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大菩薩峠(20)
著者 中里介山 (著)
福井城下で福松と別れた兵馬は長浜に戻り、竜之助、お雪の名を記す卒塔婆に出会い、胆吹では廃墟と化した王国を前に立ちすくむ。その王国を見限ったお銀様は、京山科で再び巨大な財力...
大菩薩峠(20)
大菩薩峠 20 (ちくま文庫)
商品説明
福井城下で福松と別れた兵馬は長浜に戻り、竜之助、お雪の名を記す卒塔婆に出会い、胆吹では廃墟と化した王国を前に立ちすくむ。その王国を見限ったお銀様は、京山科で再び巨大な財力を背景にした新たな計画を企てていた。一方、竜之助は新撰組の一派と過ごしたのち、寂光院の尼僧のもとに寄宿する。駒井らの船は椰子林がある無人島へ到着、新生活の建設に着手する。また与八は、子供たちの教育や荒地開拓に情熱を傾けていた……。「山科の巻」「椰子林の巻」を収録し、完結。
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紙の本
未完は永遠につながる。
2002/07/07 16:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
壮大な大菩薩峠も、ついにこれで最終巻。介山はこの作品を完結させずして逝ってしまい、ついに壮大な物語は、永遠に完結せぬ本物の壮大な物語となってしまった。前巻から軌道修正が施され、いよいよまとめにかかっていたかと思われるだけに残念である。内容は自由度が高いが、とにかく登場人物が多く物語も錯綜している。執筆メモのようなものは残っていないようだが、割と筆の赴くままに書いていたのだろうか。緻密に書こうとすると大変だが、介山は逆に気楽に書いていたのだろうか。メモが無いことによってその後の動きを知ることが出来ないのは残念である。今巻を読んでみると、大体終りに近付いていたのではないかということは想像される。
読者の熱狂に押され、恐らく介山自身想像しなかったほどに長くなったこの物語は、当初からは想像もつかなかった方向へ進み、膨張していった。始めの頃こそ普通の時代小説と言えなくも無かったが、全巻読んでしまうと、とても時代小説という一言で区切ることは出来ない。
最終巻である今巻は、介山個人の思想が色濃く投影され過ぎて、小説としては決して良い出来とは言えない。それは大菩薩峠という作品全体においても言えることだろう。だが、大菩薩峠は小説と言う枠に収まること自体が不可能なのである。
この作品を読み解くに当たっては、介山の思想や生い立ち、執筆時の社会的背景などを熟知することも必須であろう。私は大菩薩峠を読み終えたことに満足せず、これをスタートとして大菩薩峠の研究を進めてゆこうと思う。さながら大菩薩峠のように果てしの無い旅だ。
壮大なだけあって、この作品を読み切った人はあまりいないかもしれないが、絶対的に面白いし、読んで損は無い。私は大菩薩峠を読んで良かったと思うし、もし読まずに一生を終えていたらと想像すると、暗澹たる気分になる。