紙の本
名物政治史学者が蓄積した知見と人間力を披露
2017/08/22 21:57
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投稿者:セーヌ右岸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
東大教授としての最終講義を半年間かけて6回に分け、その都度バリバリのゲスト教授のコメントや会場との質疑も含めて行うということは、「政治史学の領分」ではあるが、著者の研究・活動範囲が如何に広範で、かつ、深淵かを物語るものであろう。特に、オーラルヒストリー作成に際しては、様々なトップの政治家や官僚を相手にして、いかに生きた話を引き出していくか、知見、人間性、会話術、臨機応変さ等全てを兼ね備えないと、後生に残す歴史資料として耐えうるものにはならないと思う。「書評」や「時評」を書くとき、政府関係委員会・審議会等での議論や根回しも含め、様々な立場の人間心理もつかみ取りながら、政治家や関係者とのエピソード、やりとりの一面が披露されていて本当に面白く、本のタイトルに相応しい内容と感じる。今回改めて読んでみても行動派学者の活動範囲と人間関係の広さに驚嘆する。
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政治史という聞きなれない分野の研究者の最終講義録。といっても6回もあるもの。これがまず面白かった。戦後政治史に興味が出てきた段階と思ってたので、本書はタイムリーであり、躍動感を感じることができた。内容詳細については、バックボーン、理解力が不足してるため、把握はままならずというところだが、それでも楽しめた。独特の雰囲気の著者の講義を、ぜひ生でみてみたい。放送大学へいかれるとのことなので、聴講してみようかと画策。時事放談に出てた人だ、と気づくのが読み始めてから、というのがとほほでありました。
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日本政治史を専攻されている氏の最終講義をまとめた本。各回最初に御厨氏が、テーマについて語り、それへのリアクションをゲストスピーカーが語り、御厨氏がこれに対してコメントするという形式。
語り手の力量が、かなり問われる形式であると思われるが、語り手もゲストスピーカーもかなりの実力者であるので、かなり内容はしっかりしているし、面白い。個人的に興味深かった点は、公共政策のところで、ある政策をめぐり反対派と賛成派が激しくやり合うが、議論の場を離れると両者の仲が良いケースもあるというところである。このような状況からいかにして公共政策が実現するのか見てみたい気がした。
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オーラル・ヒストリー,公共政策,政治史,建築と政治,書評と時評,メディアと政治,の6章から成る.読ませる文脈を熟知されており,引き込まれる.公共政策に於ける話し合いの調整は,最終的に信頼性の獲得即ち人間の問題に帰結する,という結論は納得すると同時に,交渉の困難さの証明でもあり忸怩たる思いも感じる.
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食わず嫌いの政治興味ないも良くないかと思い、取っ掛かりとして読んでみた。
文章や内容自体は面白いんだろうなと客観的には思ったが、
最終的には私、人間や人間が作る社会構造にあまり興味ないんだろうなと再確認した。
著者が面白いと思う人間の側面にまったく興味がわかず・・(すなわち共感できず・・)
ただ客観視してそういう人もいるよね、と納得はできたので★3つです。
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最終講義の模様が、まるで躍動感のあるエンターテイメントのように伝わってくる。内容も深く、オーラル・ヒストリー,公共政策,政治史,建築と政治,書評と時評,メディアと政治の6章構成。
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タイトル「知の格闘」という刺激的なタイトルだが、内容は著者の大学での成果を披露する書籍。
知る人ぞ知る人なのだろうか、本を読むとところどころで大御所感が伝わってくる。
彼は「oral history」の権威らしく、その経験を語るという形式である。
oral historyとはあまり聞き慣れない単語であるが、要は歴史研究のために関係者から直接話を聞き取り、記録としてまとめることをいう。
要は書面で残された記録に加えて、言葉として発生したものを記録しそれも未来の文献として活用するという活動である。
内容は、いまいちピンとこないし、タイトルの知の格闘との言葉にGAPがあります。
いまいち何と格闘しているのかわからないし、格闘するほどギラギラしていないし。
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【読書その103】東大名誉教授の御厨貴氏の最終講義録。著者の数々のオーラルヒストリーの著書は是非手にとって読んでみたい
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○東京大学元教授で放送大学教授の御厨貴氏の著作。
○著者の東大での最終講義(シリーズ)を本にまとめたもの。
○オーラルヒストリーの第一人者である著者の研究の秘訣や思いが満載で面白かった。
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日本政治史におけるオーラルヒストリーの第一人者、御厨氏が大学の最終講義を6回に分けて行った様子を新書にまとめたもの。
それぞれのテーマに対しての御厨氏の講義→ゲストのコメント→御厨氏がコメントに対しての釈明と乱取りという流れの6回である。テーマは、オーラル・ヒストリー、公共政策、政治史、(首相官邸や最高裁判所などの)建築と政治、書評と時評、メディアと政治である。
いろいろな裏話、または考えを知ることができたが、特に官房長官だった後藤田氏の「菅直人は統治がわかっていない」という一文は削除してくれというところだった。表には出てこない、いろいろな人間が作り出した歴史を感じることができたような気がした。
御厨先生には、時事放談などではまだまだ活躍してほしいと思う。
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後藤田さんがオーラルで削除してほしいと言ったのが、公明党が危ないというところ。なるほどやはりそう思っていたんだな。あと管直人を総理にするな、ということ。さすが後藤田さんだ。
研究者はわがままで孤独を好むが同時に不安でたまらない。そういうときに、あなたがやっていることはそんなに頓珍漢ではない、そのまま歩いていけばあなたの行きたい方向が見えるよ、と言ってくれる人に出会うことは実に大事です。
政治家が何かをやっていくときの最終はカラオケで決まる。
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御厨貴センセイの最終講義をまとめた本。最終講義といっても全6回行われ、しかも客員教授である間は、このあとも単位のある講義としてまたやることになったらしい(笑)。6回構成。
第1回はオーラルヒストリー。オーラルヒストリーのことをよくしらなかったけど、聞き書きした回顧録などの形で作っていく歴史資料というような分野のよう。長年オーラルヒストリーをやってきた先生だけあって、いろんな政治家や官僚の話を聞いたときの裏話が面白い、宮沢喜一とか。小泉純一郎も。後藤田正晴と矢口浩一の2人のオーラルヒストリーを対比させて宮内庁・警察・裁判所の人事の関係なんかも分析したらしい、ちょっと気になる。
第4回の「建築と政治」では、先生が歴代首相官邸を訪ね歩いて考えたりした建築と権力の関係の研究の話で、それ自体とても面白いんだけど、最高裁判所の建物と権力の分析についての話も出てきて、これがひじょうに「なるほど」。裁判所側もがんばって「裁判とは」って説明したようなのだけど、建築家に具体的なイメージをもってもらえる説明ができず、裁判官・調査官・事務総局の面々の動線がよくわからないまま、旧最高裁と異なり完全に部署ごとに塊を分ける建物になり、権力側が想定していた以上に権力的で孤独な建物になってしまった。たしかにやたら歩かせる変な動線だな…とは自分や最高裁勤務経験者の話を聞いていても思うところ。建築によって権力がドーンと規定されてしまった例、という話。
そのほか、公共政策、書評やメディアの話に本分の政治学史の話題など。
どうも自分は、最近ようやく今行われてる政治が少し面白くなってきたぐらいで、それを超えて政治史まで深く興味を持つに至っておらず、大学1年生の時なんていっそうそうだったので、「先生と政治史を深く学ばせてもらいたい」とならなくて、それは悔やまれるような、でも多分もう一回大学1年に戻ってもやっぱりそうだっただろうなというようなだけど(回りくどいけど要するに先生のゼミを高校の塾の先生からも紹介してもらってたのに、ほかにやりたいことがたくさんあったのと先端研までの距離と初回に読んだEHカーの「歴史とは何か」にそこまで入り込めなかったために結局ゼミを取らなかったという個人的な話)、この本で、本当に、先生の関心領域の広さ・好奇心旺盛さとそれぞれの掘り下げの深さを知ることができて、すごく面白かった。「政治史学からこんなところに行けちゃうんだ!」というような。
実際、研究の傍らというか、先生が実際に携わった国の政策も幅広く、この本で話題に上ったものとして、勲章制度、靖国問題、震災復興構想会議と。こういうのに呼ばれるもそれぞれの分野で「ブルドーザーでガーッと耕す」みたいなやり方でそれぞれ成果をあげてるからだろう。
「一つの分野をコツ、コツ」という研究者イメージをいい意味でぶっ壊しちゃう先生の学者生活の話、読む前は「どうかな」なんて思ってたけど、たしかに「知のエンターテインメント」という言葉が合う本でした。
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新聞で時々見かける名前程度の知識しかないところで読んでみた。
6つのテーマについて、本人の独演、専門の研究者のコメント、質疑応答、で構成されている。
まず感じるのは、本人、登場する研究者がみんな東大。
きっと、聴講者もそういう人たちなんだろう。
中身は面白い。
アカデミック一辺倒ではなくて。
かなりベタなユーモアがあって、読み進められる。
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政治史の御厨教授の最終講義6回分のまとめ。
政治史を、オーラルヒストリー、文献、建築など色々な角度から見ていること、メディアにもテレビや書評を通じて露出していることから、政治史そのものではなくそれぞれの切り口がどういうものかについて6回の講義を行っている。
オーラルヒストリーについては、西欧からの導入であるが、日本に広まって来た感があり、インタビュイーもこなれて来ている。が一方メディアの出方も多様になっているため真の姿を見極めるのはやはり難しいのかもしれない。御厨教授は元々は官僚を相手に戦後の高度成長を裏付ける政策に取り組んでいたが、近年はより政治家より担って来ている。
旧来のテレビ新聞といったメディアは、受け手も固定化され、作り手はその中で流しているだけになってしまっている。
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退官時に出す本として、本人は満足するだろうとは思う。大層な題名だし。
非常に貴重な研究をし続けていたということは良くわかるし、一流の学者であることも良く分かる。
でも、それって世の中の何に役立つのか、歴史という学問にとってどんな価値があるのか。それを説明してくれないと、ムダなことに思えて仕方がない。
そこをしないのか、できないのかわからんが、それが学者オブ学者なのかもしれない。