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上巻は病そのものについて迫っていくものであったのに対して、裏で動く人の思惑に視点が移されていく。
人々の想いは複雑に絡み合い、病に対する思いも人それぞれ。ひとりの人物の中でも、複数の思いが蠢く。若く優秀な医師であるホッサルがまさしくそれ。一方、ヴァンは亡き妻と息子を想い、病は何者にも及ぶのだという実感を吐露する。ユナ、サエ、ミラル、トマ…愛する者、そして人々を守るために奔走する2人が眩しく、そして切ない。
他の作品のよりも静かに終わる作品。それだけ、複雑で深く厚みがあるということなのだろう。ヴァンを追う人がいて良かった。彼はもう独角ではないーーー私の中にもそれが強く残った。
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連れ去られた養女ユナを追ったヴァンは、火馬の民の戦士たちと出会う。いっぽう、医師ホッサルたちは黒狼熱伝染の裏にある陰謀に気づく。
上巻で人物の関係がよくわからず、名前もややこしいので、もやもや。その悶えが拭えたわけではないのだが。
ホッサルとヴァンとの出逢いで語られた「鹿の王」の意義がなんとも深い。ホッサルが論理的に噛み砕いて、ヴァンの生き延びた理由を推察していくあたりもみごと。ヴァンの命を狙った者たちには、それぞれの理由や使命があり、こんがらがってくるが、それぞれが敵味方を越えて、恩怨をのりこえ、人々を救うために立ち上がる。ヴァンに感化されたサエの気持ちよい裏切りがそれを物語る。
改行が多くてラノベみたいなのが玉に瑕ではあるが、複雑に絡み合った構成で飽きさせない。さすが上橋ファンタジー。
あの結末はなんとなく予想でき、著者の過去作『狐笛の彼方』と似たように思うが、ヴァンがそれを決意するまでの各人の思惑が緻密に絡み合っていくのが周到。あとがきで明かしている通り、聞き慣れた生命哲学が根本にあるが、それをここまでの大作に仕上げた力量は、国際的に評価されるだけはある。
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国を滅亡まで追い込んだ病気の治療法が確立されると思いきや、横からむりやり強制終了・・・
ちょっと納得のいかない結末でした。
でも、そんなもんなのかな。
何はともあれハッピーエンドです。
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守り人が持っていた冒険ファンタジーのような雰囲気よりもドキュメンタリーに近いと感じました。それくらい現実に近いと思わせる物語です。
上橋さんの創造力は作品を創る度にレベルアップしていて、私はひたすら感動するばかりです。
ユナちゃんというキャラクターの力が今までの上橋作品とは違う印象をつくりあげています。何となく、獣の奏者に比べて明るい終わり方をするだろうという予想を持って読んでいましたが、ラストの予想外に次ぐ予想外の展開にはドキドキしました。
明確なハッピーエンドでは無い形で終わっているので、読み終えた直後にこれを書いている私はモヤモヤした気持ちを抱えています。しかし最後に自分の進む道をはっきりと彼女が父に告げる場面がとても気に入っています。父と子の物語は一つじゃない。
獣の奏者は4巻の終わり方の凄まじさ故に、一度も読み返す気分にならないのですが、この本は守り人のように定期的に読みたくなると感じています。
また獣の奏者外伝のときも感動しましたが、その時以上に恋愛の要素がしっかりと、そして全体の雰囲気を損なうことなく描かれています。
私は以前、上橋さんの作品を読んで、恋愛ファンタジーという点では荻原規子さんの方が圧倒的に面白いと思ったのですが、鹿の王を読んで考えが変わりました。
上橋さんは以前なんかのインタビューで恋愛という要素は強すぎるので物語に上手く取り込めないというような内容の話をしていましたが(私の曖昧な記憶なので間違っていたら申し訳ない)鹿の王は「愛」というテーマがとても上手に盛り込まれています。ですので私のようなミーハーな女の子でも十二分に楽しめますし、そういうものが苦手な方でも読める作品になっています。
今回の作品の凄い点に守り人シリーズ全部と同じくらいの量の民族や国家が登場するというところがあります。様々な勢力が自分のため、自分の守りたいものを守り、戦い、謀る様子が描かれています。
まだ一度読んだだけなので物語の登場勢力について整理出来ていないので、もう一度今度は地図を描きながら読みたいと思います。
今回はどこにも地図がのっていないのが残念でした。地図を見ながら読みたかったです。
とにかく全体としてはファンタジーではなくドキュメンタリーという印象でした。しかし人と人との絆の描き方が深くなったために、個人というものの在り方も浮かび上がり、主人公を始めとする登場人物の物語も重なって見える構造になってるように思えます。本当に上手く説明出来ないけれど、マクロとミクロが綺麗に合わさった作品です。
しかし今までの作品よりも完成度が上がった分、参入障壁も上がったように感じます。
読書に慣れていない人、異世界物語に馴染みのない人には全く読めないだろうし、勧められないと思いました。
反対に少しでもファンタジーが好きな方は読むべきです。当分の間はそこらへんの安っぽいファンタジーは読めない身体になりますよ。それこそ病気みたいに。
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共生がテーマなんでしょう。
異人種との共生。
異文化との共生。
病素との共生。
他人との共生。
いろんなものをない交ぜにして、悔いの無いように生きる。
登場人物たちの生き方に拍手です。
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多様な生物との共存、多様な文化との共存。
それは難しいことなんだろうか。
この物語の主人公たちは宝物や立派な屋敷を持たなくても自分の力を十分に使い、周囲の人たちと影響し合って幸せに暮らせる暮らし方があることを示してくれている。
主人公たち、かっこよすぎます~。
脇役の名前や国同士の関係がややこしくて途中挫折しそうになったけれどそこはあまりこだわらなくてもよいように(すみません)思います。
多様な生物、多様な文化が共存しようとするときひとり勝ちはないですね。
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2014.9.29 pm17:48 読了。通読。ファンタジー。映像化したら映えそう。病原菌の説明に結構な分量を割いている。平易な説明だが、ちょっと多く感じた。『獣の奏者』のときほど入り込めなかった。今読む時期ではなかったのかもしれない。とにかく読み終わることを重視していたのも要因か。時間をおいて、そのうちじっくり再読したら、感想も変わるかな。スピード感がほしかったです。これだけ様々なテーマを上下二巻に平易にまとめているのはやっぱりすごいと思う。次回作に期待。
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犬に噛まれたことによって起こる死の病を追う医者と、その犬に噛まれながら生き延びた逃亡奴隷の目を通しながら、異なる民族間での争いを描く。
これを異世界もので行なうのが、大変だったろうなと思います。医学の進歩の過程を設定しなければ、病の元に辿り着くことができないので、その流れをも登場人物の口を通して説明するのですから。
またその病にどう対応するかという点に於いても、征服者と被征服者の関係やそれぞれの民族の持つ倫理観などが入り交じり、単純に病を治す方法が判ればよいというものではないことも物語に奥行きを持たせます。陰謀と陰謀を掛け合わせるような感じなので陰鬱な感じになりがちなのですが、医者であるホッサルの真っ直ぐさと、もう一人の主人公ヴァンが手にする人との営みの描写が温かみを与えてくれます。
民族を越えてひとつの共同体となる姿を見せて、希望へ向けて終わる。そこが実に上橋菜穂子らしい終わり方でした。
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国という集合体 人体という集合体 森という集合体
病はいつもその中にあるものであること
病に抗おうとする意志をつないでいこうとすること
全てが重なっていく
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飛鹿が雪山を駆ける様が浮かぶ。
人と人、人と自然美しい物語でした。
でも「獣の奏者」より入り込めなかったのはなぜだろう。
しばらくしてまた読み返します。
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もうなんと言うか、思いが溢れすぎて言葉がうまくまとめられない。
それほどまでに壮大で深いテーマの物語だったと思う。
ファンタジーで架空の世界のお話なのに、現実にまるであるかのような緻密に作られた世界観の凄さは今回も健在。
まさに上橋ワンダーザワールド!!
一体上橋さんの頭の中はどうなっているやら・・・
病・医療・政治・民族同士の争いと繋がり。
そこに広大な自然に住む獣達が複雑に絡まりあって、正直凄く凄く重いテーマだと思う。
でも、そんなことも微塵も感じさせないほど一気に物語に引き込まれて最後まで駆け抜けるように読んでしまったというか読まずにはいられなかった程惹きつける魅力を放つ物語にすることのできる上橋さんはやっぱり世界のファンタジー作家だと思う。
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病気とは、医師とは、また統治とは、そう言った所を考えさせる本であった。この中の主人公達はファンタジー小説のように思える話の内容に対して非常に人間くさくて泥臭いところが今回の本の特徴。これは子供向けの本じゃ無いな。
大人が読んでどう考えるかと思うものだ。 ああ、以前読んだ、ダンブラウンのインフェルノと指向が似ているんじゃ無いかと思った。でもこれは読んで良かった本だと思います。
おすすめ。
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上橋さんがこの物語にこめたメッセージがたくさんあるような気がする。でも、行きつくところは、共に生きるということなのかなと。久しぶりに読み応えたっぷりのファンタジーに出合った。何度も何度も読み返すことで、この物語の深さがわかるような気がする。
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Kindleの合本版を一気読み。後半はページを進めるのももどかしいほどで、久々に読書の楽しみを存分に味わった。
上橋さんの本は設定、文章などなど、全て骨太な印象。がっつりもっていかれる。
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久々の大型ファンタジーでした。
ウイルスをファンタジーに取り入れたのと、王国の歴史と、面白いのですが、ちょっと、善悪が入り乱れてわたりにくいのが、残念。