紙の本
ダークサイドに墜ちる世界
2016/07/03 13:45
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
ポスト冷戦が終わり、世界はナショナリズムの時代に回帰し始めています。
本書では、グローバル化を原因して、「ダークサイド(排外主義)」に墜ちつつある世界情勢(中東・中央アジア・欧州・米国・中国)について、佐藤氏と宮家氏が縦横に語り合っています。
経済的不平等は不健全な大衆迎合的ナショナリズムの台頭を許し、さらには中国やロシアは勝手な理屈で、他国の領土を侵食し始めています。日本は、格差是正によりダークサイドの増殖を抑制し、効果的な安全保障政策を取るという舵取りが必要であり、ポスト安倍が心配との結論でした。
ところで、イギリスがEU離脱を決めました。本書では、「国境のない欧州という夢は崩れる寸前で、通貨ユーロも風前の灯」「イギリスはこれから大英帝国時代に築いた旧植民地ネットワークの英連邦との経済連携を強化するという方向に進む」と言及していました。ドイツ一人勝ちのシステムであるEUが崩壊するのは時間の問題かもしれません。
一方、「防衛費は人を殺す予算」と主張する政党が、一定の支持を獲得する日本は、世界の中で特異な国と思います。「人のものは自分のもの、自分のものは自分のもの」と考える中国に毅然と対抗できるでしょうか、不安です。
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少数言語を除いて2000語 国連加盟国はおよそ200 国民国家を形成できたのは10民族のうち一つだけ
EU ユダヤキリスト教の一神教の伝統(ヘブライズム)、ギリシャ古典哲学の伝統(ヘレニズム)、ローマ法の伝統(ラティニズム)の3つの価値観で結び付けられているキリスト教共同体(コルプス クリスチィアヌス)
トルコを受け入れるのは難しい
あの地域の広告代理店はサウジアラビアが抑えている
新たなジハード拡散の拠点はフェルガナ盆地 (キリギス、タジキスタン、ウズベキスタン)
独でもカトリックのバイエルン地方は食事を楽しむ習慣がある
プロイセン的な美徳は 勤勉、潔癖、服従、そして祖国への愛
独に駐在する商社員の奥さんが何に困っているかというと、ゴミの分別 17種類
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基礎知識がないとスッと入ってこないけど、ISを排除しても中途情勢が安定しないことと、トランプ政権成立の意味はわかった。
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元外務省の2人による世界情勢論。
TPPが単なる貿易協定ではなく、中国に対するブロック経済の形成にあるという点が一番関心を引いた。
「自由貿易地帯をアジア·太平洋に作って中国を遮断し、日本にとって都合のいい時は中国と交流し輸出を行い、都合の悪いものは入ってこないようにする。」
「TPPとは経済だけではなく、外交安全保障の問題であり、
日·米·豪の三国が枢軸国を作る。
日·米安保体制、米·豪安保体制、日·豪安保体制という軍事同盟を経済でも支える。」
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【きっかけ】
トランプ現象、テロ頻発、BREXIT等から、歴史の転換についての議論が高まってきている中で、俯瞰として。
【概要】
世界全体で起こっている現象の見方について対談。
【感想】
プレモダン、モダン、ポストモダン、それらの混在という視座から頭の整理にはなった。
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中東、中央アジア、中国の1つの見方を提示してくれていてとても参考になる。鵜呑みにすることなく、自分もこれからウオッチしていきたい。
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元外務省の二人が語る、俯瞰した現代の世界情勢。そのエリアごとに連鎖する変数を読み解く事で、確かな未来を想像させる。国家の欲望はどこに向かっているのか。第四次グレートゲームにおける各国の論理を紐解く。
対話形式で進む本著は、目で追うだけでも知的刺激に溢れ、飽きさせる事がない。しかし、その対話に自分が参加しているような臨場感をもった楽しさは得られない。なぜなら、内容が専門的過ぎ、聞き役に回らざるを得ないからだ。この手の対話本によくある、聞き手が素人、という図式ではなく、専門家同士の対話だ。だからこそ、読む価値があるし、得るものも大きい。そうであるし、専門家同士といっても語るテーマは、よく聞くホットな政治問題であるからだ。
この本では第四次グレートゲームの構図を各国の
現状と利害関係から語る面があると思うが、本来、国家が起こすアクションは、戦前の日本のように、現状がそのままでは立ち行かなくなる追い込まれた状態により、起こるものだと思う。だからこそ、本著にも書かれた、現状を力で変えようとする、中国の論理がわからなくなる。今、追い込まれているのはどの国か。そして、アクションを決断する、決断しやすい元首は。答えは漠然と思い描く事が可能だ。そして、その答え合わせを、本著で試みることは有意義な読書になるだろう。
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■中東にイスラム教以外の共通の価値観があるとすれば,それは「部族」。中東の人々は部族を基礎単位として暮らし部族の目で世界を見ている。したがって政治的だけでなく文化的,宗教的にも国境=境界線という発想は乏しい。
・国境を線で規定すること自体近代欧州で生まれたここ150年程度の思想
・ソ連が成立する1922年まで中央アジアに国家はなかった。当然,近代的な民族意識はなく遊牧民には血縁に基づく部族意識,農耕民には定住するオアシスを中心とする地理意識があり両者に共通するのはイスラム教スンニ派という宗教意識だった。
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元外務省のノンキャリアとキャリア、また外務省のロシアンスクールとアラビストの対談が面白い。前に(文藝春秋?)二人の対談を読んだが、その対談では、佐藤氏が細部に議論を持ち込んで、対談をリードした感じがしたが、今回は宮家氏が、「外務省のラスプーチン」に対してさすがキャリアと思わせる知識と理論を組み立てて、堂々と論陣を張って、読み応えがあり非常に面白かった。
宮家氏は、「私は中東分析を六次元連立方程式に譬えています。変数には①欧州vs北アフリカの地中海変数、②イスラエルvsパレスチナ・アラブのレバノン変数、③イランvs湾岸アラブの湾岸変数、④世俗主義・アラブ民族主義vsイスラム主義の世俗変数、⑤穏健イスラム主義vsイスラム過激主義のイスラム変数、⑥少数派政権vs多数派政治エリートの少数派変数。すべて中東地域の地政学とも関連する伝統的な政治的対立軸ですが、諸変数の相関関係をみることによって中東情勢の流れをある程度予測することは可能です」と言って、「アラブの春の失敗」した理由などを具体的にコメントしていく。そして「部族的権威主義が色濃く残る中東で政治の自由化だけを進めれば、専制以外の統治手段に慣れていない政治エリートたちの統治能力を逆に減じて、イスラム勢力の台頭を許す。結果として、それまで機能していた国家統治システム自体を破壊することになる」といった分析力はなかなかのものであり、中央アジアの分析も面白かった。
一方、佐藤氏も「フランスやイギリスはアサド政権を潰すために急ごしらえで反体制派を作り、それにスンニ派国家のサウジやカタールが支援し、シリア内戦を生み出し、そこにISが付け込んで入り込み今日のシリアの泥沼化を招いた」と読み解く。
彼らの見方は、現在の中東の混乱は「民主化が正義」とする欧米が招いた結果であり、さらにアメリカの中東政策のパートナーが従来のサウジアラビアからイランに変わりつつある現状に対して、サウジのロシア接近や、更にトルコのエルドアン大統領のオスマントルコ帝国復活の思惑等が絡み合い、IS問題が片付いた後も、核の拡散などのリスクが高まり、中東の安定化は難しいと予見する。
また中国についても、宮家氏は「中華のアイデンティは、多民族の統合によってネーションを生み出す近代思想とは異質なものでした。数千年来の伝統である周囲の蛮族を漢人に同化させる発想から抜け出ていない」
佐藤氏も「アメリカや日本といった世界標準の近代国家のなかにめざすべきモデルを見出さず、『過去の中華帝国の再発見』というかたちで自国の未来を構築しようとしている」
宮家氏は、その中国の国家目標はアヘン戦争以来の屈辱を晴らすため、アメリカを東アジアから追い出そうとしており、そのために中国はアメリカとだけ手を握ろうとしていて、日本、韓国、台湾、東南アジア諸国は最初から相手にしていない。それは「アメリカよ同盟国を見捨てろ」と言うに相応しい。まさに中国こそが「戦後レジームへの挑戦者」だと断言する。
等々と、二人の対話の面白さに引き込まれ、読み応えたっぷりでした。
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元外交官でインテリジェンスの2人が語る今後の世界の動向について。
日本以外の世界の潮流について知ることができた。
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歴史的に、反セム主義は欧州社会の底流にあり、厳しい時だしになると伏流水のように吹き出してくる。ナチズムの本質とは人種主義。ヒトラーは血と土の神話に基づいて、優秀なアーリア人種が世界を支配するのは当然というナチズムを展開した。アーリア人は生まれながらに優秀であるkとおが公理なので、ロジックとしては合理的。もちろん科学的でも実証的でもないから、滑稽ムトウな思想だが。
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当然ながらたまに論理展開で「そうだろうか?」と思う点はパラパラあります。例えば宮家さんは中央アジアの土着のイスラムのアイデンティティを薄く見ている節があって、ISやアルカイダが入ってくれば思想的に侵食されると捉えている感がある。しかし個人的に思想の「原理主義性」と、思想の浸透度は直接はリンクしないと思います。
また佐藤さんは、日本においては左翼よりも右翼の方が危険なレベルにまで過激化する可能性があると捉えている。しかし引き合いに出しているSEELDsとネット右翼の対比に全く説得性はないし、日本赤軍など過去に凄惨な殺人沙汰を起こしたのはむしろ左翼ではなかったか。
ただ、そこそこの地位まで上り詰めた元外務官の2人が語り合うのだから出てくる情報は深いです。
中東、中央アジアあたりは知らないことだらけでした。
直感的に感じるところでは、宮家さんはどちらかと言うと保守性が強くて、中国やアラブで流行った革命連鎖をだいぶ冷めた目で見ている。一方で佐藤さんは社会主義、と言うよりはロシアへの思い入れがなんとなく感じられる(まあ、外務官は程度の差はあれ任地惚れするみたいだし)。
なのでおそらく2人は意見相反する部分も結構あるんじゃないかと思うのだが、そういった記述は見られないのでお互い相手を慮っているんじゃないか。
2人の「主張」に興味があるなら対話モノではない方がいいかもしれない。
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【由来】
・「佐藤優」で図書館検索したら、新しい割に予約数が少なかったので。
【期待したもの】
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【要約】
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【ノート】
・思った以上に内容の濃い本だった。「精読」としたのは、ロジックを追うというより、サラッと述べられている項目をリストアップ、整理して、きちんと用語を調べたり、データをあたってみるテキストとして、ということ(アメリカの対中東石油依存度は30%、とか)。
【目次】
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・中国がなぜ簡体字にしたのか。表向きは識字率向上。本質は、国民をそれ以前の知識から遠ざけ、共産党支配移行の言説だけが流通する。歴史の断絶のための情報統制。
・ロシアも同様。敗戦後日本でも、当用漢字・新かなづかいで同様のことをした。
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大きな視野から世界を語っていて、非常にわかりやすい図式を提供していると思う
いまみれば間違っていることもあるけど、それを比較してみていくのもまた興味深い