紙の本
戦争ほど残酷なものはない。 戦火に覆われるシリアの町ダラヤに作られた秘密の図書館。 戦争と暴力に対抗するには、文化と教育しかない。
2022/01/03 07:22
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mitu - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争ほど、残酷なものはない。
戦争ほど、悲惨なものはない。
だが21世紀の現代でも、世界の各地で戦争が続いている。
中東シリアの町ダラヤには、市民がアサド政権に抵抗して籠城していた。
狂信者のレッテルを貼られた市民に対して、繰り返される爆撃。
その爆撃を受け、血だらけで抱えられている子どもが、テロリストだというのか。
瓦礫の中から本を集め、若者たちは「秘密の図書館」を作った。
学ぶことを禁じられ、世界から隔離された青年たちは、本を通じて知識と智慧と生き抜く力をつけていく。
著者は現地を訪れる事は出来ない。
戦火に覆われ、封鎖されているからだ。
世界に唯一開かれたインターネットによって、ダラヤの青年たちと著者は交流を続ける。
「書くこと、それはこの不条理を理解させるために真実のかけらを寄せ集めることだ」
中心者の一人、アフマドは力強く語る。
「町を破壊することはできるかもしれない、でも考えを破壊することはできない」
戦争と暴力に抵抗するには、文化と教育の力が必要だ。
知ること、そしてまず何か行動すること。
そこにしか、平和への道はない。
紙の本
本を読むことの意味
2021/10/02 13:31
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
本を読む、とはどういうことだろう。
「何よりもまず人間であり続けるため」というシリアの青年の言葉に心打たれた。
内戦の続くシリア。民主化運動を弾圧する政権に破壊された町で、瓦礫に埋もれた1万5千冊もの本を掘り出して、地下に図書館をつくった若者たちの姿に、フランス人ジャーナリストが迫ったノンフィクション。
死と隣り合わせの環境で、「知」の力を盾に、暴力に立ち向かおうと、本を求める人たちがいる、とういう事実にまず驚いた。そして、読書のゆとりもなかった市民や兵士が、本によって正気を保ち、希望を見いだすさまには、泣けた。
私たちも、この本によって、シリアの実情を知ることができる。
本を読むことの意味が、日本でももっと伝わるといいなあ。
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現地の人々の生の声を伝える一つの貴重な試み。ただし、舞台となったダラアの反政府勢力には、当初から本物のテロリストや、シリアの弱体化を狙う外国人勢力が入り込んでいたのであり、登場人物の若者達も著者もその辺りの認識がまるで不十分だという点には注意する必要がある。本人達の思いや努力がどんなに純粋で正しくとも、周囲を取り巻く状況、全体を正しく認識して動かないと悪用されて終わってしまう。それは人類の歴史で頻繁に起こったこと、私達は肝に銘じておく必要がある。
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戦争ほど、残酷なものはない。
戦争ほど、悲惨なものはない。
だが21世紀の現代でも、世界の各地で戦争が続いている。
中東シリアの町ダラヤには、市民がアサド政権に抵抗して籠城していた。
狂信者のレッテルを貼られた市民に対して、繰り返される爆撃。
その爆撃を受け、血だらけで抱えられている子どもが、テロリストだというのか。
瓦礫の中から本を集め、若者たちは「秘密の図書館」を作った。
学ぶことを禁じられ、世界から隔離された青年たちは、本を通じて知識と智慧と生き抜く力をつけていく。
著者は現地を訪れる事は出来ない。
戦火に覆われ、封鎖されているからだ。
世界に唯一開かれたインターネットによって、ダラヤの青年たちと著者は交流を続ける。
「書くこと、それはこの不条理を理解させるために真実のかけらを寄せ集めることだ」
中心者の一人、アフマドは力強く語る。
「町を破壊することはできるかもしれない、でも考えを破壊することはできない」
戦争と暴力に抵抗するには、文化と教育の力が必要だ。
知ること、そしてまず何か行動すること。
そこにしか、平和への道はない。
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今の世界で実際に起こっていること。
指導者から市民は一切見えないのだろうことが分かる。
そして、過酷な状況下でも希望を持って生きる人間がいる。
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内戦の続く首都近郊のダラヤで、本格的な私設図書館を運営する住民の物語です。
ダラヤはシリア政府からテロリストの巣窟の一つと判断され、ほぼ毎日爆弾が降り注ぎます。
地上で暮らすことはできず、地下に主要機関と住居が移りました。
ダラヤには図書館は無く、瓦礫から掘り出された誰かの持ち物の本から構成された秘密図書館が初めてでした。
政府の検閲とは関係のない本から得られる知識や情報から、住民は生きる気力と広い視野を手にします。
戦時中、民間人や兵士を問わず、正気を保つために読書が役に立っています。
欲求のほとんどを満たすことができない状況で知識欲は満たすことができ、一瞬の安らぎを得ることもできます。
図書館と本は簡単に破壊できますが、読者の知識や意思は簡単には壊せません。
武器を取らずに本を読むことで可能性を広げ、簡単な軍事的解決ではなく難しい平和的解決を望む彼らは立派です。
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なぜ戦争や紛争が起こるのか、いくつになっても私にはわからない。人の命や暮らし以上に重要な主義や利害があるとは思えない。けれども戦争や紛争は絶えず、いつだって犠牲になるのは弱い者だ。
知は力。勇気を、広がりを、生きる力をくれる。
苦しくつらい状況にあっても、人は知を求める。
途中何度も、どうか彼らにこれ以上悪いことが起きませんように、どうか心穏やかな暮らしが戻りますように、と祈るようにして読む。
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本によって救われる人達。封鎖され隔離された街と世界を繋ぐインターネット。こういう武器を持ってもまだ世界から争いはなくせないけど、少しづつでも進めていくしかない。
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『ページとページのあいだをぶらつき、いつまでもページをめくり、句読点のあいだで迷子になる。未知の領土を旅するのだ。』―頭の中の傷を癒す、読書という行為。
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戦地真っただ中で、特殊な立場として内部的には認識されているが故に孤立させられ、兵糧攻めにあって全滅させられそうになった街の人々が、圧倒的な力の差がある相手に対して、「知」を自負に・武器にして戦う過程を記した書物。
理由や目的が一元的で単純な戦争など存在しないのだろうが、現実の一端が淡々と描いた一冊。
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きっかけはラジオだった。
大学生の頃
当時の僕は国際協力団体というサークルに入って
海外の情勢への関心を高めていた
当時シリアの状況は熾烈を極めていて
軍事介入と国内紛争で綴られた新聞を追っていた
そうしてひと段落ついたと思われた
が、物事はそう単純ではない
未だに争いは続いて
銃声は鳴り響いている
その中で人々は立ち上がった
でもその手にあったのは武器ではなく
本だった
それだけでもうパンクロックじゃないかと思った
詩的かつ冷静に綴られた戦況と状況の中で
人々は灯のように本に光を見出していく
本の意味
知的財産の価値
人の理性とは
人が生きる道とは
そこにすべてがある気がした
負けないでほしい
絶やさないでほしい
どんな形になってでも
存続してほしい
先人たちが残したもの
私たちがこれから生きていく道は
そういうものなのだと 思った
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図書館で目に付いた本。そんなに期待していた訳ではなかったが、読み進むうち、あのテレビのニュースでよく聞いたシリアの政府軍と反政府軍の戦闘の影で苦しんでる市民の話しで、知らなかった事が多く興味深かった。ニュースで聞いた実情と全然違っていて、自分の無知に恥じ入った。
どんな状況でも人間には文化が必要なのだと思い知った。
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集められた本は1万5千冊になった。小さな本、大きな本、でこぼこになった本、角が丸くなった本、読み取れない本、非常に珍しい本、とても貴重な本。そうなると、置いておく場所、保護する場所が必要になった。シリアの文化遺産に小さなかけらが煙となって消え去らないうちに保存しておく場所が必要だ。全員で協議した後、公共図書館計画が立ち上がった。アサド政権下のダラヤには図書館がなかったのだ。だからこれは最初の「反逆の町のシンボル、周りのすべてが崩れ落ちているときに、何かを作り上げた、その象徴なんだ」とアフマドは説明した。彼は言葉を切り、考え込んでからこう言った。わたしはこの言葉を決して忘れないだろう。「僕たちの革命は作り上げるためのもので、破壊するためのものではない」(pp.14-15)
この世界的ベストセラー(『アルケミスト』)が、フランスでは文学批評家の評価が高いとは言えなくても、ダラヤの図書館利用者の関心をそれほど引いたのは、彼らにとってなじみのある概念を単純な言葉で言い表しているからだ。自分への挑戦である。彼らには、自分の夢を見つけ出すためにアンダルシアからエジプトまで旅する羊飼いの旅の話はとりわけ魅力的だったに違いない。彼らはこの本を若い革命家である自分たちの苦難の旅を映し出すものとして読んでいた。物語を羅針盤のように頼りにしているのだろう。おそらくこの物語には、彼らの目にとりわけ貴重な宝が隠されていたのだ。無限の自由という宝である。(p.24)
アフマドは爆弾の雨の下で暮らしている。たくさんの友人を亡くし、家族とは三年も会っていない。ダラヤで、彼の日常は緊急事態だらけだ。それなのにこのメッセージを書き、同乗の気持ちを伝えてくれた。
テロリストは謝らない。
テロリストは死者のために涙を流さない。
テロリストは『アメリ』やユゴーを引用しない。(p.66)
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読みにくい本だったけど、
すごく考えながら読んだ。
わかりやすい分け方じゃ終わらない
ほんとうのこと。
メディアで取り上げなければ知れないけど、
メディアが取り上げないこと。
妹と同じ生年の青年が戦争の被害に
今この時代あっていること。
何かを言えなくなる。
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内戦が続き、多くの市民が犠牲になっているシリア。
その中で、包囲された町ダラヤで抵抗を続けていた人々の物語(ノンフィクション)です。
外部から遮断され、爆弾の雨が降る中、必死に生きている人たちの支えになったものは、食料でも武器でもなく「本」でした。
「…戦争をしていると、世界を違ったふうに見るようになります。読書はそれを紛らわしてくれる。僕たちを生命につなぎとめてくれるのです。本を読むのは、何よりもまず人間であり続けるためです」
アサド政権のもと、知識を得て体制に反抗するきっかけにならないよう、図書館を持たない町であったダラヤにおいて、包囲後に書籍を集めて「図書館」を作ったことは、「反逆のシンボル、周りのすべてが崩れ落ちているときに、何かを作り上げた、その象徴」でした。
p.193
「本は成長の糧となっただけではない。恐怖の日常の中で正気を維持するための助けとなり、肉親の死、友人の死、残虐さを見続けて感情が擦り切れた人々が人間らしさを取り戻すための癒しとなった。本を読むと『ここではない別の場所に行くことができる』という。現実逃避と言われても、つらい現実を忘れ優しさを取り戻せるなら、つらい現実に立ち向かう元気を取り戻せるなら、いいことではないか。」
「本」のもつ力を知るため、そしてシリアの内戦のすべてではなくても、実際に起こった悲劇を知るために、多くの人に読んで欲しいと思います。