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琉球独立への道―植民地主義に抗う琉球ナショナリズム
著者 松島泰勝 (著)
小国における脱植民地化過程の比較・実証研究をふまえ、琉球(沖縄)の政治経済的な独立の可能性を研究。琉球の独立を文化・思想面からだけでなく、包括的かつ実証的に再検討し、実現...
琉球独立への道―植民地主義に抗う琉球ナショナリズム
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琉球独立への道 植民地主義に抗う琉球ナショナリズム
商品説明
小国における脱植民地化過程の比較・実証研究をふまえ、琉球(沖縄)の政治経済的な独立の可能性を研究。琉球の独立を文化・思想面からだけでなく、包括的かつ実証的に再検討し、実現可能なロードマップと将来像を提案する。
著者紹介
松島泰勝 (著)
- 略歴
- 1963年琉球・石垣島生まれ。龍谷大学経済学部教授。NPO法人ゆいまーる琉球の自治代表。著書に「沖縄島嶼経済史」「琉球の「自治」」などがある。
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紙の本
琉球と国家
2012/04/21 16:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:24wacky - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は元来が琉球王国というれっきとした国家であった沖縄(琉球)の正当性に依拠し、日本とアメリカ両国の植民地政策におかれた近現代を疑い、自らを琉球の愛国者として位置づけ、日本人との関係性を明確にしたうえで独立への具体的将来像を記す網羅的かつ啓蒙的書である。
わたしは本書でいうところの「琉球人以外の日本人」として、沖縄は独立すべきか否か、独立できるかどうかなどを云々する資格はない。沖縄の人々が独立を望めばすればよいし、望まなければしなければよいだけで、せいぜいジャマトンチューにならないよい気をつけるだけだ。ただ一言いうとすれば、独立するというとき、おのずとそれは独立国家を目指すことを意味するわけで、このとき重要なことは「国家とはなにか?」という認識であり、はたして独立論をいう人たちにそれが認識されているだろうか甚だ疑問であったことだ。
その疑問に本書は答えている。「第5章 琉球ナショナリズムの形成」で著者は、エスニック共同体、ネイション、ナショナリズムについて従来の学説を俯瞰し、琉球ナショナリズムの形成を丁寧に洗い出している。歴史上の領域、神話と歴史的記憶、大衆的・公的な文化、経済・法的義務を共有する特定の名前のある集団がネイションということだが、そのネイションには2つ、国民国家(nation state)と国家なきネイション(stateless nation)があるという。沖縄の場合、琉球王国時代までが前者で1879年以降が後者である。
沖縄(琉球)はなぜネイションが必要か、著者は述べる。「ネイションとして存在することで、さまざまな苦境を互いに励まし合って乗り越え、脱植民地化という目標に向かって、宗主国と戦略的に向き合い、差別や抑圧に屈しないで生きる希望をもつことが可能になる」と。このようなネイションにアイデンティティを抱くことで、現状の植民地的差別構造から「地位の逆転」を約束してくれる。それが琉球ナショナリズムの形成へと導くと。
ここから著者は、日本ナショナリズムを中央が周辺地域を支配する国家権力であるとし、それに対し「国家なきナショナリズム」「マイノリティ・ナショナリズム」としての琉球ナショナリズムは、抵抗のための手段としてあるという区別をしている。まぎれもない植民地的差別におかれたポジションからの、それは切実な実践的認識である。
わたしはここで一言つけ加えたい。近代国民国家(nation state)においては、それまでさまざまな身分や集団に属していた人たちが、主権者の臣下として同一の地位におかれ、それが国民となった。このような同一性は、それまであったさまざまな共同体を解体することによって生じた。この同一性がネイションに他ならない。実はネイションとはこのような暴力的過程をへて初めて形成される。しかし同時にこの暴力的過程が集団的に「忘却」されることによってのみ、ネイションは確立される。(『世界共和国へ』柄谷行人)。
琉球王国もこの過程をへているとしたら、その暴力的過程は集団的に「忘却」される。たとえその後の植民地的状況を国家なきネイション(stateless nation)といおうが「マイノリティ・ナショナリズム」といおうが、そのことを「思い出さねば」ならないだろう。まして独立するというならば。
りゅう