honto+インタビュー vol.5 安藤哲也

注目作家に最新作についてお話しいただく『honto+インタビュー』。随時更新予定。
今回は、いまの時代にあった「働き方」を提唱する安藤哲也さんが登場!

本質を重視するコミュニケーションでビジネスが展開されると、生産性が上がる。

安藤哲也

―就職、転職、異動など、春はフレッシュな気持ちで「仕事」に向きあう季節。書店に行けば、ビジネスパーソンの感度を高めるのに役立つ本ともたくさん出会える。仕事を充実させ、楽しんでいくために知っておきたいキーワードを教えてくれたのは安藤哲也さん。書店、IT企業勤務を経て、現在は「働き方」をテーマに全国で講演活動を行う立場から語ってもらった。

仕事ができる人ほどメールが短い
これは、僕がかつて大手IT企業で働いた経験や、現在のNPO活動を通じて経営者、官僚や地方の首長、行政関係者、一般のビジネスパーソンや大学生など様々な立場にいる人たちとの付き合いの中で、強く確信していることです。

メールの作法には、その人のビジネスセンスが詰まっています。メールとは情報伝達の手段ですから、いかに伝えるべきことの本質を正しく相手に伝えられるかという技量が試されるものです。ダラダラと枝葉末節を連ねるのはナンセンスで、何を言いたいのかも相手に伝わりません。その時点で最低限必要な情報だけ絞って伝えられる人は、ものごとの本質を早く的確に掴める技術を備えているということ。本質的なエッセンスを重視して仕事を進めるという意識は、昨今しきりに訴求されている「仕事の効率化」「生産性の向上」に直結します。

同時に、メールの作法はその人の時間に対する感覚、“タイムマネジメント”のスキルも如実に表すものと僕は感じています。

長いメールは書くのにも時間がかかりますが、読むのにも時間がかかる。つまり、受け取った相手の時間も奪ってしまうということ。簡潔にポイントを絞ったメールを書くことは、相手の時間を尊重するコミュニケーションにつながります。「この人とは気持ちよくやりとりができる」と相手に思わせられなければ、ビジネスは発展しないでしょう。

かくいう僕もメールが普及し始めた頃は楽しくて、1通3分ほどかけてメールを書いていました。1日に返すメールは100通ほどでしたからメール返信にかかる時間は1日300分、実に5時間です。これではアイディアを練ったり、企画を編集したり、クリエイティブな業務に費やす時間が奪われてしまいます。そのことに気づいて以来、僕は「メールは3行以内。5行以上になる時は電話で話し、10行以上になるなら会って話しに行こう」と決めました。メールが長くなるということは「説明が必要」な状況を表すので、直接話す方が誤解もなくスムーズに事が運ぶのです。

以上、「メール」というコミュニケーションツールを例にとって話をしてきましたが、僕がこれからの時代のビジネスで重視すべきと考えているのは、「コミュニケーション」「組織の生産性向上」「ワークライフバランス」といったキーワードです。

日本の企業社会は、「お世話になっております」という挨拶を欠かさなかったり、会議を何度も重ねたりと、形式を重んじながらも、大事な意思決定は先延ばしにする傾向が強くありました。人材の流動化・国際化が進むこれからの時代には、より率直で本質的なコミュニケーションが求められます。

本質を重視するコミュニケーションでビジネスが展開されると、生産性が上がります。無駄な資料作成や会議が減り、長時間労働の削減にも効果があるはずです。

残業が減れば、仕事以外の趣味や家族との時間を楽しめる人が増えて、ワークライフバランスが向上します。これからの時代に合った新しいビジネスセンスを磨くことで、日本社会に、笑って仕事をする人が増えるといい。僕は強く願っています。

最後にもうひとつ、本を愛する一人としてメッセージを。仕事のセンスを磨くには、ビジネス本も役に立つかもしれません。でも、それだけでは不十分だと思います。幅広い世界にアンテナを貼って、豊かな見識を磨く意識がとても大事だと思います。子ども向けの絵本からだって大きな学びがある。大人の感受性を高めてくれる、仕事にも人生にも効く本に出会っていけるといいですね。

(文/宮本恵理子  写真/鈴木愛子)

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著者プロフィール

安藤哲也(あんどう・てつや)

NPO法人ファザーリング・ジャパン代表
出版社、書店、IT企業勤務など経て、2006年に同法人設立。「仕事も人生も笑って楽しむ」をテーマに企業、自治体、団体向けの講演・研修で全国を飛び回る。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進チーム顧問、内閣府・男女共同参画推進連携会議委員など歴任。

主な著作

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