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投稿者:kyon - この投稿者のレビュー一覧を見る
題名にインパクトがあって、読んでみた。
一国の宰相という名において、孔子が憧れていた存在であったのは知らなかったが。
揺れ動く春秋時代のセツナ、立たされた微妙な国の有りよう・・・バランスを保ち荒波をのりきり、国が残る術を模索しつつ、礼を持って天の采配に奢らぬように考え抜き、国難をのり超えていく・・・・その頭脳を持ちながら、と誠実な人柄、優れた手腕に先ず驚く。
宮城野昌光氏の本は中々に今の時代も見据えて達観した世界を描き出している。読後感が充実。
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春秋時代、鄭の宰相を勤めた「子産」を書いた作品なり。
鄭は二大国にはさまれた国で、やむを得ず二面外交を行い国の信用は地に落ち国民は疲れ国力は落ちるばかりでしたなり。そんな中で子産は宰相になり二大国に停戦を行わせ平和をもたらしたなり。国内においては法律を明文化し住み易い国に作り変えたなり。ちなみに孔子が最も尊敬した政治家が子産だそうなり。
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下巻は子産の物語。彼の言葉が様々な人の心にしみこんで行く。彼の言葉ではなく彼が引用した言葉だが、印象に残った言葉は、
「軽ければ謀少なく、驕れば礼なし
礼なければ脱し、謀少なければみずから陥る」
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宮城谷が子産に言わせた言葉の中で、私が一番好きな言葉は『軽と驕をいましめよ』という言葉だ。いましめるというのは排除することではない。子産自身、ずば抜けて沈毅な人物として描かれていながら、時には野におり、賢人と自然の中で語らう時を求めたりと軽やかで爽やかな心の側面も見せてくれる。軽軽しい決断と勇気ある即断は違うということ、上を目指す人間の足もとをすくうのは、まさにこの二つの要因であることを改めて考えさせられる言葉だった。
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宮城谷昌光氏の子産・下巻。
父の子国との別れ。子馬四の生き残りを賭けた外交戦略の有り様。子産がどういう政治改革を行ったか。子産は「礼」をどういう風にとらえていたのか・・・。それらを力強く、読みやすく書いてありました。
上巻でもそうでしたが、現代の「礼」って何なんだろう? と再度考えさせられた本でした。
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「沙中の回廊」を読むと士会が好きになり、こちらを読むと子産が好きになり・・・・。
でも本当にすきなのは孟嘗君に樂毅です(笑)
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春秋時代随一の知識人と言われた子産のお話後編。本人に話題が移ってくる。
・政治とは行動ばかりではない。行動しないということも説明する。子シの政治はわかりにくい。彼は大衆への説明を省き、時に沈黙した。為政者の沈黙は行動停止にあたる。どれほど彼が多忙であってもそれは政治の荒怠とみなされる。かれのありようは、下から見ていると昏さのなかでくるくると所在を変えているように感じられたであろう。
・才徳のある者をひそかに逃がした者と、幽閉したもの。人格の高低はあきらかである。
・君と臣、臣と臣の間に調和がない時は、君主はみだりに動くべきではない
・おのれの不安をテイ君の朝見によって消そうとしているあやまちに気づいたのである
・伯有の横恣をゆるさぬ力をテイがもっていればよいが、そうでなければ伯有の横恣がテイという国の相貌となり他国に迷惑をかけ、結局諸侯に非難されて武力によって国の不敬がただされることになる
・威を用いて人々の議論を急止させることはできるが、それはまるで川をせき止めるようなもので、大きく決壊すればはなはだしく人々に害をおよぼす。
・自分たちでは言えないことを子産に言わせて諷諫をきどった。それだけ晋の執政者の質が低下したとみるべきである
・政治を行うには、真意に反して人民にこびることをせねばならぬときがある。媚びなければ、信じてもらえず、信じてもらえなければ、民は従ってくれぬ
・徳のある者だけが寛大なやり方で民を服従させることができる。次善のやり方はきびしくすることである。火は烈しいので民は遠くから眺めて畏れる。それゆえ、焼死する者はすくない。ところが水は惰弱であるから民はそれになれてもてあそぶ。すると水死者が多く出る。であるから、寛大な政治は難しいのだ
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ここの所、暫く宮城谷の作品を読んできているが、この子産は、いささか筆が重い感じで、読むのにスムーズに進んでいかない。このシリーズ上下で随分時間を取ってしまった。それも、何か読んでいて引き込まれるものが無く、主人公がいつまで経っても、作品中で輝いて活き活きしてこないことが原因だと思い至った。教訓的な話が多く、理屈が先に立って、心に迫る膝を打つ話が無いために、子産の素晴らしさが伝わってこないのです。結果的に私にとっては、この作品は失敗なのかも知れません。ちょっと宮城谷に作品を読むのはお休みして、司馬遼太郎氏の世界に遊ぶことにしましょうか?!
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下巻から子産の物語が本格的に始まります。
鄭という国は小さい国であり、
その執政の名前は有名ではありません。
子産本人よりも孔子が尊敬した人だから、
すばらしい人物というのが一般的ではないでしょうか?
私も韓非子や孔子の中の話で少しだけ出てきたため、
子産という名前だけは知っていました。
子産の筋の通った生き方が礼に通じ、
国を改革し、平和をもたらし、民を豊かにする。
今の時代にいない国を司る人です。
もっと早く子産を読んでいたらと思いました。
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独裁者◆貴門の明暗◆大夫の時代◆仇敵◆政変◆廟堂の器◆草の思い◆和と争◆宰相の席◆礼の宇宙
第35回吉川英治文学賞
著者:宮城谷昌光(1945-、蒲郡市、小説家)
解説:清原康正(1945-、中国遼寧省、文芸評論家)
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2013年07月 06/40
「礼」をもった政治を行った春秋時代の鄭の宰相「子産」のお話。「湖底の城」を読んでいたら、もう少しあのあたりの時代が読みたくなってそのままの流れで読みました。家の本棚にまだ残っているので、しばらくは春秋戦国時代を攻めようと思います。
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[ 内容 ]
<上>
信義なき世をいかに生きるか―春秋時代中期、小国鄭は晋と楚の二大国間で向背をくりかえし、民は疲弊し国は誇りを失いつつあった。
戦乱の鄭であざやかな武徳をしめす名将子国と、その嫡子で孔子に敬仰された最高の知識人子産。
二代にわたる勇気と徳の生涯を謳いあげる歴史叙事詩。
吉川英治文学賞受賞作。
<下>
謀叛に巻きこまれ、子国は果てる。
三年の長きにわたり喪に服した子産はその後、苛烈なる改革者にして情意あふれる恵人として、人を活かす礼とは何かを極め、鄭と運命をともにしていく。
時代を超えることばをもった最初の人・子産とその時代を、比類なき風格と凛然たる文体で描く、宮城谷文学の傑作長編。
[ 目次 ]
<上>
<下>
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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父・子国が凶刃に倒れ、子産はその振る舞いでこの苦難を乗り越えてゆく。
執政として改革を断行し、鄭国に安寧をもたらした子産は素晴らしいですね。
上下巻通しての感想は、子産が素晴らしいのはもちろんのこと、彼を取り巻く人々に賢人が多くいたのも幸運かな、と。時代も彼に味方していたか。ともあれ、楽しく読みました。
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上下巻合わせてのレビュー。
子産。
鄭國の執政で孔子に敬愛された人物でありながら、その功績のあり方は不遇であった。
鄭國がのちに滅んだことも影響しているのか不明であるが、とにかく、子産は不遇であると感じていた。
その人物を『春秋左氏伝』の記述からここまで描くとは凄まじいと感じた。
歴史的な意義をもつ人間をもっと多くの人に知ってもらいたい。
宮城谷さんの文章は読みやすく躍動感にあふれている。
しかし、『晏子』を読んだあとであったからか、やや物足りないと感じてしまった。
もう一度読めば印象は変わるだろうか。
また読みたい。
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下巻では、子産の父の子国が陰謀に巻き込まれて殺害され、それを収めて家を継ぐ。
位も世代交代とともに執政まで上がり、子展・子皮といった宰相に仕えて軍事・外交・政治で成果を上げ、晋と楚に挟まれて右顧左眄していた鄭の政治に中興をもたらす。
政治姿勢は、礼を重んじ、豊富な有職故実の知識を保ちつつ、前例に流されずに、状況に応じて適切な辞を繰り出す言葉の天才でもあり、孔子が尊敬する二人のうちの一人(もう一人は周公旦)であった。現代風に言えば、人を動かす言葉の達人、ナラティブの達人であったということか。また、子展の死後に、子皮から全権を任されて、農地・兵制改革に従事し、貴族でなく国・公室に一定の力が蓄えられるように制度を見直した改革者でもあった。
同時代人として、斉の晏子、呉の季札がいる。また、孔子が30歳の頃に亡くなったが知己は無かったという。
宮城谷さんが春秋左氏伝から読み解き、本書では一切の架空の人物は出していないという。その分、子産の歴史的意義を正確に伝えているとも言えるが、他の作品と比べて視点が少し引いた三人称的で、歴史小説としての面白さが少し割り引かれている印象を受けた(読み終わるのに時間がかかった)。
しかし、こうした思想を持った人の影響を受けて孔子が登場したということを理解できたのは良かったと思う。