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可愛いエミリー
「勇気を持って生きなさい。世の中は愛でいっぱいだ」。最愛の父の遺した言葉を胸に、みなし子になったエミリーはニュー・ムーン農場に引きとられた。孤独で夢見がちな彼女は、伯父伯...
可愛いエミリー
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可愛いエミリー (新潮文庫 モ-4-13)
商品説明
「勇気を持って生きなさい。世の中は愛でいっぱいだ」。最愛の父の遺した言葉を胸に、みなし子になったエミリーはニュー・ムーン農場に引きとられた。孤独で夢見がちな彼女は、伯父伯母から変わった子供だと言われながらも、書くことに熱中し、詩人か小説家になろうと決心する。著者は『赤毛のアン』シリーズで親しまれているが、より自伝的だとされるエミリー・シリーズの第一作。
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紙の本
人間関係を楽しむ方法を教えます
2003/09/24 21:30
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ガブリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本を手に取るのは何歳の頃だろうか?
エミリー・ブックと呼ばれるこのシリーズが本当に意味を持つのは大人になってからであると思う。アン・シリーズがモンゴメリーの表の顔とすればエミリー・シリーズは裏の顔である。この本の中に潜む奥深さを小学生や中学生に理解できるとは思えない。
エミリー・シリーズの第一作「可愛いエミリー」(原題 Emily of New Moon)は父を亡くしたエミリーが母の実家である伝統あるニュー・ムーン農場に引き取られ、成長していく過程を書いている。
文庫版で500頁に及ぶエミリーの幼少期は初めて読むときには長くて退屈なものにみえるかもしれない。しかし、これは自伝なのだ。エミリー(=モンゴメリー)の魂がどのように形作られたのかを知るためにはこの一巻が不可欠なのである。その証拠に最後の三巻を読み終えたとき必ず第一巻の始まりからまたエミリーの成長の秘密を辿りたくなることだろう。
一巻目では書くことに目覚めているとはいえまだ幼く自分のオリジナルを持っていなかったエミリーだったが二巻目では言葉の端はしに鋭いきらめきを見せ始める。
尊敬する先生から想像力を抑制して平凡な生活に範囲を限って書きなさいと言われたエミリーの返答は「平凡な人生なんてものはないわ」である。
教条的に言われるとこれほどつまらない言葉もないが、ある程度の年齢になって振り返ってみればこれほど深い言葉もない。
三巻目は前の二冊に比べると短く(とはいっても300頁)描写もあっさりしているように見えるが、この巻は深い苦悩に満ちているように思える。
作者の近況に近づいたためだろうか、創作の苦しみ、人生の苦しみが抑制の効いた筆致でつづられている。
アンと比べてみると、エミリーは「百人もの先祖を持つ人間は自由になどなれない」ことを知り、言葉少なく思慮深くならざるを得ない人間だ。
アンは孤児ながら素直で闊達であり人生においての希望と幸福を最後まで信じる人間である。キャラクターが違うといってしまえばそれまでだが、エミリーのおじのジミーさんの言葉を借りれば、「どうしてできるんだろう? どうしてできるんだろう! あの話の中の人々は生きている」その創作上の秘密はこのエミリー・ブックの中にあるのだと思う。その秘密に近づきたいがために時をおいても何度もこの本を読み返したくなるのだ。
人生を知らなければエミリー・シリーズを真に楽しむことは出来ないと思う。
迷い惑ったあとの人にこそ読んでもらいたい本である。