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ほんとうは日本に憧れる中国人
著者 王敏 (著)
「歴史認識」や「靖国問題」など、日本に対して過剰な反応を示す中国人。それらは中国政府による反日教育の賜物であるとみなされてきた。しかし、市場経済化が進んだ中国社会の底辺で...
ほんとうは日本に憧れる中国人
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ほんとうは日本に憧れる中国人 「反日感情」の深層分析 (PHP新書)
商品説明
「歴史認識」や「靖国問題」など、日本に対して過剰な反応を示す中国人。それらは中国政府による反日教育の賜物であるとみなされてきた。しかし、市場経済化が進んだ中国社会の底辺では、まったく違う動きが発生している。若者たちは日本の「モノ」や「食生活」に憧れ、漫画、ゲーム、音楽からファッションまで「日本ブーム」が起きているのだ。おでんやたこやき、ラーメンはいまや中国でも定番、大流行のトレンディ・ドラマは「日劇」と呼ばれ、ベストセラーとなった村上春樹の小説は、若者たちの都市生活の象徴のように言われている。その一方で、教科書問題や靖国参拝に対する若者たちの拒否反応は過激で根強く、事が起こるたびに反日感情が噴出して中国政府も抑えきれないほどなのである。本書は日中交流の歴史や各種統計データをふまえて、中国人の日本観にひそむ愛憎二重性の形成要因を探り、真の日中友好のあり方を問う。
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紙の本
さ迷える中国との関係改善には、まだまだ相当の年数を必要とする。
2005/10/15 22:42
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書を読んでいて不思議に思ったのは、随所に儒教の言葉が出てきたことである。
人民帽、人民服、毛沢東バッジを身にまとい、誇らしげに毛沢東語録を手にしていた新生中国であったものが、いつしか体制は改革解放に向かい、人民の敵であったはずの「小資」が現代中国の都市に誕生しているとは驚きであった。半世紀以上も前に日本とアメリカとで奪い合った巨大な中国市場であるが、再び世界の注目が集まり、大国としてのプライドを維持するために共産主義の代わりに儒教が復活したことには更に驚かされた。
中国に対する日本の侵略行為の謝罪は儒教の考えでは謝罪したことにはならないと著者は言う。しかしながら、その儒教とはなんぞやと自問せざる得ない今の日本人には厳しい追及である。確か、共産主義の中国との平和条約を締結するにあたり謝罪したのに、そう簡単にころころと教条を変えてもらうと日本としても路頭に迷ってしまうのが実情ではないだろうか。
日本に憧れる中国の青少年が多数居ると著者は言う。
しかし、日本の実情が中国の青少年に本当に伝わっているとは俄かに信じがたい。1万人とはいえ「反日」のデモ隊が日本の領事館を襲っている様が報道され、北京でのサッカーの試合後に日本の領事の車両を襲撃する若者がいるニュースを見ると、実態はどうなのだろうと思ってしまう。
重慶でのサッカーの試合の翌日だったか、日本の資金と技術で重慶でのモノレール運行が始まったが、こういった事実に中国の若者は矛盾を感じないのだろうかと思ってしまう。閉塞的な政治体制の憂さ晴らしに日本を標的にしているのなら、それを傍観する北京政府は世界の笑いものでしかなく、中国はアジアの悪ガキでしかない。
日本のアニメやゲームに憧れる青少年の姿、北京の屋台で売られているタコヤキが紹介され、中国はこれだけ日本を理解しようとしているのにといった論調で本書は始まったが、儒教社会の中国では日本人はまだまだといわれても、いつから日本は中国の属国になったのかなと疑ってしまう。青少年のおこちゃまレベルで日本を理解していると言われても日本にとっては大層迷惑な話である。
軍の意向にそぐわなければたとえ国家主席といえども権力を剥奪される中国である。著者のいう儒教という言葉を軍という言葉に重ねれば、この国の権力構造が理解できるのではないか。
中国は日本の侵略行為や靖国参拝をあげつらうが、しからば中国のチベットへの侵略行為や虐殺、潜水艦や測量船による日本領海の侵犯行為はどうなのか。などなど、言い出したらきりがない。
こう言えばああ言う、ああ言えばこう言うの繰り返しというのが今の日中関係ではなかろうか。
東シナ海ガス田開発問題をも視野に入れて欧米がこの日中の騒動を遠巻きに眺めているのだが、再びこの漁夫にアジアを荒らされたらたまったものではない。ここは互いに賢く付き合っていくしかないが、経済という札束で中国の面を張り倒す行いをしてはならないと思うし、銃口で中国市場を制圧しようとした愚行を繰り返してはならないのも確かである。
アメリカの覇権主義をアジアで展開させないためにも、日中双方で国としての対等な安定平和の道を探るべきではないかと考えるが、その姿勢が見えて初めて日本に対する真の憧れが中国人の中に生まれるのではないかと思う。
だが、まだまだ道は遠しだろう。