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佐伯泰英先生 4月6日(火)一挙123商品電子化記念! 特別インタビュー

2021年4月6日より、佐伯泰英先生の作品が電子化となります。
hontoでは、この機会に、佐伯先生に特別メールインタビューを行いました。
これまでの作品や登場人物に対する思いから、今後の展望まで、幅広い内容で読み応えのあるインタビューとなりました。先生の作品とともに、お楽しみいただければ幸いです。

佐伯先生 特別インタビュー

4/6、123作品ものタイトルが一気に電子書籍版で配信されます。改めて電子化に踏み切った想い、そしてなぜ今、この時期だったのか、お聞かせください。

 アナログ作家である私の想像力をこえて、時代小説を読む高齢者のデジタル人間が増えたこと、また書籍の販売方法が書店一辺倒からいろいろな形に拡大したことか。自分の好みに合わせて小説を紙の本で読むもよし、電子書籍で、あるいはオーディオ・ブックで聞くもよし、原作者が読書の形態を決めつけることもあるまいと考えたからだ。

「磐音」や「小籐次」、「密命」の金杉惣三郎など、映画やドラマになるように魅力的な主人公たちを筆頭に、先生はこれまでに膨大な数の登場人物を生み出していらっしゃいます。そのアイデアの源泉はどこにあるのでしょうか。

 「密命」の主人公(金杉惣三郎)のみ、私の時代小説のなかでは異色かもしれない。初めて書いた長編時代小説で、好きで読んできた先輩諸氏の模倣小説だからだ。とはいえ、2巻目、3巻目になったとき、筆者の考えるヒーロー像とは違うな、と思え、家族小説の様相へと変化し、最後は父と息子の葛藤へと変わった。まあ、私のシリーズの中では古典的な時代小説かと思う。
 「居眠り磐音」はすでに時代小説に転じて3年余りを経て、自分なりのアイデア、「こんな主人公であったらいいな」と考えつつ、虚構の坂崎磐音と20年ちかくも対話を交わして出来上がった主人公だ。
 「酔いどれ小籐次」は筆者の実年齢に近い主人公であり、時代小説の主人公としては外見上、ハンサムとは言い難い。が、嫁になるおりょうが若くて美形で歌人、対照的なパートナーで、筆者の理想像ともいえる。
 惣三郎は火事場片付けの職人、磐音は鰻割き、小籐次は研ぎ屋と三人三様の暮らしぶりもそれぞれの個性を際立たせているかと思う。
 筆者は剣術についてなんら知識体験なくド素人だ。だが、スペインに在住した1970年代の闘牛界に関心を持ち、マタドールとトロ・ブラボーの生死を間近な距離で何百回、いや、何千回と見てきた。生死の一瞬の描写と駆け引きはこの体験を活かしてきたといえる。
 それにもう一つ、闘牛は、イベリア半島からフランスのプロバンスへと旅から旅、祭礼から祭礼を追う興行だ。売れっ子闘牛士となると年間百回以上の興行をなしていた。そんな闘牛士を撮影しようとすると、一日じゅういっしょのスケジュールで動く。
 たとえばヘミングウェイの「日はまた昇る」の舞台パンプローナで午後8時前後に闘牛との戦いを終えた闘牛士一行は、翌日マラガで契約しているとすると夜通し車で移動しなければならない。この2都市の距離は700キロを超える。ゆえに闘牛士の必需品は枕だ。こんな風に旅する闘牛士を私も夜通しぼろワーゲンで追っかける。車に剣や槍を携えて戦いと移動を繰り返す闘牛士は江戸時代の剣術家ともいえないか。ともかく旅をする路上の人だ。
 戦いと旅、そんな暮らしを闘牛から学んだ。

これまでの作品の電子化とともに、全4巻の新シリーズ「照降町四季」も4月より順次刊行されます。見どころをお教えください。

 もはや闘牛士一行とイベリア半島をぼろワーゲンで駆け回っていたころの若さも体力も冒険心もない。八十路を前に女性の視点から短い連作が出来ないかと書いたのが、「照降町四季」シリーズだ。
(第一巻「初詣で」(4月刊行)、第二巻「己丑の大火」(5月刊行)、第三巻「梅花下駄」(6月刊行)、第四巻「一夜の夢」(7月刊行))
 とはいえ、私の時代小説は人間の深奥を掘り下げて読ませる作品ではない。ただ今全世界に蔓延するコロナ禍に限らず、貧困な政治、衰退の経済界、技術力の立ち遅れなどなど不愉快なニュースばかりだ。そんな時代に一時の「現実逃避」を試みる、読み終えて「ああ、よかった」と思える読み物であればよい。おそらくこれまでの長編シリーズに見られた情の世界が女性の視点へと変じて感じられる「佐伯節」になっていれば成功かなと思う。

一方、「居眠り磐音 決定版」が3月に完結いたしました。スピンオフ作品もいったんお休みとのことで、寂しく感じるファンの方も多いのではないでしょうか。今後の展望など、お聞かせいただけますでしょうか。

 「照降町四季」が完結した八月から「居眠り磐音」の続編ともいえる「空也十番勝負 決定版」にとりかかる。こちらは五番勝負にて中断していたものを、改めて文春文庫で一番勝負から五番勝負七冊を本年末までに決定版として刊行し、来春1月に新作「六番勝負」から続編を開始する。さて、「空也」の結末の舞台はなんとなく筆者の胸中にあるのだが、なにしろいい加減な作者ゆえ、どの時点でおわるか、はっきりと言い切れない。
 ともあれ「空也十番勝負」のめどがついたところで、坂崎磐音の最晩年「磐音残日録」を描きたい、と思う。ただし筆者の年齢を考えれば、「磐音の死」を描く前にこちらが斃れる公算もなきにしもあらず、というわけで執筆できる間はせっせと働きます。

今回の電子化によって新たに読者となった方を含め、ファンの方々に一言、メッセージをお願いいたします。

 どうか愛読者諸氏が自分のライフ・スタイルに合った読み方、活字本、電子書籍、さらにはオーディオ・ブックとお選びになって楽しんでください。

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