紙の本
美しくも呪われた血
2015/11/26 04:03
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投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
中本に生まれた男たちの破滅的な生きざまが描かれる。容姿に恵まれながらも、みな酒や刃傷沙汰などで短命に終わる。著者の代表作「千年の愉楽」に比べると、1人1人の描写がいまいち弱かった。
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中上健次を初めて読んだ。
これまで読んでいなかった理由は特に無いのだが(敢えて言うなら機会を逸した?)、何でもっと早く読まなかったんだろう……。
語り口は南米文学を彷彿とさせるマジック・リアリズムで、第一印象ではあまり日本の文学という感じがしない。しかし描かれているのは紛れもなく日本人で、新宮というローカルな場所の匂いを感じるところが面白かった。
そういえば熊野には行ったことが無いんだよなぁ。なのに不思議と、自分と近い場所にあるような気がする。小説のパワーって凄い。
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金色の小鳥が群れ夏芙蓉の花咲き乱れる路地。高貴にして淫蕩の血に澱んだ仏の因果を背負う一統で、「闘いの性」に生まれついた極道タイチの短い生涯。人間の生と死、その罪と罰が語られた崇高な世界文学。
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中上が連綿と描き続けてきた“路地”シリーズの終着点。
“路地”の最後の生き証人、今は零落しアル中のトモノオジが中本の極道タイチの生涯を幻惑的に語る。
蓮池の挿話、人物のカタカナ表記、終盤に現れる釈迦の掌と、浅学ながら深淵な意図とブッディズムを感じる。
圧倒的な文学的魅力とエネルギーを備えた、誰にも真似出来ない文学世界の極地を味わった。
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中本の一統、高貴にして穢れた血の最終章とも言うべき一冊。
主人公は若死にする運命の中、駆け抜けるように生きたタイチ。
中上健次の作品に出てくる男性は、どんなに零落してもかっこいい。嫁より朋輩を大事にするなど、昭和的ではあるが、たしかに一昔前の男性はそういった強さを持つ人が多かったような気がする。今は多分、違う強さを持つ男性が多いのだろうけど。
千年の愉楽、本作の中本の一統の物語、岬、枯木灘、地の果て至上の時といった熊野サーガの一群は、本当に面白い。