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価格では需要と供給が一致しない市場の存在。臓器移植の患者とドナー、研修医と病院プログラム、人気企業への就職、公立学校の割り振りなど。そうした市場にある、抜けがけ、混雑などの問題、ネットやコンピュータの利便性や処理速度によって拡大している一方、最適・効率的なマッチメイキングを目指すマーケットデザインの工夫もITを通じてなされていることが分かる。
現実の役に立つ経済学だと感じるが、例えば人気企業への就職でも双方のグループとも相手方の十分かつ平等な情報を持ってはいないし、結局のところ就職・採用してみて改めて分かること・変化することもありうるので、最適はモデルでしかないとも感じる。
16-85
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経済学者はこれまで市場を所与とし、そのふるまいを研究してきたが、これからは市場の設計に関与できることを具体例(臓器交換、学校選択)で詳細に示している。日本での大学新卒の就活に関して、本書の知見を活かして、学生、会社双方にとって効率的にならないか?と考えた。
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===qte===
この一冊フー・ゲッツ・ホワット アルビン・E・ロス著 マッチング理論で社会制度に示唆
2016/5/15付日本経済新聞 朝刊
末期腎不全の患者のために、自分の腎臓の片方をあげたいドナーがいる。だがそのドナーと患者は免疫などの相性が悪く、移植ができない。これは医学的には不適合だが、経済学的には需給の不一致である。ドナーが供給する腎臓を、患者が需要しない。需給を一致させるには、ドナーと患者のペアたちを、適合するよう組み替えればよいのだ。これを腎移植マッチングという。
その定式化を行い、数学的に解き、実際に制度を作ったのが本書の著者だ。2012年のノーベル経済学賞に輝いた。著者の活躍は多岐にわたり、研修医と病院を組み合わせる研修医マッチング、学生と公立学校を組み合わせる学校選択マッチングなどを生み出した。本書ではマッチングの理論と実践を平易に解説している。
マッチング理論は、金銭取引に適さないものの組み合わせを決めるのに、とりわけ有効だ。腎臓、学校の入学資格、職場の内定は、その好例である。近い将来、米国には彼が設計した学校選択マッチングを経て進学し、研修医マッチングを経て移植医になり、腎移植マッチングで手術する人が現れるだろう。
著者が実務家として細心の注意を払い、研究者として深い関心を寄せるのは「不快感」だ。腎臓でいうと、その金銭取引は多くの人が不快感を持ち、違法とされている。しかしドナーの交換であれば違法でなく、不快感も持たれにくい。腎移植マッチングは、人々の不快感を刺激しないという社会的な制約のもとで、希少資源の最適配分に挑むのだ。
彼は不快感にもとづく金銭取引の禁止を、よいとも悪いともいわない。ただしメリットとデメリットを勘案せよという。そして安易な禁止によるデメリットに注意を促す。理由の一つは、禁酒法時代にマフィアが繁栄したように、違法化による闇市場の誕生には弊害が大きいというものだ。
何を金銭取引の対象にするのか、しないならば代わりにどう対処するのか。社会制度は天や自然から与えられるものではなく、人間が作るものだ。本書はよりよい社会制度の構築に大きな示唆を与える。
巻末には、彼の弟子で、現在は米スタンフォード大学で同僚の小島武仁氏が解説を寄せている。著者の人柄や普段のエピソードなどが楽しく読め、本文の味わいが一層深まる。題名は『フー・ゲッツ・ホワット』(誰が何を得るか)だが、誰もがこの本を得るべきだ、と言ってしまいたい。
原題=Who Gets What―and Why
(櫻井祐子訳、日本経済新聞出版社・2000円)
▼著者は51年生まれ。マーケットデザインの研究で知られる米の経済学者。12年にノーベル経済学賞。
《評》慶応大学教授 坂井 豊貴
===unqte===
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プライスで成り立つ市場(コモディティ)とマッチングで成り立つ市場の違い意識したことはあまりなかったですが、本書はこの点を明確化させてくれます。そして、後者については人為的にマーケットデザインが必要となってくる。そうしなければ、例えば就職活動中の青田刈りが起き、これは企業と求職者の両方が十分な情報を持たないままマッチングされることになり、非効率な市場となってしまう。つまり、両者がゲーム理論や戦略を排して純粋に相思相愛のマッチング(ナッシュ均衡)を行えるように市場をつくることを目指すといえます。
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2012年ノーベル経済学賞のマッチング理論、待望の書。この本を読んで、世の中の仕組みを変えよう!入試も研究室配属も就活も、多くの人が困っている問題を解決する理論がある。
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matching は経済学の一部分なの?
だとすれば,役に立つ経済学があることを初めて知った。
はるか昔修士の学生の頃に平面上の点群の最小重み完全マッチングの研究も行ったので,マッチングは数理的な概念だと思っていたのである。
脚注で引用さえている論文を見るとOR関連の論文誌に発表されたものもあるし。
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マーケットデザインでノーベル賞を受賞した著者自身による本書はかなり具体的な例をたくさんあげており、数学的な話もなくかなり読みやすい。マーケットというものの存在意義自体についても考えさせられる点が多かった。
例えば小麦なども、もともとは相対での取引であった。そこでは実際に小麦の質を見聞し、農家の素性を調べ、、、ということが必要であったが、市場が「十分に厚みを増す(買い手はどの売り手からも買え、売り手はどの買い手にも売ることができる)」ことによって小麦市場はコモディティ化した。コモディティ化してしまえば品質や種類は格付けされ、買い手は実際に確かめなくても安心して買うことができるようになった。
コモディティ市場の対極にあるのがマッチング市場である。こういう市場ではデザインによって市場がうまく機能したり厚みを増すように改善できる。
物々交換取引が難しいのは「自分がほしいと思うものをもっていて、かつ自分のもっているものをほしがっている相手を見つける」という点にあり、これが「欲求の二重の一致」という難問である。貨幣を媒介とできる場合は解決が簡単である。自分がほしいものをもっている人さえ見つければよい。しかし、腎臓移植のように金銭を解することが望ましくない場合は
金銭を介さずに効率的に機能する、クリアリングハウスをデザインする必要がある。
・腎移植
腎臓の場合はドナーAからレシピエントAに移植すればそれで終わりだが、ドナーAとレシピエントAの組織型が適合しない場合も多く、そのような場合、別の腎移植ペアを見つけてきてドナーAからレシピエントB、ドナーBからレシピエントAとすることで、0件の腎移植が2件に増える。このペアの数をどんどん伸ばせばそれだけ恩恵を受けられる患者が増える。ただし、自分のレシピエントが移植を受けたらドナーになるのを拒否するというペアが出ても困るので、通常はすべてのペアを同時に手術する。そのため、チェーンをあまり長く伸ばすことができないでいるが、レシピエントが腎臓を受け取ってから同じペアのドナーが提供するまでに数ヶ月の期間が空いたことも何度かあり、約束を反故にするような人はこれまでいなかったという。
・抜け駆け
研修医のフェローシッププログラムの責任者はできるだけ優秀な研修医を採用したいと思っている。どのプログラムも同じことを考えているため、早期採用がどんどん進み、三年間の研修医生活の一年目でプログラム先が決まることが常態化してしまい、その結果、採用側も人となりがわかりやすい地元の研修医の採用にかたよるということになっていた。
著者らは早期採用の中止を提案したが、これは受け入れてもらえなかったため、早期オファーを受けた応募者は、後でクリアリングハウスを介してよりよいオファーがあれば断ってもよいということにした。この方式であれば、研修医の資質を見極める前に抜け駆けして青田刈りをすることのインセンティブがなくなるため、早期採用がなくなった。囲い込んでも優秀な研修医ほどよりよいオファーを後で受けて断ってくるため、プログラムとしては期待を下回る���果しかあげられないからである。
・早すぎる市場
証券市場ではサーバーのすぐ近くに端末を置き、ミリ秒単位の取引を繰り返すトレーダーがいるが、リアルタイムの取引をやめ、一秒ごとに板寄せする方式にすればよい
・シグナルを送る
就職や大学(米国では)の出願は、近年随分簡単になっており、数百件の応募を一気にすることもできるようになっている。受け取る側も多量の応募を受け取るため、有能な応募者を見附、本当に関心を持っている(面接をするに値する)者をよりわけることが困難になっている。カバーレターに志望動機を書いたり、見学に行ったりすることは本当に関心を持っていることを相手に示すシグナルとして働く。オークションなどは、最高入札者が「自分はその品物を他の誰よりも高く評価している」というシグナルであり、しかもそのコストが無駄にならないため、オークション形式は古くから重宝されてきた。
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マーケットプレイスは市場の厚みが必要。
決まった時間に取引するのは、市場の厚みをつけるため。
ただし、混雑をどうやって避けるか。
コモディティ市場によって厚みを実現できる。
クレジットカードのポイントは、最終的には消費者が払っていることに注意。
腎臓交換。金銭を媒介にしないマーケットを機能させるには?
クリアリングハウスを通じて望ましい交換の連鎖を見つける。
閉じたサイクルの腎臓交換は同時に行われないと提供を受けられないリスクがある。
提供だけをするドナーが存在すれば、連鎖が切れるリスクを避けられる。
マッチングの容易な患者を出し惜しみする=仲介業者の常套手段。
抜け駆けの問題=ロースクールの卒業生の青田買い。
時限付きのオファーを出す。
参加者の自制心頼みでは無理。
クリアリングハウスによって解決できる。
電子式注文台帳は先着順。
1秒ごとに板寄せで取引すれば、高速回線争いをする必要がない。
優れたマーケットデザインが採用されるとは限らない。
公務員試験の日に招集するのは時限付きオファーと同じ。
オークション方式でもスピードが大事。
AIRBNB、UBERもスピードがあるから成功した。
公立学校の制度。
留保付きで入学者を順に決める=受け入れ保留アルコリズム。
真の選好を表すことが最善であるようにデザインする。
結婚の鉄則=夫は妻より、妻は夫より幸せになってはいけない。
早期入学許可制度=早期に応募することは協力なシグナルになる。
恋愛でのシグナリング=2本しかないバラを添えてオファーする。=孔雀の羽根。
長い行列はレストランが美味しいというシグナリング。わざと行列を作らせる。
第二価格オークション=真の自分の選好価格を入れることが一番いい。
第二価格+αで購入できるオークション。
競り下げ方式オークション。切り花の卸売。早く決まる。=ダッチオークション(オランダの切り花市場で使われている)
金銭を介した取引に不快感を感じる場合=夕食に招待された場合のお礼。臓器売買。
臓器を売った者は英雄になれるか。合法化されたときに、不快感が解消されるか。
自由市場は注意深く作りこまれなければならない。レッセフェールの原則では解決しない。
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参加者が個性を持たないコモディティ市場では、価格のみが取引の成否を左右する。一方、参加者の個性こそが重要であるマッチング市場では、その効率性は市場デザインのディテールの巧拙で決まってくる。本書はスピード、混雑、コスト等の切り口から市場デザインの重要性を説き、マッチングの一般理論を分かりやすく解説するもの。
著者は情報経済学の分野でノーベル賞を受賞したマーケットデザインの権威。と聞くと象牙の塔に籠った衒学的な内容を予想しがちだが、本書では実際に著者を始めとする研究者グループが腎移植や研修医リクルーティングの実地でトライアルアンドエラーを繰り返し、実践と理論のフィードバックを試みる様が描かれており、意外にスリリングな内容。より理論的な内容を望む向きには数学の一般向け啓蒙書で簡単な解説があるものが複数出ている。
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マーケットデザインの分野で2012年にノーベル経済学賞を受賞したアルビン・E・ロスの本。臓器の交換移植や学校選択のアルゴリズムが紹介されている。ゲール・シャプレーメカニズムはNHKのオイコノミアでも紹介されている。
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マッチメイキングとマーケットデザインのお話。著者はノーベル賞受賞の経済学者。紹介されたシステムは幼稚園とかのマッチングシステムに導入したら、待機児童減りそうだなと。こういう本もたまに読むと面白い。学校選択と腎臓交換の例が多いけど、結構おすすめ。
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【読み合わせのいい本:システムシンキング入門】
http://booklog.jp/item/1/4532110416
・ ほかの選択肢が手に入りやすい、厚みのある市場では、買い手に取ってこれほど損な取引を売り手が提供し続けるのは難しい。※クレジットカード加盟店が、カード利用コストを消費者に転嫁しようとした話
・ マーケットプレイスにおいては市場に厚みをもたらし、混雑に対処し、安全かつ簡単に参加できるようにするという問題を解決する必要があるが、これらの問題は市場が発展するにつれ、何度も繰り返し解決していかなくてはならない
・ 参加者全員が市場で十分な経験を積み、どんなことが起こるかを知っているとき、次元付きオファーは出されない。このようなとき、経済学では市場が「均衡している」という
・ マーケットデザインを考える際には、よいアイデアがあるだけでは必ずしも市場を修復できない。参加者の幅広い支持が得られなければならない
・ 市場の失敗の根本原因に対処しないまま、対症療法的にデザインを少しずつ変更するだけでは、まるでうまくいかない
・ インターネットはコンピュータの処理速度で動作するが、それを利用する人間は、考えを巡らせ、行動を起こすための時間を必要とする。したがって市場がデジタル速度で動作するには、すべての過程から人間の介在を排除しなければならない。たとえば、人間の熟考が必要なプロセスをより早い段階に移す方法がある
・ エアビーアンドビーが巨大化し、膨大なホストと旅行者を集めるようになると、宿泊客とホストは予約を確定するまでに何度も手順を繰り返さなくてはならなくなった。大手ホテルは全室一括チェックできるのに、エアビーアンドビーは部屋の一室一室に照会をいれるようになっていた。
・ 価値があるのに埋もれている資源があり、それを探し当てて譲り渡すのが大変なとき、適切なマーケットプレイスを構築できれば成功できるチャンスがある。
・ 当初ebayでは、ほとんどの商品がオークション形式で出品されていたが、最近では固定価格での出品がほとんどだ、これは顧客が欲しいものを欲しいときにかえるようにするという意味で、取引を早くする方法のひとつである。この方式では、顧客がオークションが終わるのを待たなくてもいいし、競り負けて別のオークションに入札しなくてはならないリスクを負うこともない。
・【市場を作る3ステップ】
①大勢の買い手と売り手を集めて市場の厚みを増す
②その結果起こりうる混雑を解消する−厚みのある市場を素早く機能させる
③安全で信頼性の高い市場にする
・ 市場の安全性と信頼性←評価・評判
・ 真の選好を報酬で評価する(ボストンの幼稚園の例)
・ 欠陥のある市場では、人は物理的に逃れるか、裏ルートや闇市場を利用することによって、そのような市場を去る
・ オンライン→市場の厚みを増すことはできるが、シグナルは関心が低くなりやすい
・ 第二価格オーディションの方が第一価格オーディションよりもひとつひとつの入札額は高くなる。(第一価格では、入札者が真の評価学で入札するのは、高く買いすぎるリスクがあるので安全ではないからだ)
・ 競り下げオークション(オランダの花市場)値段を下げていって、はじめにクロックを押した人が買える
・ 似たモジュールが複数ある場合、複数社がそれぞれに対して入札をすることで、他社もその状況を考慮してオークションが可能になる
・ 適切に機能する市場は、私たちの選択の幅を広げるため、自由に機能する市場は、私たちの繁栄だけでなく、自由とも関わってくる
・ マーケットデザインも性的なものではなく、既存の観光やほかの市場とつながるために、少しずつ変化しながら発展していくことが多い
・ マッチング理論とは、様々な好みを持つ経済主体をどのように引き合わせる茅、限られた資源をどのように人々に配分するかを研究する理論である。
・ マッチング市場では、価格で需要と供給を一致させることができないので、かわりにマッチメイキングの精度をうまく設計する必要がある
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マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学
Who Gets What and Why:
The New Economics of Matchmaking and Market Design
http://www.nikkeibook.com/book_detail/35688/
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マーケットデザインの入門書ということで、新聞や雑誌の記事で読んだことがある内容だった。
11章の「不快な市場〜」は興味深い内容だった。
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市場における需要と供給というのは自然発生的に起きている限り、人より抜きん出ようとしたり損を被る人が出てきてバランスが崩れやすい。
それをマッチメイキングとマーケットデザインという学問によって解決するという本。
ただ取り扱っている内容が必ずしも日本人にとっては身近なものではないので興味がわきづらい例が多い。
少々堅苦しい内容なのでもう少し噛み砕いだ文章だったら良かったです。