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奇抜な着想と幻想的な雰囲気と詩的な文体と主人公の心情や思惑がジワッと滲み出る会話や行動の記述が相まって読中読後にえも言われぬ感慨を与えてくれる作品が多かった。
「霧笛」、「目に見えぬ少年」、「二度とみえない」、「発電所」、「日と影」、「草地」、「歓迎と別離」が特にジワジワと心に響いた。
今後、何度も読み直す短編集がまたひとつ増えた。
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レイ・ブラッドベリって、寂しい話を書く人だなぁと思っていたけれども、掌編集を読んでみると、その方向性がより際立って感じられた。望むも望まざるにも関わらず、みんな孤独で諦念と焦燥で風邪をこじらせているような、そんな印象を持った。
SFの抒情詩人と言われるけれども、多分それは今からするとかなり古典的な文才だからだと思う。ブラッドベリはテクノロジーに興味はなかったのではないかなぁ。寓話的な物語を飾るための、SFという衣装のように感じられた。というのも、表題の『太陽の黄金の林檎』よりも、サイエンス的な要素の薄い『霧笛』や『目に見えぬ少年』のような話のほうがテンションの高さを感じるからだ。
私の一番気に入った作品は『黒白対抗戦』で、これまたSF的な要素はないのだけれど、世界が一瞬で変わるのを、こんなに鮮やかに書ける作家はそんなにいないなぁと思った。
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表題作、太陽の黄金の林檎は、物語としてはニ流。粗筋だけ聞かされてもなんのことやらだろう。
ただし、表現と描写が卓越している。これはかなりの力業で、レイ・ブラッドペリだから書けた作品。なので、表題作なんだろう。
はしばしから奇妙な味がする。
頑固親父の主張が通る、という話が数編。結構面白くて中々痛快。
解説が2006年となっていて、どういうことだと思って見ると、この本が2006年出版の同作の新装版。
いくら追悼とは言え、2006年出版の本の新装版を出さなくてもよかったんじゃ?
瞬きよりも速くにはない、各話の扉絵に味がある
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素晴らしい。
何という美しさ、何という陰鬱さ。
収録作品の中でも圧倒的に知られていると思われる「霧笛」。声高に作品テーマを語ることのないブラッドベリにしては珍しい、込められた寓意を明確に文章で説明している、ある意味「わかりやすい」作品です。が、だからと言って物語が陳腐化しないのがブラッドベリの底力。最後まで静かな余韻を残す、短いけれど心に残る作品です。
「サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)」も印象的でしたね。フツーのSF作家であれば、タイム・パラドックスが起こった後にどう収拾を付けるのか?という点を前面に押し出して一大スペクタクル巨編を書くぞ!ぐらい考えてもおかしくはないのに、ブラッドベリはタイム・パラドックスの起因となった男の愚かしさ、そして彼を取り巻く状況の不穏さを丁寧に執拗に描き出すことによって、一つの作品を紡ぎ上げます。ブラッドベリにとって重要なのは、論理的な落とし前の付け方ではなく、その瞬間の印象深さや肌触りといったものなんでしょうね。
E・A・ポーを彷彿とさせる心理ホラー「鉢の底の果物」、思春期の少女特有の底知れぬ残酷さを描き出して余りある「四月の魔女」、人間がここまで愚かになれることを端的に表現した「山のあなたに」・・・どれもこれも美しく、艶やかで、そして残酷な作品ばかりです。最後に収められた表題作の、ウィットに富んだオチも素晴らしいですね。
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サウンド・オブ・サンダーの原作らしいっていうのをきいて、読みたかったんですが、丁度新装版が出たってことで購入。
作者の方の追悼本だったんですね。
取り敢えず読みたかったサウンド・オブ・サンダーだけ読んだんですが、短いけど面白かった~これいつ執筆なんだろう。全22篇らしいので、短いしちまちま読もうと思います。これのタイトルの話も気になる。太陽を取りに行く話……。
映画とは全然話が違うんですが(未来が変わったきっかけと、タイムトラベルサービスについてと、タイムトラベルのリスクについて、かな映画に反映されてるのは)これはこれで。トラヴィスがすごく激しい性格というか。
正直すっきりする終わり方ではないのですが、星新一ショートショートとか、そんな感じに近いかも。他の話もそうなんでしょうか。
そして映画をまた見たくなった……合成とかちゃちいんですけど、なんか好きです。
そういえば映画見た時は思わなかったけど、これきっかけが蝶なのは、バタフライエフェクトか。
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「サウンド・オブ・サンダー」が示す過去から現在、そして未来への小さく大きな繋がりは、SFの設定というだけでなく自分という小さくもかけがえのない存在を確認できる。
「金の凧、銀の風」では他者と競うだけでは互いに疲弊し、調和する事に気付かなければ訪れる「ぬいとり」の終末も思いおこされる。
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幻想的な作品が多い、良質の短編集でした。それぞれの話が固有のトーンを持っていて、退屈することなく22編を味わうことができました。レイ・ブラッドベリは初めて読んだのだけど、世界観は理解しやすく、描写は美しくて好きな作家になりました。
特に好きだった作品は「霧笛」「四月の魔女」「目に見えぬ少年」「二度と見えない」「サウンド・オブ・サンダー」です。表題作は、完成度が高いというよりは、彼の作風がよく現れているという点で優れた作品だと思います。
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実家にあって、昔よく読んだ本。30年ぶりくらいのご対面となる。まったく記憶になかった作品も読み進むうちに思い出されてきて、子どもの頃の自分に出会ったような気分になった。
はっきり覚えていたのは「サウンド・オブ・サンダー」と「金の凧・銀の風」。ストーリーがはっきりしていて小学生にもわかりやすく、印象的だった。全体にストーリー以外のところに魅力がある作品が多く、当時はこの思想や余韻を味わいつくすことはできなかっただろうと思う。
「歓迎と別離」は、12歳の外見のまま歳をとらない男の話。これ、高橋留美子は読んでるかな?
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2013/03/08/Fri.〜04/12/Fri.
「霧笛」「サウンド・オブ・サンダー(雷のような音)」「太陽の黄金の林檎」は、『ウは宇宙船のウ』(大西尹明 訳/創元SF文庫)にも収録されてた話だね。
「山のあなたに」は滑稽だけど、切なくなるな。
「発電所」。妻の気持ち?体験?なんかわかるかも。
「草地」は、反発し合う夜警の老人とプロデューサーが次第にわかり合っていって、会話の中に優しさを感じた時、ああ良いなと思った。
「ごみ屋」はちょっと切なくて、想像すると凄く怖い。
切ないといえば、「歓迎と別離」も。
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古今東西、ファンタジーとSFの様々な1シーンを切り取った22の短篇集。
『歩行者』『人殺し』『サウンド・オブ・サンダー』『歓迎と別離』が好み。
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散文詩のような「山のあなたに」を読むために購入した一冊。
「四月の魔女」はあまりにも美しいファンタジー。そして本領発揮の本格SFの表題作も感動。
ブラッドベリは言葉の選び方が巧みで物語に引き込まれる。
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不思議な読後感の短篇集。だからなんなんだというお話(自分にはピンと来なかったということ)や、少しお説教臭さを感じるお話もあったり。
その中で気に入ったのは下記タイトル。
・霧笛…”奴はまた百万年も待つだろう”
・四月の魔女…魔女の少女の可愛い恋のお話
・人殺し…わかる。あらゆる音が気に障る時がある。どこに行っても聞きたくもない音楽や放送を聞かされる。人びとがひっきりなしに今の自分を相手に実況する「無線腕時計」はまるでスマホのようだ。
・山のあなたに…字の読めない女性の歓びと哀しみ。字は世界だ。
小笠原豊樹・訳
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一昨年亡くなったレイ・ブラッドベリの短編集。
SFと言うよりは、寓話集のような物語集である。
個人的には、「日と影」、「草地」、「歓迎と別離」などがよかった。
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難しかったー。本当に読むのが難しい本でした(私には合わないかな…)しかし合う会わないは別としていつの間にかのめり込んでしまう作品もありました。気に入っているのは「霧笛」「目に見えぬ少年」「二度とみえない」「サウンド・オブ・サンダー」全体的に正常な異質さ(狂気と特に愛情と悲しみが)がまといついているような感じがしました。ただ、やはり私には(表現が語感が本の中の彼らが)重すぎたようです。
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初めてのブラッドベリ。衝撃的な短編集だった。これまでに触れてきた小説にはない発想と表現がここにあって、新しくキラキラとしたものに触れる喜びを噛み締めながら、宝物のような一編一編を読み進めた。幸せだった。