を見た。ミュージアムショップにこの本があったのを思い出し、図書館で借りてみた。変化朝顔の実物を見て、そのイメージが残っている状態で読んだせいか、とても感動した。植物苑は昼近くの時間に行ったので、花は萎んでいるものが多かったが(それでも見応えはあった)、写真は最高の状態が見られる。自分は実物の後にこの本を読んだが、順序は逆でも実物を併せて見ることをおすすめする。
一度変化朝顔を見ると、朝顔のイメージが覆されてしまう。言われなければ朝顔とはわからないものもあり、驚く。
本の内容は平易。遺伝についてや朝顔の変異が生まれる仕組みは専門用語などもあり難しいが、気になれば読み飛ばしていいと思う。写真で多様な朝顔の姿を楽しむものだと思う。葉や花の色・形など沢山の分類があり、それぞれに名前があるが、植物園で見たものを見つけ、楽しい気分になった。
投稿元:
レビューを見る
☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB16172855