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奇跡島の不思議
著者 二階堂黎人
孤島、《奇跡島》。昭和初期、名家の娘の手により享楽の館が築かれたが、彼女の不可解な死以来封印されてきた魔島。そこに眠る膨大な美術品を鑑定するために島を訪れた美大の芸術サークル。彼らを出迎えたのは凄惨な連続殺人だった。脱出不可能のパニックのなか、メンバーは自ら犯人を探し始める……。これぞ、本格推理小説! 著者が全霊を込めて取り組んだ《フーダニット(犯人探し)》。厳密な論理と巧妙な道具立てで読者に挑戦する意欲作。
奇跡島の不思議
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紙の本奇跡島の不思議
2003/06/24 10:29
マニアックな筆致の冴える、全てに意味ありげな雰囲気が好もしい長編
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投稿者:PNU - この投稿者のレビュー一覧を見る
クサイ青春モノのごときイントロから始まった物語は途中から大化けし、印象をガラリと変え陰惨な真相に向かって急展開! 暗黒の中の一条の光、ファンにはニヤリなサプライズもあり(あのひとですよ、あのヒト! 登場事からもう醸し出しちゃってますよ、なにしろあのヒトだから)。怪奇きわまる連続猟奇殺人は派手派手しく、美術の知識が多少ある人には視覚的な愉しみが得られるだろう。
途中で明らかになる登場人物たちの共通の秘密、心の痛む過去には読者として疎外感を覚えてしまう。そこに登場する女性は、あまりにSF的である。残念ながら、私には彼女のそこまでの魅力というものが実感出来なかった(伊藤潤二の「富江」じゃなし、男の好みにはもすこし多様性があるように思うのだ)。
ラスト、納得のいきづらい抽象的な動機などは不満が残る。しかし、もともとの設定からしてロマンティック(非現実的)な見立て連続殺人を扱った小説に、どこまでリアリティを求めるかは判断が難しく、評価は読み手の好みにゆだねられるものだろう。