紙の本
『氷川清話』の続編として。
2011/07/03 01:26
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
勝海舟を知るには『氷川清話』を読んでおかなければならないが、その『氷川清話』をより面白く理解するに適した一冊である。『氷川清話』には当時の政権批判を意図的に削除しているので、背景が不明な場合が多い。その海舟の真意を知るには当時の状況を事前学習しなければならないが、薩長政府主導の歴史観が優先されているので、海舟の言わんとする真意はわからない。
本書はその海舟の立場から、海舟が言いたいことを述べている。薩長藩閥の歴史観や歴史小説からすれば「それはどうなのだろう」と言いたくなる場面もあるが、歴史は両面からみなければ真実ではない。それを考えると、海舟の立場から歴史を振り返るのも一興である。
この中で、やはり、海舟らしいなあと思うのは主君徳川慶喜と心の友とも言うべき西郷隆盛の逆族の汚名返上に苦心していたことだろう。
これを読むと、今度、海舟の墓参りかたがた、隣にあるという西郷どんの碑を見に行きたくなった。
紙の本
イマイチでした。
2021/09/30 18:20
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まなぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
■歴史的史実に基づいた話を期待していたのですが、どうもそうではなく、勝海舟にまつわる、筆者の思いというか、エッセイという気がします。
■史実を重視し、それを踏まえると、読み物としてはおもしろくなくなるというのはわかるのですが、史実を期待していた私としては、がっかりで、途中から、読む気をなくしました。
投稿元:
レビューを見る
解説にもあるとおり、著者というのは作品内に普通自分の主観を入れないようにするものだけど半藤氏はこの本の中では敢えてそれをしている。著者の〜贔屓、というのがあからさまに反映されている本が許せない人には全く読めない本だと思うが、この本はそれがあってより面白いものとなっている気がする。以前から「行蔵は我に存す、毀誉は他人の主張」な勝海舟が好きだったけどますます好きになった。やっぱり先見の明を持っていた幕末の偉人の一人だと思う。
投稿元:
レビューを見る
「行蔵は我に存す、毀誉は他人の主張、我に与らず我に関せずと存候。」どうでい!福沢よ!
勝海舟の、江戸城無血開城後は「氷川清和」に詳しくその心中が語られていますが、半藤先生の勝論、また未だ未読であるじいさんの日記等から意外と内に秘めるタイプであったじいさんの姿を感じ取りました。他資料とつなぎ合わせて浮き出てくるその情景、また勝のセリフ。男気に、また新しい勝像を頂いた気分です。半藤先生の勝っつぁん大好き!も微笑ましく読みました。
壬生義士伝に「徳川の殿軍おつとめもっす」という吉村のセリフが出てきます。勝海舟のその後の人生は、まさに「徳川の殿、の殿、の殿」ともいえるものだなあ!御家人たちの仕事の世話、お金の世話、住居の世話、はたまた忠誠心のやり場の世話。勝が新政府に送り込んだエリートたちは後の明治政府、特に軍内でその基礎を作ることに奔走します。太平洋戦争史をあわせて読むと、開戦強行派、外交による調和派は、多くが元官軍、元賊軍に分けられると言います。勝じいさんもまた、日清戦争、支那国に対して軽蔑を送る世論に大いに反発、警告する。そう、警告。まさにこのままそんなこと言って支那と戦を続ければ、欧米から非難を浴びて国際的に孤立するヨ。それで今度は欧米と戦でもする気かね。国が滅びちまうよ。と言う警告です。じいさん、すげえ!!かつて江戸で市民の血を流すことなく戦を終わらせた慧眼を持つ勝海舟にしてみれば、猛進猪野郎どもの馬鹿さ加減が、氷川の隠居宅からよくよく見えていたんだろうなあ〜!。
世の人が何を言ったって、自分のなすことは自分にしか分からない。また世の人が何を言うかなんて、俺は知らないヨ。
それでも最後の最後、殿を勤め上げた海舟の、奔放する姿、愛おしく、また頭の下がる想いです。
投稿元:
レビューを見る
「それ」とは勝海舟と西郷隆盛の江戸開城を示す。官軍嫌いで、勝海舟をこよなく愛する筆者が、勝海舟の明治時代の足跡を著す。海舟と西郷の信頼関係、徳川慶喜の海舟の心遣いに対する感涙、福澤諭吉の海舟嫌いなど、面白いエピソードが多いが、若干偏りすぎている感じもある。
投稿元:
レビューを見る
「それから」とは江戸城無血開城。維新後も旧幕臣のため、陰に日に働いた海舟の後半生を描いた評伝です。
裏で働きかけるといっても、海舟のそれは黒幕というような後ろ暗いイメージではないような。「たくさんの人と日頃から仲良くするのがお仕事」という、まさしく私の憧れるところのフィクサー。
福沢諭吉等には後々批判もされたようなんですけど、そういえば私の知ってるあるいは尊敬している人たちはみんな海舟派だなあ。
ところで作者の半藤一利って方、私は「昭和史」を書いた人としか知らなくて、すごくすごく偉い人だと思っていたんですけど(いや、もちろんとても偉い作家さんなんですけど)この本を読んだ感じでは、海舟を贔屓に引き倒しな、お調子者のおじさんでした(笑)
時間がとれなくてなかなか読み終われなかったけれども楽しい本でした。
投稿元:
レビューを見る
「本所の勝麟」ぶらぶら記
苦心惨憺の“その日”まで
「虎穴に入らずんば」の横浜行
空しくなった最後の大芝居
静岡‐東京行ったり来たり
ふたたび西郷どんとともに
政府高官はもう真ッ平
「薩摩軍が勝つよ」
逆賊の汚名返上のため
野に吼える「氷川の隠居」
「文学は大嫌いだよ」
「我が行蔵」と「痩我慢」
誰が知る「あひるの水かき」
洗足池の墓詣で
著者:半藤一利(1930-、東京都、作家)
投稿元:
レビューを見る
西郷隆盛との会談により、江戸城無血開城という一世一代の大仕事を成し遂げた勝海舟の、その後の生き方にスポットを当てた評伝です。事実を淡々と記述するのではなく、薩長嫌いを公言する著者が、海舟贔屓を前面に打ち出して、その江戸っ子らしい啖呵にエールを送っています。
海舟と榎本武明を批判した、福沢諭吉の「痩我慢の説」に対しては、海舟擁護の論陣を張り、さらに若い頃に慶応義塾の熟長だった小泉信三に議論をふっかけて不興を買ったエピソードなども語られています。
日本国のため、江戸城無血開城を実現した海舟が、明治の世になっても、日本のために「あひるの水かき」を続けてきたことを知ることができ、興味深く読みました。
投稿元:
レビューを見る
江戸城開城から、あんまり有名じゃないと思われるその後の勝海舟の話。
勝海舟について僕が知らない時代のことを書いているので買って、実際読んでみて「なるほどそんなことあったんだ」と。
完全に「勝びいき」の本だけど、そこまで嫌味には感じなくて、親愛の気持ちで書かれている感じなので、勝海舟に興味があればおもしろい本だと思う。
投稿元:
レビューを見る
明治維新後の勝海舟の姿を知る事ができる1冊です。政府の要職につかず徳川慶喜の名誉回復に駆け回りながらも、奥さんからは墓を一緒にするなと言われる姿。薩長史観の逆から海舟を通して明治初期を知る事ができます
投稿元:
レビューを見る
天下動乱のとき、人々が難を恐れ策に窮して誰もその護に当たろうとしないとき、勝は百難を恐れずに身を挺したのである。もちろん旧幕府の首相兼外相兼陸相として、西軍側と交渉しなければならない立場におかれたゆえといえば、それまでではあるが、決して逃げようとはしなかった。しかもその首尾一貫してとった方策が西欧列強の代理戦争としての内戦を避けることで、それを押し通したことは見事であった。(p.322)
好みが分かれて掴みにくい人物であるけどやはり凄い人だ。維新以後の勝海舟のことが分かる良書。
投稿元:
レビューを見る
それから、つまり明治維新後の勝海舟の過ごし方に焦点をあてた、半藤ならではの書籍。幅広い調査に基づいて著されたことが分かる。
よく言われているように、ブラブラしていたらしいが、維新後は政治に深く関わらず、客観的な立場を貫いたのは、なかなかに大変だったんだろうと思う。そのようにして、いわゆる余生を暮らす、というのは難しい事業だったろう。
投稿元:
レビューを見る
勝海舟という人物について、あまり知識を持っていなかったが、ようやっとその偉大さがわかった。江戸城無血開城は大手柄。しかし、それでも戊辰戦争を防げなかったところにこの国の問題があるということがわかる。
投稿元:
レビューを見る
「半藤一利」が「勝海舟」について語った歴史エッセイ『それからの海舟』を読みました。
「半藤一利」作品は、1月に読んだ『漱石先生大いに笑う』以来ですね。
-----story-------------
此の作品ほんたうに面白いですよ。(解説「阿川弘之」)
幕末の動乱期の中、幕臣の中心として江戸城無血開城という大仕事を成し遂げた後の人生を「勝海舟」はどう生きたのか。
新旧相撃つ中で旧幕臣たちの生計をたてる道を探り、「福沢諭吉」らの批判を受けながらも明治政府の内部に入り、旧幕府勢力の代弁者としての発言力を確保して「徳川慶喜」と「明治天皇」の会見を実現。
また一方では逆賊とされた盟友「西郷隆盛」の名誉回復に尽力した「海舟」の後半生に光を当てた名評伝。
-----------------------
歴史探偵「半藤一利」が、「勝海舟」の江戸城無血開城に向けた「西郷隆盛」との会談後の"それから"をテーマにした作品… 明治という波瀾万丈の時代を背景に「勝海舟」という傑出した人物の魅力を描いた作品です。
■プロローグ 「本所の勝麟」ぶらぶら記
■第一章 苦心惨憺の“その日”まで
■第二章 「虎穴に入らずんば」の横浜行
■第三章 空しくなった最後の大芝居
■第四章 静岡‐東京行ったり来たり
■第五章 ふたたび西郷どんとともに
■第六章 政府高官はもう真ッ平
■第七章 「薩摩軍が勝つよ」
■第八章 逆賊の汚名返上のため
■第九章 野に吼える「氷川の隠居」
■第十章 「文学は大嫌いだよ」
■第十一章 「我が行蔵」と「痩我慢」
■第十二章 誰が知る「あひるの水かき」
■エピローグ 洗足池の墓詣で
■あとがき
■解説 頑固な下町っ子風 阿川弘之
「勝海舟」って、人物については、歴史の勉強の中で、あまり興味を惹かなかったので、詳しく知らなかったのですが… 本作品を読んで、魅力的な人物だったことを知ることができました、、、
きめ細かな水面下での根回し、地味な工作のうえで「西郷隆盛」との会談を行い、江戸城無血開城を成し遂げ「徳川慶喜」の命を救い、明治維新後も、静岡の一大名となった「徳川家」の旧臣を食べさせるために尽力… 一貫して「徳川家」のため、そしてかつての殿様である「徳川慶喜」や、逆賊となってしまった「西郷隆盛」の名誉回復に尽くす姿に感銘を受けるとともに、世の中のことをよく知り、先見性のある判断をしていたことに驚きましたね。
特に、欧米諸国の列強に立ち向かうには、中国(当時の清)や朝鮮とは争そうのではなく、協調すべきと、当時から考えていたことには感心しました、、、
残念がら、結果的には日清戦争が勃発し、日本は戦勝国となったものの、三国干渉により中国領土の一部はロシア、フランス、イギリス、ドイツに奪われることになっちゃうんですよね… そこまでも予見したように思います。
あと印象に残ったのは「伊藤博文」のことを批判した言葉、、、
「政治家の秘訣は他に何もない。
ただた正心誠意の4文字。
伊藤さんはわずか4千万の人心を収攬することもできないのはもちろん、
いつも列国のために恥辱を受けて独立国の体面をさえ全うすることが出来ないとはいかにも歯がゆいではないか。
つまり伊藤さんはこの秘訣を知らないんだよ。」
現在の政治家にも聞かせてあげたいな。
幕末~明治中期までの歴史観が、自分の中で変化した一冊でした。
投稿元:
レビューを見る
歴史探偵と言いながら筆者が内容に出しゃばりすぎ。よくわからない依怙贔屓を老人の談話みたいに普通に出してくるのでかえって勝に嫌な印象が出た。淡々と書いて欲しい。(別の筆者のものを読めということなんだろうけど)慶喜の方が面白かった。