外資系投資銀行の資料作成ルール66

本書はお薦めしません。購入前に書店や図書館で内容を確認なさってください

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投稿者：Worker　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

次の3つの理由から、お薦めできない書籍です。

1. 手順の解説が不親切。初心者向けではないが、中上級者向けでもない
2. 公開された本書のサンプルファイルに資料作成のルール違反がある
3. 本書の「ルール」は、必ずしも投資銀行業界で標準化されていない

1. 手順の解説が不親切。初心者向けではないが、中上級者向けでもない

帯で「STEPをなぞるだけ」と謳う割には手順の説明が不親切な箇所があり、初心者にお薦めできる内容ではないという印象をもちました。
2でも述べるルール違反とも関連しますが、実際に手を動かしてみるとサンプルファイルと書籍の手順が一致していない箇所が複数見つかります。

初級者向けではない一方、中上級者に向けてプロフェッショナル・ファームのベストプラクティスを詰めこんだ内容でもないように思います。
例えば、マウスで行った方がよい／もっと手っ取り早いやり方がある中途半端な操作を「ショートカット」「スピードアップテクニック」として紹介するなどです。


2. ネットで配布されている本書のサンプルファイルに資料作成のルール違反がある

ダウンロードしたサンプルファイルをいじってみました。
残念なことにチームで作業を行う上で、効率性を損なうようなポイントが散見されます。著者が本書で投資銀行の後に転職したインターネット業界について「非効率だった」と揶揄する状況が、著者作成のサンプルファイルで生じています。

~「はじめに」より引用~
インターネット業界に転職したのですが、転職後に気づいたのは、いわゆる「我流」で資料を作成している人がほとんどで、その結果、作業効率は悪く、ミスが発生するきっかけにもなっていたのです
~引用ここまで~

「我流」の具体例：
・線とテキストの相対的な位置や大きさに一貫性がない
　⇒Rule53 並びチェックはグリッド線で のノウハウが活かされていない
・同じ見た目でも書籍で紹介しているアプローチと異なる作り方をしている部分が複数ある
　⇒Rule58 日本語なら縦書き活用 、Rule62 グラフは「画像貼付け」 で示した手順を無視している

また、著者のWebサイトで公開した本書のサンプルファイル（2016年3月30日時点でダウンロード）には、プロフェッショナル・ファームにおいて「マナー違反ですよ！」と厳しく指摘される点が複数含まれています。

マナー違反の具体例：
・pptxファイルの表面的な作成日時は2016年3月29日、作成者は著者になっているが、よくみると本来の作成日は2006年5月9日、会社名は*********, Inc.（著者の以前に在籍した会社が現在の会社名に商号変更する以前に用いていた名称）となっている
・pptxファイル内に、t*mi***a（一部伏字に変更）というユーザーのPC上のフォルダ構造に関する情報が残っている
・xlsxファイルに著者のPC内のファイルへの外部リンクが設定されたままになっている

非効率と揶揄する過去の職場名が含まれるマナー違反のファイルを下敷きにして、サンプルファイルをネットで公開している点はどうしても気になってしまいました。


3. 本書内の「ルール」は、必ずしも投資銀行業界で標準化されていない

著者も断り書きをいれていますが、66のルールのうち、著者独自の嗜好（主観）によるものが少なからず含まれています。例えば、「フォントはArial、カジュアル派はメイリオ」、「Excelの行の高さは18pt」という項目などがそうです。
個人的嗜好のお話と、投資銀行の現場で世界的に順守されているルール群を一般の人が区別できないように混ぜて編集をしている点で、誠実性に欠ける印象をもちました。