ひみつさんとカエルのかんたろう

　おら、びっくらこいた、おったまげた……伊那谷の貧しい教会に住みついた蛙が物語る、牧師の卵、ひみつさんの愉快で胸のすく活躍です。
　あなたの胸にさわやかな風が吹き渡るでしょう。

　第五回伊那谷童話大賞の佳作を受賞したこの「ひみつさんとカエルのかんたろう」は、「林博子のめるへん・ＢＯＸ」に収められています。七十余年の人生を歩んできた著者の珠玉の短編集も、どうぞご覧ください。
　長野県塩尻市に生まれ、育った著者は、信州を舞台にした作品で第七回伊那谷童話大賞を受賞しています。また現在住んでいる鎌倉を題材した作品も数多くあります。
　信州の山、鎌倉の海──自然描写や季節感にあふれた文章に、電子書籍ならではの挿絵をつけました。登場する〈めるへん〉の動物たちはケシゴムスタンプです。現実の江ノ電や湘南の海の写真の中に合成されたカニやアシカやサメのとぼけた表情をお楽しみください。
　晩春から夏にかけての物語を集めました。「サクラ」「トモキとトモコ」「電車は、潮風の中を」「ママの海で聴いた歌」の五編です。
　ママの死から始まる「サクラ」を巻頭に、出産を幻視する「ママの海で聴いた歌」を巻末にした死から生への物語は、あなたに贈る人生へのエールです。