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  3. 鈴木クニエさんのレビュー一覧

鈴木クニエさんのレビュー一覧

投稿者:鈴木クニエ

85 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

紙の本快適睡眠のすすめ

2001/06/29 22:49

日本社会にも組み込めそうな新シエスタの提案

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 タイトルのおかげか、この本を読んでいる間、普段にもましてぐっすり眠れた気がする。「気持ちよく眠りたい」という願望がそうさせたのか、本書につまった古今東西の多くのデータがそうさせたのかは、あまり考えないでおこう。
 いろいろなデータをもとに説明されると、睡眠が人にとっていかに重要か改めて感じる。現代日本社会のような「便利で効率的な生活」の背景には、睡眠のリズムを犠牲にした側面があった。眠りが難しい時代に、少しでもよい睡眠をとるにはどうしたらいいのか、本書から手がかりを得られる人も多いだろう。
 ぜひ普及してほしいのが、著者の提案する新シエスタ。日本で2時間のシエスタは無理だ。でも午後2時頃に30分休憩できれば、「10分でおやつ、残り20分間昼寝」という日本式シエスタも可能だろう。眠気による事故、失敗は少なくない。午後の眠い時間、目をこするのではなく、短い昼寝こそ有効だと思うのだけれど。

<目次>
はじめに
1 眠りのメカニズム
2 眠りにはリズムがある
3 眠りには個人差がある
4 リズムが乱れると
5 サバイバル睡眠法
6 昼寝の効用
7 睡眠環境を工夫する
8 世代別改善ポイント

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紙の本

紙の本確率・統計入門

2001/01/05 16:46

つい確率で考えてみたくなる、確率・統計の個性的な教科書

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 漢字がでない著者の名前は、小針あき宏。「あき」は、日へんに見という字だ。相当に個性的な人物だったと伝え聞く。著者は、本書の原稿を書き上げた後、完成させる前に39歳の若さで亡くなった。最終的に、広中平祐、森毅など著者と親しかった数学者が仕上げを行った。
 私の学生時代、本書は絶版だった。古本屋で手に入れた友人から見せてもらうと、他の教科書とはまったく違う。印象は、血の通った教科書。定義、命題、証明、例題と体裁はいかにも数学だが、その間に書かれている日本語が異彩を放つ。「最後のアハハに、すっかり毒気を抜かれて、3人は内ゲバする元気もなくなってしまった」とか、「仮定が明確でなければ、結論がさまざまになることは、憲法第9条に限ったことではない」なんて文章は、ほかでは到底お目にかかれない。「A君は一目惚れの彼女に熱烈な手紙を出したが遂に返事はこなかった」で始まる練習問題も衝撃的だった。著者同様、個性的な内容ゆえ人によっては異論もあろう。時代も遷った。しかし、少し前に復刊されたのがとても嬉しい1冊だ。
 読み進めるには、少なくとも集合論や微積の知識を必要とするので、数学は苦手という人には勧められない。それでも頑張って小針ワールドを体験してみたいという方には、物語風の『すべての人に数学を』(日本評論社)をお勧めする。

(鈴木クニエ/フリーライター)

<目次>
序にかえて
第1章 確率モデル
第2章 確率に関する基本的概念
第3章 いろいろな分布とその解析
第4章 多変数の分布
第5章 正規分布
第6章 乱歩
第7章 標本の抽出
第8章 推定・検定
練習問題の解答
付表
あとがき
索引

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紙の本

紙の本地球温暖化問題に答える

2001/09/18 18:43

小泉首相に読ませたい温暖化問題の本

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 とにかく明快な本である。

 地球温暖化問題にどう向き合うか。「制御」「対応」「放置」の3種類があると著者はいう。温暖化の影響は看過できないので抑制策を講じるべきというのが「制御」。消費拡大という人類文明と相容れない温暖化抑制ではなく発生する問題への対症療法、たとえば海面上昇には堤防の高さを上げるなどが「対応」。そして何もしない「放置」。

 著者の立場は「制御」だとはっきり明示し、なかでも温暖化への寄与率が大きい二酸化炭素濃度の安定化に的を絞って議論を進めている。その議論はとても具体的だ。「二酸化炭素濃度がなぜ上がるのか」ということも、CO2がどこにどのように固定されているかを説明し、その後、どういう抑制や対応が考えられるかを論じていく。

 ふだんおぼろげにわかった気になっている事柄が明快に解説されるのは、気持ちがいいほど。たとえば、熱帯雨林はCO2を吸収してくれるということも、「成熟林は、地球の肺ではない」とはっきりいう。成長過程でCO2を吸収するのであって、成熟していればトントンといったところなのだ。もちろんそれでも森林が重要な理由も書かれている。また、濃度抑制のための「CO2固定」に関しても、留めておけるかどうかが大事だということがよくわかった。著者があげる例はこうだ。光合成を利用してサツマイモを作る。サツマイモを作ることはCO2の陸への固定だ。それを焼酎にしてもいい。が、飲んでしまってはダメなのだ。飲めば、CO2がやがて大気へと出ていってしまう。「焼酎は作るが飾っておく」ことこそ、大気中にCO2を放出しない「固定」なのだ。

 著者もあとがきに書くように、地球温暖化問題の解決は容易ではない。いや困難だ。温暖化は確実であっても、その影響には不確実な点があるのも事実。しかしだからといって放置することがいいとも思えない。そんな状況の中で、科学や技術がなにをできるか、そして解決へ向けて人間ができることの手がかりが示されている本だ。

<目次>
序章  地球温暖化問題とはなにか−−新しいパラダイムの出現
第1章 温暖化はなぜおこるのか
第2章 二酸化炭素濃度はなぜ上がるのか
第3章 どう対応できるか
第4章 化石にかわるエネルギー
第5章 エネルギー消費量を減らす
第6章 エネルギー技術の限界を知る
第7章 固定−−それは陸と海の炭素蓄積量を増やすこと
第8章 ビジョンとシナリオ
第9章 地球温暖化問題に答える
終章  新しいパラダイムへの発信
あとがき
 

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紙の本

紙の本動物たちの不思議な事件簿

2001/06/29 22:37

楽しいエピソードに笑いつつ、動物の知性に思いを馳せてみる

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 序章で、著者のリンデンはくどいほど書く。「私が考えているのは、いろいろな動物が科学的研究の場面ではなく彼らの日常生活のなかで人間にどう反応するかをしめす物語を調べることである」「本書は動物の知性の『物語』であって『研究』ではない」。つまりは、動物に知性はあるのかというややこしい問題をとりあえず棚上げしているのだ。
 そういう著者の策略にまんまと乗って読むと、かなり楽しい本だ。盛り込まれたたくさんのエピソードは、動物園の飼育係や獣医、研究者たちと動物たちの日常に転がっているもの。中でもオランウータンの脱走話には多くの動物園関係者が頭を悩ませていることだろう。曰く「チンパンジー舎を開設するとき、その安全性をためした方法の一つは、オランウータンを入れて、逃げ出せるかどうかを見ること」だった。オランウータンが脱走できなければ、チンパンジーは絶対大丈夫ということになる。脱走で最も名をあげたアメリカのオランウータン、フー・マンチューはドアの掛け金をはずすための針金を、唇と歯茎の間に隠し持っていた! もちろん口の中を傷つけない形にして、だ。
 が、苦労して脱走した別のオランウータンが檻の外でしていたことは、雑巾でせっせと床掃除だったり…。飼育係の日課をまねる動物が多いというが、思わず笑ってしまう。
 読み終える頃には、やっぱり飼育動物であれ野生動物であれ動物の知性を感じてしまう。しかも困ったことに、私なりに擬人化された感じ方なのだ。いちおう人間なので、人に引きつけて考えてしまうのはある程度仕方がないよね、というのはエクスキューズになるだろうか。

<目次>
はじめに
序章
第一章 ヤギと友だちになったオオカミ−−ゲームとユーモア
第二章 「彼女は人間を知らず、彼はゴリラを知らない」−−物々交換と取引き
第三章 アーッ、ずるい!−−だます
第四章 君がこう考えるんじゃないかと、私が考えるんじゃないかと、
    君が考えるんじゃないかと私が考え……−−読心と頭脳ゲーム
第五章 仕事に駆けつけるブタ−−協力
第六章 オランウータンの技師とナッツ割りをするチンパンジー−−道具と知性
第七章 トペカ動物園から逃げ出す……−−そしてオマハから、ブランズヴィルから
第八章 愛!雄々しさ!思いやり!−−共感とヒロイズム
第九章 彼らは私たちをどう思っているのか−−人間が珍しい!
参考文献
訳者あとがき

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紙の本

紙の本グルメの話おいしさの科学

2001/06/29 22:34

この文章は「おいしさ」と同じくらい記憶に残りそう

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 この著者には、どんな話もおもしろく書く才能があるに違いない。会話文をバランスよく差し込んで情景を思い起こさせ、軽いタッチの文章で「おいしさ」を語る。京大で開講したというポケットゼミ「おいしさを考える」の受講生がほんとうにうらやましい。
 思わず吹き出すようなトピックもたくさんあるけれど、妙に納得させられてしまうことも多い。たとえば調理に費やす時間。「ハモンズの法則」というのがあるそうだ。曰く、各世代は調理時間を前世代の半分にする。現在は平均15分。とすると、いまの小学生たちが大人になったころは7分程度で、その次は3〜4分。まるっきりいまのインスタント食品にかかる時間じゃないか。インスタントラーメン党を公言する著者は、なにやら楽しそうだ。
 食品・栄養化学の専門家である以上、ネズミを使った実験の話や脳内でおいしさに関わると考えられている物質の話なども出てくる。そうした基礎研究的なところもわかりやすく押さえてあるけれど、気楽に、でも自分の食生活・食履歴を振り返りながら、あっという間に終わりまで読んでしまうだろう。

<目次>
第1編 おいしさとはなにか
 1章 おいしさを考えるゼミ
 2章 グルメの解剖学
 3章 最後のキスは煙草のフレーバー
 4章 飽きの正体
 5章 ソースを好むネズミ─動物にとってのおいしさとは
 6章 おいしいカニの味の合成法
 7章 美食は穏やかなる麻薬である
 8章 情報はおいしい
 9章 キムチに芋虫を見つけたら─清潔らしさと清潔
第2編 徹底研究 グルメの世界
 10章 ステーキのおいしさ
 11章 カレーはなぜおいしいのか
 12章 醤油の香りに日本を想う
 13章 大阪鶴橋のキムチは絶品である
 14章 ビールは水よりも水を感じさせる
 15章 ふきのとうやニガウリの苦味はなぜおいしいか
 16章 フランス料理と日本酒vsワイン
 17章 漬け物・発酵食品のおいしさ
 18章 刺し身を食べる民族
 19章 ウナギ屋の匂いになぜ引きつけられるのか
 20章 インスタントラーメンはなぜおいしい
 21章 ラーメンの研究室内市場調査
第3編 生理学そして健康
 22章 朝からステーキはちょっと
 23章 人間の腸を食べる話
 24章 薬味は身体を温める
 25章 食通が食べるいわゆるゲテモノ
 26章 おいしいだしをとるための生理学
 27章 健康のためなら死んでもいい─減塩主義者の不可解
 28章 パンとご飯
 29章 離乳食を考える
 30章 黒船到来
あとがき
著者紹介

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紙の本

紙の本左と右の科学

2001/05/23 16:15

左と右の話題、オールジャンルで総まくり

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 まずは鏡に向かって、右手でVサイン。鏡の中のあなたがVサインをしているのは、どっちの手? もちろん左手。そう、鏡は左と右を逆にする。でもなんで左と右だけで、上と下は逆にならないの? これにパシッと即答できるだろうか?
 地球上で人と生まれたからには、古今東西、おそらくほとんどの人が当たり前に「左と右」を使っている。しかし改めて「左と右」を定義しようとすると、けっこう難しい。その難しさを、本書では「宇宙人に左と右を伝えるには」と問いかける。上下も前後もどうにか伝えられるが、左右だけはどっちにも解釈できてしまうというのだ。
 鏡の左右から始まり、左右の定義(たしかに渦も螺旋も左右の向きを伝えるのは混乱しやすい)、世界に見られる左右の格付け(どっちがえらい?)といったいろいろな話題が続く。その後は、銀河や惑星の回り方という規模の大きな左右、外見は左右対称なのに中身は非対称なことが多い生物の左右、そしてDNAや原子分子など小さい世界の左右、ついには対称性の破れまで、とにかくあらゆる分野の左右問題総まくりなのだ。
 見開き1単位の図解本で「読む」という感じではないが、けっこう使えるアンチョコになりそう。おっと、鏡問題について私からのヒントは車のルームミラーかな。後ろの車が右ハンドルか左ハンドルかはどう見える? 実際と逆?


<目次>
はじめに
Super Index
1章 どっちが左で、どっちが右か?
2章 歴史、文化、生活、芸術のなかの左と右
3章 マクロの世界の左と右
4章 生物の世界の左と右
5章 分子の世界の左と右
6章 電磁気学における左と右
7章 ミクロの世界の左と右
8章 ミクロから再びマクロへ
巻末付録
索引
参考文献

<関連図書(参考文献より抜粋)>
M・ガードナー著『新版自然界における左と右』紀伊国屋書店
黒田玲子著『生命世界の非対称性』中央公論新社
柳澤桂子著『左右を決める遺伝子』講談社
I・スチュアート他著『対称性の破れが世界を創る』白揚社

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紙の本

人生経験豊富な大人に贈る、「数学と物語」のエッセイ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 確率や統計の考え方を使って、物事を考える。大事なことだ。隘路にはまり込みがちな人生の見方に新しい視点を与えてくれるだろう。だが確率・統計と私たちの間には溝も横たわる。いざ、本書のキーワード「物語」の登場だ。集団やサンプルによる確率・統計と違い、生身の人間はそれぞれ自分の物語の中にいるのだ。
 実際に取り上げられるトピックは、マーフィーの法則のからくりや、「聖書の暗号」のパロディ(合衆国憲法がクリントンとモニカのスキャンダルを予言していた?!)による批判、O・J・シンプソン裁判など、非常に多彩だ。誰もが知っている話を使って、「日常に隠された数学」と「物語」の溝を行ったり来たりする。この作業の重要性は、人生経験豊富な大人ほど痛感するにちがいない。ところで、なんでもかんでも統計数字に帰すことの笑い話をひとつ。アメリカ人の半分は男性で、半分は女性だから、アメリカの成人は平均すると卵巣を1個と睾丸を持っている?
 少しクセのある文章は、慣れるまでが辛いかも。でも、「いろいろある中でいちばん驚異的な偶然の一致といえば、あらゆる偶然の一致がまったく存在しないことではないか」など、何気なく挿し挟まれた一文が読み手の思考をドキッとさせてくれる。眉間にしわを寄せずに読み進めることが、この本には似合いそうだ。
(鈴木クニエ/フリーライター)

<目次>
序論
1 物語と統計の間
 原初の光
 統計学の背後には物語
 ある数学的短編小説のあらまし
 物語と統計では見るところが違う
 多すぎる特徴、足りない人数
 固定観念、気まぐれ、統計的保守主義
2 主観的な視点と個人の外にある確率
 少数者の視点、個人、統計
 マーフィーの法則と被害者意識
 心理学、視点、思いこみ
 聖書の暗号とセックス・スキャンダル
 仕掛けのある話と確率論的一体化
 ベイズの定理と自分のもつ物語の修正
 複合的な法の物語と推論ネットワーク
 O・J・シンプソンと統計殺し
3 略式の言説と論理の間
 略式の論理とわれわれ
 ポーカーと人生におけるジョーカー
 規則、入れ替え、確率
 内包の論理と組み合わせの爆発的増大
 標準的論理のこつ
 状況、意味論、統計
 物語の共通の地盤
 苛烈なフェミニストと株式市場の寓話
 自伝からモデルと小説へ
 付録−−ユーモアと計算機
4 意味と情報
 情報−−講師の洞察、落ち着かない女の子
 暗号学と説話
 オッカムとお手軽ビット物語について
 複合性の地平
 (ラムジー)ごみ捨て場が十分大きければ、必ずただで手に入る食事がある
 物語、たとえ、できてしまう秩序
 複合度、カオス、小銭
5 溝を埋める
 宝くじと事実に化ける願望
 約束、疑問、暗黒の意図
 二つの文化
 同じ偏狭
 医者のジレンマ
 環境その他の緩衝地帯
 (原)宗教について一言
原註
参考文献抄
訳者あとがき
索引

<原題>
ONCE UPON A NUMBER The Hidden Mathematical Logic of Stories

<関連書>
ジョン・A・パウロス著『数学者が新聞を読むと』飛鳥新社
K・C・コール著『数学の秘かな愉しみ 人間世界を数学で読む』白揚社
谷岡一郎著『社会調査のウソ』文春新書

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紙の本

人と生きる犬、犬と生きる人

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 突発性「犬が飼いたい」病を発症中の私には、楽しくも、きつい読書となった。TBS系人気番組「どうぶつ奇想天外!」の中でも反響の大きかったテーマは「犬」。本書は、その特集をまとめたものだ。私の症状激化に拍車がかかってしまった。
 普通の家庭に飼われる犬、現役を退き余生を過ごす年老いた盲導犬、日本では数が極めて少ない聴導犬。本書で取り上げられたどの犬にも、人ともに生きた物語があり、同じように人には犬と生きた物語があった。まだ認知度の低い聴導犬の話はやるせない。この犬たちは、みな元・捨て犬。人と生きるはずが、人の都合で捨てられ、傷つけられた過去をもつ。そんな犬たちが人間との信頼関係を再び築き上げ、聴導犬となる。
 冒頭で番組プロデューサーは人気の理由を「『理科の社会が見られる』楽しさ」と書く。動物の生態という「理科」だけでなく、動物同士の関係つまり「社会」に目を向ける。その先には、人と動物の関係が見据えられる。できることならば、いつか犬と生きてみたい。

(鈴木クニエ/フリーライター)

<目次>
はじめに 楽しくてやがて悲しい、人と犬の物語  戸田郁夫プロデューサー
第1章 うちに犬がやって来た
 鈴木家とラブ、そして大樹くんの成長  鈴木家のお母さん
第2章 犬と歩く人生
 北海道盲導犬協会の四季 その1  近藤靖ディレクター
第3章 そして華は家族になった
 加藤晴彦の愛犬しつけ奮闘記  俳優 加藤晴彦
第4章 捨て犬たちと繋がれる絆
 犬たちを癒し、犬たちに癒される  石綱恵ディレクター
第5章 犬たちの出会いと旅立ち
 北海道盲導犬協会の四季 その2  近藤靖ディレクター
あとがき  戸田郁夫プロデューサー

<関連書>
ニコラス・ドッドマン著『うちの犬が変だ!』草思社
エーベルハルト・トルムラー著『犬の行動学』中央公論社
マイケル・フォックス著『イヌの心理学 フォックス博士のスーパードッグの育て方』白揚社
ブルース・フォーグル著『ドッグズ・マインド 最良の犬にする方法・最良の飼主になる方法』八坂書房

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紙の本

紙の本クモの不思議な生活

2000/11/06 20:35

英国虫博士が覗かせてくれるクモの不思議さ・おもしろさ

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 イギリスの生物学者で、児童向けノンフィクションの賞を受賞したこともある著者が送るクモ学入門書。クモの一般的な生態から、いろいろな種類のクモの様子まで広くまとめているが、ですます調の語り口はとてもやさしい。小さなクモから大きなクモまで、まるで拡大鏡でこっそり覗かせてもらっているような雰囲気だ。
 投げ縄でガを釣り上げるクモや地面をはう虫に伸縮自在の網をかぶせて餌をとるメダマグモなど、それぞれのクモの話も楽しいが、興味を引かれるのは巣の話。みごとな丸いクモの巣が張られるまでの手順もしっかり図解してある。クモは幾何学の授業を受けずに、なぜこんなにきれいな巣を張れるのか、著者のいうとおりほんとうに不思議だ。
 巣に使った糸を持ち主のクモがどうするかご存じだろうか? ちゃんとリサイクルされている(=食べる)というのを知って、これまた驚いてしまった。

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紙の本

紙の本カラス、どこが悪い!?

2000/09/21 23:48

カラスとの距離感が確実に変わる

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 今年はすでにカラス関連の本が2冊出た。3冊目の本書はトドメ。人は謙虚にカラスを知るべきという啓示のようだ。
 前の2冊を読んでコラムも書き、カラスについては一通り知ったつもりだった。が、この本を読んで「へぇぇ」「ほぉぉ」と何度言ったことか。カラスがレールへ置き石をした事件の詳しい顛末も、なぜか煙突で煙を浴びたがるということも初めて知った。カラスが東京でどういう行動をとっているか調べる必要があるとは感じていたが、そのためにPHSを使って(人がPHSを持つのではなく、カラスに背負わせる)の追跡が行われていたとはついぞ知らなかった。著者はそれらの調査をした人物。でも堅苦しい調査報告ではないのでご安心を。ぐいぐい読ませる文章だ。
 本を読んでもカラスは減らないと思う人がいるかもしれない。が、これだけは確実。読めばカラスとの距離感がまったく変わる。その違いは大きいのだと、体験者は自信をもってオススメします。

(鈴木クニエ/フリーライター)

<目次>
まえがき
1 カラスと人間生活との摩擦
 1 ゴミを食い散らかす
 2 人を襲う
 3 カラス置き石事件
 4 カラスと交通事故
 5 停電を起こす
 6 カラスをめぐる人々
2 カラスのくらし
 1 都会のカラス、田舎のカラス
 2 カラスの一日
 3 カラスの四季
 4 ねぐら
 5 食生活
 6 カラスの知恵
 7 羽毛の手入れ
 8 カラスも食われる
 9 カラスの遊び
3 カラスとどう共存するか
 1 摩擦の構造
 2 カラスの数
 3 今後どうなるか
 4 目先の解決、根本的解決
 5 行政への提言
 6 ライフスタイルの改善
あとがき
カラスと人間年表
アンケート
参考文献一覧

<関連書>
林 良博編集他『現代日本生物誌 1 カラスとネズミ』岩波書店
松田道生著『カラス、なぜ襲う 都市に棲む野生』河出書房新社

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紙の本

紙の本クラゲの正体

2000/09/02 03:35

坂田明が引き出すクラゲとクラゲを取り巻く人々の魅力

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 ミジンコでも知られるジャズ・ミュージシャンの坂田明氏が、クラゲ研究の最先端を走る環境生物学者・柿沼好子氏と、クラゲ飼育で名を馳せる江ノ島水族館の元担当者・廣崎芳次氏と、気持ちのままに対談するのである。これが楽しくないわけがない。クラゲはどんな生き物なのか、どうやって不可能と思われた飼育に成功したのか。坂田氏の軽妙な話術が、二人のクラゲへの愛情豊かな語り口を引き出している。
 もちろんクラゲだけの話に留まるわけがない。柿沼氏の研究者としての出発点やその哲学、廣崎氏が水族館立ち上げのころに経験したことなどへと話は進む。決して肩肘張った言い方ではない。ごく自然にクラゲや生き物への愛しさが伝わってくる。対談の後は、実習。坂田氏自身がクラゲ飼育の現場へちゃんと足を運んで、舞台裏まで報告してくれる。
 こういう研究者や担当者の息づかいを感じる本は、読み終わるとなぜか心がほっとしてしまうのだ。しみじみと、読んでよかった。

(鈴木クニエ/フリーライター)

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紙の本

紙の本ワタリガラスの謎

2000/08/07 01:29

ワタリガラスの行動を探る、推理小説さながらの物語

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 貴重なエサを前にして仲間を呼び寄せるように見えるワタリガラスに、著者は疑問を抱く。利己的な遺伝子を持つなら、独り占めするはずではないか。執念の生物学者ともいえる著者は、かくして厳冬の山にこもり、早起きのカラスよりも一足先に餌場の近くに隠れ、じっと観察するのである。冷静に考え、綿密に計画し、ただひたすら観察する。その様子はまさに「凄まじい」の一言。読んでいると、彼の目を通じてフィールド調査に参加しているような錯覚すら起こる。
 結論は、最後までおあずけ。観察記録にそって展開されるワタリガラスとの格闘ストーリーは推理小説さながらの読み応えだ。
 日本のカラス問題と比較して、考えさせられる記述があった。送電線を支える鉄塔に、2000羽以上のワタリガラスがねぐらを作った。糞が引き起こすショートは大きな損害となる。電力会社と政府が援助して、まず生物学者にねぐら就き行動の精密な研究を実施させたのだ。日本でも駆除するだけではなく、こうした対応はとれないものだろうか。

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紙の本

紙の本プルトニウムファイル 上

2000/07/23 07:27

信じがたい放射能人体実験の全容

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

 プルトニウムを18人の患者に注射。にわかには信じがたい人体実験が、アメリカで行われていた。それだけではない。妊婦829人、養護施設の子ども74人に放射性物質を飲ませ、囚人131人の睾丸に放射線照射……。しかも、ほとんどの人が実験台になったことすら知らされていなかった。
 1986年、注射による人体実験は連邦議会で取り上げられた。が、著者が「誰が実験台にされたか」を7年後の93年に突き止めるまで、注射された人はずっとコード番号としてしか存在しなかったのだ。その様子は『プルトニウム人体実験』(小学館)に詳しい。注射実験以外も加え、94年以降の米政府による調査・対応とあわせて構成されたのが本書である。
 やり場のない怒りが込み上げる。広島への原爆投下以前の実験は3人のみ。あれだけの被害を目にしてなお、実験を延々と繰り返した。なぜ? なんのために? せめて、著者が暴いたこの重い事実に、憤りと悲しみをもって向き合いたい。

<関連本>
○小学館『マンハッタン計画 プルトニウム人体実験』アルバカーキー・トリビューン編 広瀬隆訳・解説 1994.12.1

<目次>
[上巻]
第一部 「産物」
 第一章  プルトニウムは酸の味
 第二章  カリフォルニア大学・放射線研究所
 第三章  シカゴ大学・冶金学研究所、一九四二年
 第四章  許容線量
 第五章  マンハッタン計画始まる
 第六章  顔を見せたプルトニウム
 第七章  人体実験の立案
 第八章  エブ・ケイド
 第九章  ではお次−−アーサーとアルバート
 第一〇章 トリニティ実験
 第一一章 小さな太陽
 第一二章 仕事は続く
 第一三章 ロチェスターの流れ作業
 第一四章 誤診された主婦
 第一五章 量をふやせ−−シカゴ
 第一六章 最後の三本−−戦後のバークレー

第二部 核のユートピア
 第一七章 十字路にて
 第一八章 来る人 去る人
 第一九章 原子力委員会(AEC)の隠蔽工作
 第二〇章 嘘をつけるほどの愛国者−−シールズ・ウォーレン
 第二一章 金の亡者と神様と
 第二二章 ナシュヴィルの妊婦たち
 第二三章 ファーノルド校の少年たち

索引

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紙の本

紙の本人間はどこまで耐えられるのか

2002/06/25 15:44

生理学は面白い。読みながら自分の身体に再会できる

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 昔ながらの水銀の体温計が、ずっと疑問だった。「目盛りはなぜ42度までしかないのか」。子供の頃、もしかしたらそれ以上上がらないようにできているのかと思い、お茶碗に注いだお湯に体温計を差し込んだことがある。結果はもちろん、体温計のガラスが膨らんだ水銀でパーンと突き破られた。水銀の玉がプカプカとお湯に浮いていた。
 極限状況において人間の身体がどう反応するのかを生理学者の著者がいろいろな角度から見て回った本書を読むと、人間の身体もお湯につっこまれた哀れな体温計と同じなのだとわかる。人間の体温は場所によってかなりちがう。いちばん外側にある皮膚は寒いところにいれば、20度くらいまで下がる。運動中の筋肉は41度まで上がることも。だが、ふつう体温と呼ぶ胴体部分奥深くの組織の温度、つまり中枢温度は36〜38度にほぼ保たれている。だから熱い温泉やサウナにも長時間でなければ快適に入れる。しかし発熱など何らかの理由で中枢温度が5度上がって42度を超えると、「心臓発作を引き起こして死に至る恐れがある」という。家庭の体温計で42度以上を測る事態になる前に、専門家に委ねなければならないのだ。
 暑さ・熱さへの耐性だけでなく、本書では「高さ・深さ・寒さ・速さ」の観点から人間の生理的限界を探る。水中や上空を問わず、人間は地球のありとあらゆるところに赴いている。旅客機の飛ぶ高さは、気圧が低すぎ、生身の人間が生き延びられる環境ではない。そこでも快適に過ごせるように作られているのだ。もし窓が割れて急激に減圧されたら? わずか30秒で意識を失う。そんなところを毎日、多くの一般人が何も準備や意識せずに飛んでいると知ると、なにやら不思議な感じもしてくる。
 冒険家たちのエピソードや歴史的な事柄、身近になりつつある宇宙空間での話など、たくさん盛り込まれた個々のトピックも面白い。読者も自分の身体や経験と照らし合わせながら、幾度も「なるほど」と思える本だろう。

(鈴木クニエ/フリーライター http://homepage2.nifty.com/suzuki-kunie/)

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【原題】THE SCIENCE OF SURVIVAL

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目をまん丸くして楽しんじゃえ、遺伝子おとぎばなし

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「テロメア」ってなんだか知っている人、手をあげて〜。……しーん。あれ? ほら、イギリスのクローン羊ドリーちゃんのテロメアはどうやら他の羊より短いって言われたんだけど……。いちおうDNAのある部分の名前なんだ。し・か・も! 老化に関係するらしいってことで注目の的。知らない? でも、ゼンゼンおっけー。だってこの『テロメアの帽子』は、てってーてきに絵本です。
『マッチ箱の脳(AI) 使える人工知能のお話』(新紀元社)で「うっ、こんなにやさしく人工知能を紹介できるなんて」と多くの人を思わせた森川幸人さんの科学モノ第2弾は、染色体のはしっこにあって細胞分裂のたびに短くなるテロメアや他のDNAたちを、丸顔でまん丸の目をしたキャラクターにしてしまった。当然、目だけじゃなくて、口も手も足もあります。かなりカワイイ。
 テロメアのテロちゃんは、夜中に分裂という遊体離脱を繰り返すたび減っていく帽子をかぶっている。ある朝、ついに帽子がこれ以上減らせなくなっていた。そのときテロちゃんは……。テロちゃんのことを詳しく知っている人は知っている人の、知らない人は知らない人の、それぞれの読み方ができる「遺伝子おとぎばなし」絵本はたまにドキッとしながら、なんだか楽しく、そして時に悲しくなってくる。
 タイトルの「テロメアの帽子」ほか、「シュナのお仕事」「二度目の人生」など全部で9本の「おとぎばなし」には、どれもウラがちゃんとある。そのウラは最後に「絵本のなぞとき」として明かされているけれど、ここではもちろんナイショ。まずは、「これはなんの話かな〜」とあれこれ想像しながら読むのが吉。読み終わると、きっと、「私にはこんなお話があるの」と自分のイメージを活かしたおとぎ話を作りたくなるにちがいない。

(鈴木クニエ/フリーライター http://homepage2.nifty.com/suzuki-kunie/)

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