紙の本
レント.シーキングを許さないために
2016/01/07 17:42
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投稿者:チップ - この投稿者のレビュー一覧を見る
レント シーキング
企業が政府官庁に働きかけて法制度や政策を変更させ、利益を得ようとする活動。自らに都合がよくなるよう、規制を設定、または解除させることで、超過利潤(レント)を得ようという活動のこと
現在推し進められている「農協改革」は日本国民の食糧安全保障と農協が抱える共済・貯金を国際金融資本に差し出す政策だと三橋さんは糾弾している。
三橋さんの文章は読みにくく、わかりにくい部分も多いのだが、農協改革が日本国民のためでなく国際金融資本の圧力だという事はよくわかる。
でも三橋さんは農協のいい所ばかり言っているが、農協自身も長年の既得権益にどっぷりつかって農家のためでなく、農協組織を守るための活動をしていたのも事実。
農協自身も身を引き締めて、国際金融資本から日本の食糧を守ってほしい。
紙の本
要点だけ知りたい人には内容が細かすぎるかも
2019/08/08 17:58
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投稿者:akihiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
4年前に発行された本ですが、農業に関する戦後の流れを知るには良いと思います。例えば、終戦直後の日本は食料不足でしたが、当時のアメリカは食料過剰だったため、日本に小麦を輸出したことによってパン給食が普及したそうです。
農協「改革」の危険性を指摘するのが本書の目的であり、著者の危機感から批判の表現はやや強めになっています。また、警察官が不祥事を起こしたからと言って警察が不要とはならないのと同様に、一部の農協が農家に不利益を生んでいるからと言ってすべての農協を否定するのは危ないと言っています。
ただ、詳しく書かれている分、初めて関心を持った方にはボリュームが多いかもしれません。2019年8月時点では、著者はYouTubeでも発信しています。要点だけ知りたい方は、まずYouTubeで見た方がわかりやすいかもしれません。
紙の本
僻地・過疎地の農協コミュニティの実態を知らない著者
2015/10/15 17:55
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投稿者:かめきん - この投稿者のレビュー一覧を見る
農協が個々の農家を守り、品質を管理し、日本の食糧安保に貢献してきた事実に関してはこの本にて述べられている通りである。
しかし、その硬直した組織と、農水省のタッグが農業の多様化への道を閉ざしている事実に言及しないのはアンフェアに思えた。
『農協が色々と貢献しているのは分かったけど、その役割を果たすのが農協である必要はないよね?』という疑問は最後まで消えない書であった。
また、著者は都市部の人間らしく、僻地の閉鎖的コミュニティにおける農協の権威を知らずに暴論を吐いているのも気にかかった。
「農家は農協・全農から肥料や農薬や農耕危惧を購入しなければならない義務はない」などはその典型である。他から仕入れて村八分という状況を想像できぬのかと落胆した。
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この本の著者である三橋氏の本は、2007年の彼のデビュー作からほぼ目を通してきましたが、彼が「農協」をテーマに扱ったのは初めてだと思います。そして今まで農協に関する知識がなかった私は、この本を読んで農協に対するイメージが変わりました。
変わったというより、初めて、農協が果たしている機能がわかりました。農協=農業協同組合、ということすらも分かっているはずなのに気づいていませんでした。農協という存在が、我々日本人が日本で美味しくて安全なモノを安心して食べられるものであることが私なりに理解できました。
彼がこの本で、現在アベノミクスの中で進んでいる、TPPが進んでいくと、韓国が米国とFTAを締結して苦しむことになる姿を日本も経験することになると警告しています。
農協とは、営利法人ではなく、食物を消費者(日本で暮らす人)に、安全なものを安心して供給する仕組みであることを理解しました。同時に、三橋氏は農協会員の員外利用についての問題点を指摘しているとともに、この点から規制緩和・ルール変更を言ってきている米国の戦略性の高さを評価しているのも面白いポイントでした。
この本は私の知らなかった農協についてスポットを当ててくれた記念すべき本でした。
以下は気になったポイントです。
・農協改革は、日本国家存亡の危機である、つまり、日本国が日本国民の主権の下で存続できなくなることを意味する(p16)
・日本国民が主権を失い、亡国に至る道は二つある、安全保障の強奪、そして、地域消滅(p18)
・防衛、防災、防犯、食料、エネルギー、医療、流通等の、安全保障の各項目は「かけ算」であり、足し算ではない。どれか一つでもゼロになってしまうと、日本国民の安全保障が崩壊することになる(p23)
・震災が発生したとき、真っ先に助けに来てくれるのは、同じ日本国民である、地元の土建業者である。彼らには機材があり、それを動かす人材が存在し、そして「地元」を知っているから(p25)
・規制緩和・グローバル化と、安全保障の強化は、両立しない(p33)
・食料価格が高騰し、食えなくなった国民が暴動を起こす。チュニジア(2010.12)、エジプト(2011.1)、アルジェリア(同)、ヨルダン(2011.2)、イラク(同)、これにより政権が倒れた(p56)
・1953.1にアメリカ大統領となったアイゼンハワーの当面の課題は、余剰農産物の処理であった。1954.3に防衛力強化の支援との引き換えに、農産物輸入拡大を求めるMSAが締結された(p60)
・アメリカではグローバル市場で価格競争力を持つための市場価格と、農業を可能とする目標価格の差額を補助金として補填している。(p79)
・イギリスは1720年に再輸出用を除くすべての綿布の輸入を禁止。自国市場をインド産キャラコから保護したうえで、綿製品の生産性を高める技術開発投資=産業革命が拡大した(p80)
・GMO栽培面積のうち、途上国が54%を占める。アメリカ、ブラジル、アルゼンチン、インド、カナダで89%(p89)
・農業改革が推進されるのは、農業という既存分野に���規参入して、利益を稼ぐビジネスを展開したい企業家が存在するため(p109)
・新たに付加価値を生み出すわけでもないのに、政府の政策により特定分野に新規参入を果たし、既存の所得のパイから他人の所得を奪い取っていく行為を「レント・シーキング」という(p112)
・日本の農業所得に占める財政負担の割合は15.6%程度、アメリカは26%、穀物農家に対しては50%、欧州は90%以上(p114)
・日本の郵便事業が分割・民営化されることで、ゆうちょ銀行から22兆円、かんぽ生命から1兆円以上、外国投資へ流出した(p125)
・少子化で自治体の数が減っていくという行政の問題ではなく、日本の地域消滅が農協改革から始まる(p134)
・農家や農協は別に、全農から肥料や農薬を購入しなければならない義務はない。(p137)
・小さな買い手である労働者たちは、大手の小売業者に対抗できなかったので、労働者を束ねることで協同組合が誕生した(p145)
・全農のシェア(生産高)は、米:35%、青果物:30%、食肉と鶏卵:15%、配合肥料:29%(p148)
・農林省は、大東亜戦争の敗北、GHQによる日本占領、日本国民の主権喪失というショックを利用して、大規模地主を解体し、膨大な自作農を作り上げた(p155)
・農地改革は、GHQも驚くほどのスピードで進み、2年間でほぼ完了した。改革に際して、農地を売り渡した地主は176万戸、総農家数の8割に達した(p159)
・小作人階級から自作農へと転じた農家は、それまでとはレベルが違うモチベーションで農業にいそしんだ。これが日本の食糧危機を2年程度で終わらせた原因(p161)
・日本政府とGHQは、自作農に転換した元小作農家を保護するための組織として農協を奨励した。政府が大規模化を進めようとしたのに対して、GHQは、販売・購買・金融などの経済的なサービスを提供する組織として位置づけようとした(p171)
・農協の数は、一方的に減り続け、2015年7月には、679(1948年:1万5866)に減少、地域から単位農協が消滅したのではなく、経営危機を乗り越えるための合併(p173)
・六次産業化(生産、加工、流通販売)を唱える人が理解していない点として、1)農産物の加工、流通販売において供給能力不足になっていない、2)農協改革と無関係に六次産業化を図ることは可能であるという事実(p181)
・全農は、事業収益6.4兆円、職員数8000人超、組合員1022団体、子会社121社を数える巨大商社、しかも全農は協同組合なので利益最大化を目的にしていない(p198)
・現在の単位農協が経済事業の赤字について、信用事業と共済事業で補てんしていることを批判するには、農作物を現在の2,3倍で購入するべき(p210)
・農業事業者200万人に対して、正組合員数467万なのは、家族も加盟するため。準組合員が517万人なのが問題。購買、金融、小売り、ガソリンスタンド、介護、病院等、多岐にわたるサービスを展開しているから、農協以外に地元にスーパーやガソリンスタンドがない地域もある(p219)
・実際にビジネスを行っているのは、各地の単位農協であり、共済連や農林中金は、単位農協の預金や掛け金の運用をアウトソース先として請け負っているのみ(p227)
・員外利用は準組合員利用を制限して、それが利用できなくなった元農協利用者たちの市場を、アメリカ金融会社に開くというカラクリ(p231)
・現在の多くの単位農協は、経済事業の赤字を、信用・共済事業で補てんしている、この主な顧客は準組合員である(p234)
・日本は可住地(500メートル以下、傾斜なく沼沢地でない土地)は27%、イギリス85%、ドイツ67%、フランス73%と比較して小さい。農地を維持することは大事で、そのためにあるのが農業委員会である(p255)
・ISDとは、政府の規制強化で、外資系企業が損害を被った場合には、世界銀行傘下の国際投資紛争解決センターに提訴できるもの。この判断ポイントは、いくら外資系企業に損害を与えたかで判断する(p277)
・TPPは自由貿易のためにやるというが、国民ではなくアメリカを中心とした一部のグローバル資本の自由のため(p279)
・インドを植民地化した東インド会社は、インド農民に綿布や芥子(けし)等の商業生産を共用した結果、小麦の生産能力は落ち込んだ。それにより19世紀だけで2000万人が餓死した(p282)
・モンサントの社員食堂では、一切の遺伝子組み換え作物が使われていないことは有名(p290)
2015年10月4日作成
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私は北海道で農業に関する仕事に従事しており、農協改革に興味があって本書を手に取った。
結論から言うと、戦後の農協設立の歴史については勉強になったが、内容としては現在の農協改革の問題の指摘にとどまり、対策が書かれていないために、それ以上に得られるものはなかった。
また、書かれていることが、地方の農協や農業の現場の感覚とズレすぎている点が気になった。
例えば、JAピンネのAコープについての話。
新十津川町と浦臼町をエリアとするJAピンネについて、「街には他のコンビニエンスストアも、商店街もない」と書かれているが、石狩川を渡った隣町である滝川市には、コンビニもガソリンスタンドも揃っている。JAピンネから、車で10分もかからない場所である。
さらに、車で1時間も行けば、北海道第2位の都市である旭川市がある。
JAけねべつについても、周りにコンビニやガソリンスタンドがないように書かれているが、車で20分もかからない中標津町内に、東武サウスヒルズという巨大スーパーがあり、生活に必要なものはほとんど揃う。
確かに、車で移動しなければならない距離に買い物に行くのは、高齢者には困難なこともある。だからこそ、コンパクトシティ化の議論がでてきているのが現状である。
JAの担当エリアだけを見れば、コンビニやガソリンスタンドがないかもしれないが、隣近所の市町村には、衣類や書籍も売っている民間のスーパーや、24時間やっているコンビニがあることが多いのではないか。
本書は、ものごとの一面だけを見て、JAの必要性を論じているように感じられた。
安全保障の面から、東京への一極集中を避けるべきというのはその通りだが、その、一極集中を避けるためにも、中規模都市のコンパクトシティ化などの議論が盛り上がっているのが時流である。
農協やAコープが、地域を維持するために不可欠だというのはそのとおりだが、何も変わらずに今のままでいいかというと、そんなことはないだろう。
各地域に人口を分散したままの状態が、果たして日本国を守るための安全保障の状態としてベストの状態なのか。
今後、農協の理事に経営者を招いたり、いくつかの単位農協を合併するような流れは避けられないだろう。
守りすぎも問題だし、攻めすぎも問題である。攻めと守りのバランス、経済活動と伝統を守る活動の両立ができるような仕組みが必要なのかもしれない。
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普段この手の文章を読まないので引用が多くて取っ付きにくかった。このたびの農協改革をめぐる1冊。アメリカの日本人の食生活改変計画とかは面白く読んだ。国政と国民とでは「対アメリカ」は違うし、対アメリカ政府と対アメリカという国も違うのでこんがらがるのが、本書はわりとアメリカや諸国と比べて日本はこんなにも素晴らしい。なのに日本政府は、、を繰り返してばかりであれ?さっき読んだ?と感じる。同じ論調で畳み掛けている。
しかし、法案の細部を引き合いに出してこの一文に注目だとかはなるほどなるほどの連続。法案なんて全ての文章に推敲を重ねて意図を含んでいるのは当たり前。読み解けてないこちらの知識不足を痛感する。
全農の株式会社化とまではいかなくても、単位農協は自己改革を図ってもがいているので、この先農協の担う事業の幅は目論見とは反対に成否はわからないにしても、おのずと広がるだろうと思う。
食料自給率の問題よりも、本書でもすこし触れているように、地域の盛衰にはインフラ整備である。採算を度外視した地域のインフラ整備をどこが行うかである。結果的にいまは農協が多く担っているので、農協が縮小したり街に出て行くと行政か社会的責任に力を入れている企業が代わりを務めることとなる。それがスムーズに入れ替わらないとしたら、農協改革の煽りを受けて地方に打撃があるやもしれない。それが著者のいう亡国の序章なのかもしれない。しかし反対にこれを機に、農協自己改革で地方はさらなる活性化するやもしれないので、となると株式会社化という脅しは脅しでとどまれば日本のためになるのかもしれない。わからないので〇〇かもしれない、ばかりの感想。どうなることやら、どうしていったらいいのやら。
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興味深い内容だった。規制改革を真っしぐらに行った結果が現在。良かったことなどあるのかと疑問になるほど悪い結果になっている。国とは何か、ビジネスとは何か、深く考えさせられる。
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食料自給率 カロリーベース 39% 生産額ベース 65%
日本の穀物輸入のシェア アメリカ 小麦52% とうもろこし 45% 大豆60%
サウジへの原油依存度 30%
レントシーキング 政府の政策により特定の分野に新規参入を果たし、既存のパイから他人のGDPを奪い取っていく行為
1945/8/14-1947にかけての日本の飢餓
鉄道輸送の破壊により都市への食料の輸送が滞った
農民 戦争中政府に無理やり食料を供出され不信。そのため食料供出がすすまず
1945年 40年ぶりの不作
朝鮮半島、台湾からのコメの移動ができなくなる
カロリーベースの自給率 破棄分が分母にはいってしまう
農協
代表機関 JA全中
経済事業 JA全農
信用事業 農林中金
共済事業 JA共済連
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日本の食料安保の基礎となっている農協の役割について、マスコミの表面的な論調とは一線を画す、歴史の紹介や分析が述べられている。
視点としては正論で説得力もあるが、農業の現場に立ち、実際に農協という組織に接してきた立場から一つ言わせてもらえれば、農協という組織を担っている職員及び管理職そしてトップにまで言えることだが、三橋氏が言う農協のその基本的役割をどの程度理解し仕事をしているかという問題だ。
巨大組織とその歴史に甘えて、組織防衛に眼が眩み、組合員ひいては日本の農業の育成、そして食糧安保の大儀を忘れている農協構成員、そして実際に農業を担っている農業人の意識の問題にも切り込めていれば、なお一層の説得力がもてただろう。
そこのところの分析と具体策を筆者には期待したい。
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世間の人の知らない農協をちゃんと書いて、伝えてた良書。ほんっと世間の人たちは適切に農協批判をしていない。農協が知らせてないし、みんな知ろうともしてないからだけど、農協は意外と素晴らしいよ、ほんとに。しかし、批判すべき点ももちろんあるので、とりあえず批判したい人はこの本読んで、ちょっとでいいんで農業かじって出荷まで持ってくといいと思う。農協の役割がわかるから。
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農業と農協、TPPなどを分かりやすく説明した本ではあるが、対象が善悪ありきで少々偏っている。著者の本全体に言えることだが、データを示すのはいいがもう少し客観的に冷静に物事を記して欲しい。
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間違って三橋貴明の本など借りてしまったのだが、農協準会員問題も含めて論を展開しており、なかなか面白かった。
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先程この本を読み終わったんだけど、全然知らなかった。
JAは悪だみたいな漠然としたイメージを持っていたけどJAが過疎地域にとってインフラとして機能していることや、別に農薬買う必要がないこと、JA全中がアメリカで日本に安心安全なものを輸入するために頑張っていることなどなど、全く知らない事実の連続でした。
そして、JAが非営利団体である事でどれだけの恩恵を消費者が受けているかという事。
株式会社が偉いというような認識は農家の人が税金で守られていない(アメリカやヨーロッパは国から農家へ多額のお金が支払われていて安定的に食物を作れる、輸出出来るようになっている、実質お給料の出どころをみると公務員のようなもの)この国ではJAは必要だと思わされた。ただ、今、農家が株式会社になる事がすごく増えててそれは国からお金が出るからみたいなことを誰かが言ってたけどその辺りは今度調べてみたいと思うが。
いずれにしても、国は六次産業とか諸々良さそうなことを言ってるけどいっこうに農家を守ろうとはしていなくて、モンサントを始めとした穀物メジャーの数十年に渡る戦略にのってしまっているんだなということがよくわかった。
食料安全保障ということを全く考えたことはないけど、そういう大きな問題がほとんどの人が知らない間に何かしら進行しているんだなと思うと、恐ろしくなる。
今度はJAに批判的な人の本を読んでみようと思う。