紙の本
この頃の香山リカはすっかり評論家になってしまっているのだけれど、見ているところはとても大切なところだと思う
2008/11/01 22:04
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
パーソナリティ障害という、病気とは言いにくいが、日常生活の多くの状況で、特に対人関係上でトラブルまがいのことを起こすような認知や行動の歪みがある人たちを、パーソナリティにかかわる精神障害ととらえる考え方がある。米国精神医学会による精神障害分類によれば、大きく3つのタイプがあり、それぞれのタイプに3~4の障害が含まれるとされている。その代表的な障害が、境界性パーソナリティ障害である。
とある研究によれば、こうしたパーソナリティ障害という診断がつく人というのが、人口中数%から10数%にもなるという。10人に1人と言えば、ごくありふれた事態ということが言えるだろう。いつ誰が遭遇してもおかしくないし、ひょっとしたら自分がそうなのかもしれない。それだけ、これまでの常識や人間関係でのルールが通じない人がいるということか。
この本に登場する人たちは、ここに書かれていることだけではパーソナリティ障害と診断することはむずかしいが、確かにそこらにいそうである。各章のタイトルを見れば、誰もが思いつくかもしれない。
第1章 見て見ぬふりをしない人
第2章 泣き寝入りをしない人
第3章 「それでも私は正しい」ひと
第4章 いきなりトップにメールする人
第5章 昔の怒りを抑えられない人
第6章 ネット上だけ「正義の人」
ここまでを読む限りでは、著者の他の本にもよくある現代社会の状況分析を並べているだけなのだが、この本の肝心なところはここからあとにある。
まだ仮説の域を出ないが、上記のような人たちに共通する「キレる」ことの原因を脳内メカニズムにも求めている。そして、社会自体の問題にも言及している。ここでも現状分析に多少の仮説を加えているだけと言えなくもないが、それなりに納得できることもある。
そして、著者が一番書きたかったのは、最後にある「キレないための5カ条」だったのかもしれない。最後の最後に四角枠で囲んで5カ条を載せるくらいだから。内容は当たり前と言えば当たり前のことなのだが、それを改めて書き記さなければいけないような時代になってしまったのかとも思える。ここで書き記されていることができるような人間を私たちは「大人」と呼んでいたように思うのだが、だとすれば今の世の中は(自分自身も含めて)「大人」と呼べるような人がいなくなったということなのか、「大人」になるということはどういうことだったのか、ということまで考えさせられてしまった。
紙の本
キレる大人のカタログ ?!
2009/06/28 17:53
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Kana - この投稿者のレビュー一覧を見る
キレるのはふだんおとなしくて文句をいえないでいるためだとおもいがちだが,著者はそうではなくて,キレるひとはそもそもがまんしないひとなのだという. 「見て見ぬふりをしない人」,「泣き寝入りをしない人」,「いきなりトップにメールする人」 など,さまざまなタイプがとりあげられている. がまん 「しない」 のではなくて,いきなり怒りが爆発するからがまん 「できない」 のだろう.
著者はこの本のタイトルにあるように 「なぜ」 キレるのか,どうすればよいのかもかんがえてはいる. しかし,まだよくわからないというのがホンネであり,理由も対策もこれからだということだろう. しかし,すくなくともなにがおこっているかをよく知ることが第一であり,そこにこの本の価値があるというべきだろう.
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2008/1
若者がキレやすいと昨今語られているが、若者だけでなく大人だって十分キレやすい世の中になっている。どうしてそんな状況が起きているのかを社会全般の人の行動から説明しようとしている。
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やっぱり読みやすいねー。すらすらさくさく読めました。途中までの事例的な内容はあっという間に、あぁーわかるわかる〜〜みたいに読んでいたけれど、キレる原因が脳にある!?辺りは一生懸命にならないと難しいかもなぁ。。。でも、著者の指摘する情動の時代から思考の時代へというのは深く納得だよ。それは、賛成です。
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キレるという行動の考察。正義感が過剰になっていく状況やキレることが自己主張という点は気がかりですね。また、若いことを是とする風潮が年齢相応の行動をとりにくくしているというのもうなずけますね。図書館予約数は16(08/04/29現在)です。
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キレる大人はなぜ増えた
という理由を知りたくて読みました。
***
自己実現に向かわないエネルギーの蓄積
他者との連帯感の薄れ
自己主張を超えた自己中心
相手が一度悪いことをすれば、いくらでも制裁を加えていいという一方的な考え
いびつな正義感
自分が攻撃される前に他者を攻撃
ストレスの増加
理屈よりも情動優先
***
様々な現象とか原因が記載されていたけど、
これという決定的な要因はない。
当たり前か。
キレちゃわないように、自分を冷静に客観視できる力をつけたいものだ。
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「プライドと情熱」コンドリーザライス 解離性障害 トラウマなどがきっかけで「心のまとまり(統合)」に問題が生じ、記憶喪失や現実感の喪失といった症状が出現する一種の心の病だ。この解離性障害では、私たちが何かを感じたり考えたり、過去の記憶を思い出したらりしながら当たり前に感じているはずの、「これはほかでもない私の感覚や考え方であり記憶なのだ」という実感が薄れる
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「キレる」は、今や若者だけに当てはまる言葉ではなく、大人だってすぐキレる。電車の中で、病院で、飲食店で…。
著者はその理由を3つ挙げている。
(1)人々の価値観の変化
(2)社会の要請
(3)個人の病理
この中でも、特に(2)社会の要請が引っかかった。この中にも、2つ理由がカテゴライズされている。
・24時間リアルタイムの世界
ネットなどの氾濫で、世界は24時間、何時でもリアルタイムになった。待つことは、悪いこと。不愉快なこと、ストレスになること。
現代人は、我慢することが苦手になってしまったようだ。
ゆっくり考えて、相手のことを考えて、反応する。というのでさえも、「我慢している時間」になってしまったのかも。
・情動の優位化
「科学的か」だとか「考えさせられるか」といった思考的・知的なものよりも、「感動的か」「泣けるか」「笑えるか」といった、情動的なものが優位に立つ時代がやってきた。
自分の情動がぱっと出ると、じっくり相手のことを考えられない。想像できない…。
自己主張の仕方が、短絡的になっているのかも。
【まとめ】
「キレる前に、キレている自分を客観的に見てみなさい」というのが、キレないための処方箋としてのおとしどころというのはよくある話なのだが、
現代を「情動の時代」とし、再び「思考の時代」へ!というのは、「キレる」という行為を通して社会の姿をのぞいた気がして、興味深かった。
消費社会化した世界の、不幸な現状かもしれない。
(あっき)
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大変読みやすいし、共感できる。
表面的なとらえかた方かもしれないが、コミュニケーションを考えされられる。
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[ 内容 ]
駅や病院など公共の場で暴れる人、対応が悪いとトップに直訴する人、なにがなんでも自分だけが正しいと思い込む人…。
いつから、どこから、日本人は、こんなにもキレやすくなったのか。
希代の「世相ウオッチャー」である精神科医が、臨床での経験をもとに現代社会の病理を読み解き、キレないための処方箋を示す。
[ 目次 ]
第1章 見て見ぬふりをしない人
第2章 泣き寝入りをしない人
第3章 「それでも私は正しい」人
第4章 いきなりトップにメールする人
第5章 昔の怒りを抑えられない人
第6章 ネット上だけ「正義の人」
第7章 キレる脳のメカニズム
第8章 キレなければ生き残れない社会とは
第9章 キレないための処方箋
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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著者は「情動が論理に先行する」というが違うと思う。あまりにも情動的な日本社会において、論理での攻撃が結果的に有効になりつつあるという事に日本人が気がついた結果ではないのかと。
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今日も、二人のお客さんから理不尽な事で怒鳴られました。
彼らに共通する事は、「いきなり喧嘩ごし。」「絶対に自分の非は認めない。」で、会話が成立しません(泣)
どうして普通に会話ができない大人(ほとんどは中高年の男性ですが)が増えたのか、どう対処すればいいのか解決の糸口を見つけたかったのですが。
この本では解決には至りませんでした。でも、「切れる大人が増えた。」と思っているのは、自分だけではない事に安心しました。
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キレる原因や背景について述べた本。
扁桃体の異常説や新型鬱病に対する言及は知識を増幅させる意味合いで役に立った。
けれど考え方が精神科医にも関わらず偏り、かつ論拠が科学的に確かめられてるものが少ないのはやや問題だろう。
精神科医の意見というより香山リカの一考察にすぎないだろう。
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キレる大人が増えている。つまり、自分の正義感を見境なく振りかざす人が増えた。その原因について具体例を挙げながら、脳科学的側面、また社会的側面から考える本。
キレる大人の具体例はおもしろかったですが、個人の意見として脳科学を使ってまでキレることを分析することが必要かどうか疑問に思いました。
自分の正義感を振りかざしてキレたあとの自分を客観視できない人が増えているのは事実としてありますが、正義感を振りかざさなければならない状況が増えていることが忌々しきことがと思いました。
昔はこんなマナー違反がなかったのか、ただ我慢していたのかよく考えて、どちらにしろ昔に立ち返ってみたく思いました。
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2013/6/24
493.7||カ (5階自然科学・医学)
最近、「キレた」ことはありますか?
街中で、駅や病院など公共の場でもよく見かける「キレている大人」
なぜこんなにもキレやすくなったか?
脳に障害があるのか?
アメリカ的な「自己主張ができる、議論ができる人」と、日本人の「キレる人」の違いは?
文末には「キレないための5カ条」も掲載。
「キレるのはカッコ悪い!!」