- 販売開始日: 2011/06/01
- 出版社: 新潮社
- ISBN:978-4-10-200301-5
ジーキル博士とハイド氏
著者 ロバートLスティーヴンソン , 田中西二郎(訳)
医学、法学の博士号を持つ高潔な紳士ジーキルの家に、いつのころからかハイドと名乗る醜悪な容貌の小男が出入りするようになった。ハイドは殺人事件まで引起す邪悪な性格の持主だった...
ジーキル博士とハイド氏
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商品説明
医学、法学の博士号を持つ高潔な紳士ジーキルの家に、いつのころからかハイドと名乗る醜悪な容貌の小男が出入りするようになった。ハイドは殺人事件まで引起す邪悪な性格の持主だったが、実は彼は薬によって姿を変えたジーキル博士その人だった――。人間の心にひそむ善と悪の闘いを二人の人物に象徴させ、“二重人格”の代名詞として今なお名高い怪奇小説の傑作。
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理性VS悪徳
2011/01/27 21:49
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BH惺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルとおおまかな内容は漠然と知っていましたが、きちんと読んでみると、自分が思っていた部分と若干相違がありました。
まず、ジーキルからハイドに変身する時って、薬品が用いられていたんですね。知りませんでした。どちらかの意志で簡単に変身できるものだとばかり思っていたので。
その薬品が容易に調達出来た頃までは善と悪、二人の入れ替えはスムーズに行われていたけれど、それが次第に困難になるにしたがってジーキル博士の精神の均衡は崩壊してゆく……それはすなわち、悪の権化であるハイドの力が強力になり、人格が彼に乗っ取られてゆくことを示唆している。
話の展開としてはジーキル博士の長年の親友である弁護士・アタスン視点で語られているところがとても巧いなと。何も知らない第三者の印象として語られるジーキル博士の不可解な行動、ハイドの不気味で謎めいた素性、著名人の殺人事件など。少しばかりミステリー仕立てとなっていて一気に小説世界に引きこまれ、飽きずに読み進めることが出来た。
このハイドというキャラクターが負の魅力全開。まさに悪の権化といった感じで、読んでいて本当に嫌悪感を抱かせる。それがまた巧い具合に仁徳者ジーギルとのコントラストとなっていて、人間ならきっと誰もが持っている裡に秘めた善と悪の二面性を非常に分かりやすく具現化している。
善良なジーキルが次第にハイドに乗っ取られてゆく恐怖。何度悔い改めようと自戒しても悪への誘惑を抑制することが出来ない苦悩。それらジーキルの心情が訥々と語られた最終章「ジーキルの詳細な陳述書」が秀逸。
前半部で語られたジーキルとハイドの不可解な行動の謎が一気に明かされてゆく展開が一気に読ませます。
人格者であったジーキルの実は強烈な悪への憧れと欲求の吐露。その結果、自ら望んで生み出したハイドの暴走によって自己を乗っ取られるという恐怖と苦悩が読んでいてやるせない。
唯一人格制御可能であった薬品が入手不可能と知るや、落胆しつつも必死にそれを求めるジーキルの姿はあたかも現代の麻薬中毒者のよう。
ハイドに飲み込まれ悪徳の道へ進むか、それとも最後の理性を振り絞ってハイドを死へと導くか。それはジーキルの自殺に他ならないのだけれども。一体ジーキルとハイド、どちらの意志がより強固でどちらの人格が打ち勝つのか?
結果は早々にあっけなくわかってしまうのだけど、沈痛なジーキルの独白ともいえる最終章を読むことによって、さらに感動が増すことは必至です。
BIBLIO HOLICより
二重人格。
2002/07/31 18:30
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:凛珠 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジーキル博士とハイド氏 。紳士と凶暴な男が、実は同一人物であった。多重人格は通常、本来の人格が眠っている間に別の人格が現れるので、本来の人格は他の人格が何をしているのか分からないのだという。だが、ジーキル博士はハイド氏に変身しても、ハイド氏が行った悪行を覚えている。ハイド氏にならぬよう苦悩するジーキル博士……。
小説は進化するものである。名作でも時が経てば稚拙となってしまい、いささか期待はずれな思いをすることはあるだろう。しかし、この作品が書かれた意義は大きい。
古き良き「お話」の持つパワー
2002/02/12 17:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろぐう - この投稿者のレビュー一覧を見る
難を言えば少し古臭いし、テーマの割に分量が少なすぎて食い足りない感じがする。それに、心の中の善と悪の葛藤も表面的で、フロイトなどを読んでいる現代人にとっては稚拙な印象を受ける。しかし、読者を小説の中に引き込ませるパワーというか、作者の「さあ、いまから誰も読んだことのないような不思議なお話を聞かせてやろう」という純真なエネルギーのようなものが感じられて、とてもすがすがしい。これは今のソフィスティケートされた小説に一番欠けているものだと思う。