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紙の本
「生きづらい」人の手元に一冊。
2015/05/10 20:19
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:橋本至 - この投稿者のレビュー一覧を見る
表題作『はるかにてらせ』のサワちゃん、『恩人』の蓉子、『身代わり不動尊』の山城つばき、『京浜東北線の夜』の「おれ」、『コンビナート』のナカちゃん、『券売機の恩返し』の「私」・・・家庭・学校等で大切なものを奪われ、生きることにつまずいている一人ひとりが、ある出会いを契機に新たな方向へ歩み出そうとする。そして「家族」「結婚」「学校」「労働」「真の友人」「社会性」といった、世の中では当然のように重要視されているものについて「本当にそうなのか?」と読み手に問いかけてくる。
情景が映画のワンシーンのように浮かび上がる、或いは心模様が皮膚感覚で迫ってくるような描写と、どこかひょうひょうとしたユーモアが織り込まれた、柔らかな文体が印象的。
今まさに「生きづらさ」の只中に身を置いている人の手元に届けたい一冊。
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