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信長と秀吉と家康
著者 池波正太郎(著)
「人間五十年。天下のうちをくらぶれば、夢まぼろしのごとくなり」と、乱世を疾駆した織田信長。その夢と理想を受け継ぎ天下を統一した豊臣秀吉。そして盤石の幕府組織の確立に取り組み、手にした天下を末永く子孫に伝えた徳川家康。「時代小説の仕掛人」がリレー式に、天下統一をなしとげた三代の英傑の戦いと統治の構図を克明に描き、等身大の視点で生き生きと彼らの人間像に迫る。池波正太郎作品唯一の絶版長編。
信長と秀吉と家康
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紙の本信長と秀吉と家康
2005/12/20 13:10
三雄の系譜
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:RinMusic - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦国の時代、名将が全国に割拠していた。今川、斉藤、朝倉、浅井、武田、上杉、毛利、北条…それぞれに才覚の差異はあれども、天下を狙うに十分な名家だった。しかし、時代のスポットライトを受けて舞台に乗せられたのは、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康だった。天下統一の構図はこの三者にわたることになる。では、古典的な名将になくてこの三者にあったものは何だろうか? ここにはもはや時代の要請としか言いようのない、歴史の宿命が働いている。池波は「人間の生き死にには、何かのかたちで、後の世の人に関わりあいがあるものだ。一つの家、一つの家族の歴史にはそれがある」(p.117)と記すが、壇上に挙げられたこの三雄はまさにその系譜だった。
まずスポットライトを当てられた信長は、安土城や南蛮服に代表される艶やかな光を発して、天下無双の輝きがあった。さらに光源を強めていくと、反射した光の先に様々な人物がくっきりと浮かび上がってきた。秀吉はその光を実にラディカルに吸収した。信長が明暗を強めるほど、秀吉の影は大きな像となっていく。この二人はまこと革命的な英雄である。池波は「人間というすばらしい生きものは、理屈では知ることのできぬ一種の力によって生きている。それは自分でも他人でも、どうすることもできぬ力なのだ」(p.115)と感嘆する。
しかし、安土桃山時代と誉まれた栄華もまもなく、血によって洗い流されることになる。バブル時代は長く続かない、それ故に家康は「鳴くまで」待っていたのだ。家康は六つの時から国のため家のために人質に出され、生きるために愛した長男・三郎信康を切腹させ、ひたすら時の権力者の礎として苦渋の人生に耐えてきた。家康は月見草、まさに夜咲く花である。天下掌握目前にして、家康は秀忠に家督を譲って院政に切り替える。信長、秀吉、家康と続く三代の活写の中で見えてくるのは、目映い英雄の光よりむしろ、70年余にわたる夜の歴史である。池波はそのように、歴史をヴィヴィッドに描き上げる作家であった。