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「道徳の教科化」へのもくろみが着々と進められている。これまで「聖書科」「宗教科」を「道徳」の授業に代わるものと充当してきたキリスト教主義学校にとって、決して他人事ではない。
そもそも道徳心(公徳心、倫理規範、モラル)といったものが教科として教えられるかどうかを含め、それらと宗教的情操や知識、信仰心がどう関連してくるのか、人知を超えた「大いなる力」への畏敬とは何かなど、議論すべき点は多々ある。
国のお墨付きを得た検定教科書を使うぐらいなら、ぜひ本書をこそ採用してほしい。『宗教と現代がわかる本』(2008~14年)に収録された宗教学者による対談を1冊にまとめた集大成だ。
相手は柳田邦男(ノンフィクション作家)、柏木哲夫(淀川キリスト教病院名誉ホスピス長)、中島岳史(政治学者)、本田哲郎(フランシスコ会司祭)、高橋哲哉(哲学者)、内藤正典(国際政治学者、イスラム研究者)、原武史(政治学者)の7氏。いずれも宗教の当事者であったり、「ハタから」の応援者であったり、そのスタンスはさまざま。
テーマも生命倫理から原発、貧困、靖国神社、皇室と宮中祭祀、西欧とイスラムまで多岐にわたる。共通の問題意識は、現代社会の諸問題に対し宗教がどのような役割を担い得るのか。
「永遠に暴走しつづける」科学に対し、介入できるのは「歴史的に蓄積した経験知」「そこに宗教的な観念というのが決定的に意味を持つ」(中島)、「『いていいよ』と言うだけでは、無視しているのとあまり変わりない」「『多様性を認めましょう』というのは、美しい言葉だけど、認めるだけでは……何も建設的な分裂の解消、平和の構築は始まらない」(本田)などの指摘に、わたしたち宗教者はどう応えよう。(松ちゃん)