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電子書籍
中国の歴史 近・現代篇(一)
著者 陳舜臣
列強の蚕食に苦しむ清国では、甲午の役(日清戦争)の敗戦で不満が爆発。保皇派の康有為は公車上書を著し、立憲君主制を提唱する。義和団事変で8ヵ国連合軍が紫禁城に乱入し、権勢を...
中国の歴史 近・現代篇(一)
中国の歴史 近・現代篇 1 (講談社文庫 中国歴史シリーズ)
商品説明
列強の蚕食に苦しむ清国では、甲午の役(日清戦争)の敗戦で不満が爆発。保皇派の康有為は公車上書を著し、立憲君主制を提唱する。義和団事変で8ヵ国連合軍が紫禁城に乱入し、権勢を誇った西太后も光緒帝(こうしょてい)と西安に逃れた。王朝打倒を目指す孫文ら若き革命家たちは集結を始める。中国近代史の精華〈全二巻〉。
目次
- 黄龍振わず 義和団前後
- 一八九五年・春
- 黄色い虎
- 清宮秘史
- 興中会蜂起
- 変法の風
- 変法への道
- 孤立無援
- 維新終焉
- 義和団誕生
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紙の本
視座を変えつつ読み返したくなる
2008/03/30 21:43
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もりそば - この投稿者のレビュー一覧を見る
日清戦争後からの、中国の歴史を描いたもの。
著者の陳瞬臣先生は、静かな文体で列強に蹂躙される中国を語ってゆく。だがそれだけに、清王朝の迷走、改革の志を持つ康有為、やくざまがいの列強、生活苦から狂気にかられる国民の姿が、クッキリと映し出されている。
さまざまな人の思惑が錯綜するだけに、その情報量も物凄い。
どの登場人物に興味をおぼえるかは、読者によって違うだろうが、私は西太后に注目した。
彼女は、皇后でありながら、光緒帝を傀儡とし、清王朝の実権をにぎっていた。
西太后の目は、世界ではなく、紫禁城の中の権力争いに向けられていた。光緒帝を旗印とした変法派を弾圧するが、自分にはさしたるビジョンがあるわけでもない。
ひとえに自分の権力を失うのをおそれただけ。
義和団が外国人を排斥したときには喝采すら送った。列強からどのような報復を受けるのか想像すらしなかったのだろう。
私はユリウス・カエサルの言葉を思い出した。
「人間なら誰もが現実を見ることができるわけではない。多くの人は、自分の欲する現実しか見ていない」
西太后には現実が見えていなかった。
中華思想に浸ってきた中国人が、自らの国を弱小国だと認めることは、たいへんな勇気が要っただろう。
その現実をしっかりと直視し、改革を光緒帝に奏上した康有為たち変法派は、地盤の脆弱さから西太后に攻撃され、敗れてしまった。彼らも「地盤の脆弱さ」という現実が見えていなかったのかもしれない。
現実を直視するのは難しい。直視したとしても、現実を変えるためには、正しい、持続した努力をしなくてはならない。
そのために、孫文は世界中を飛び回っているが、彼の「現実を変えるため」の行動によっても大変な血が流れることになるだろう。
それに非を唱えるつもりはないが、改革を成すということの難しさを痛感させられる。
私はこのような感慨を抱いたが、読者の持つ視座によって、この本から得るものは違うだろう。孫文と日本人との友情、列強の横暴、生活苦から義和団に走る群集心理など、示唆に富んだ話がたっぷり詰まっている。
私自身も、時折視座を変えつつ読み返していきたい。ずっと本棚に置いておきたい本である。
紙の本
陳舜臣さんによる中国近現代史、小説でなく通史です。
2009/02/26 02:20
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この文庫、元々版元が違ったそうですが、(多分平凡社)
同じく、陳さんの十八史略を出している講談社文庫から再販されたのをずーっと覚えておいて
このたび読んでみました。
陳舜臣さんに中国史では、いつもお世話になってきました。
阿片戦争、太平天国の乱、と陳さんの著作とともに読んできて、
本書では、陳さんの書かれた「江は流れず 小説日清戦争」の後あたりから、
中国近・現代史をカヴァーすることになります。
上記二冊は、小説スタイルだったのですが、林則徐を中心にした「阿片戦争」は、歴史小説。
「太平天国の乱」では、中国の商家を登場人物に加えた、より濃厚な小説スタイルだったのですが、
本書は、小説スタイルでなく、通史の形をとっています。
元々、二十数冊で完結の予定だったそうですが、
次々に現れる、新資料に嫌気がさして、途中でやめたそうです。(これは建前でなにか、別の理由もありそうです)
この文庫二冊で描かれているのは、浅田次郎の「蒼穹の昴」(これは、ほんとうに凄い作品ですオススメ)
(続編が出ましたね、、読みたいなぁと思っています)
でも描かれていた、戊戌の政変。と義和団の乱。
そして、メインとなる孫文と辛亥革命です。辛亥革命が袁世凱の仲立ちによって講和されるところで終わりとなります。
まぁ多少、清朝末期の開明家の康有為・梁啓超や、孫文ら革命家のところでは、
筆の高鳴りを感じますが、(私も昔は、陳さんの著作をすべて是として受け止めていましたが、)
(こんな偉そうなことを感じるようにもなりました)
割と冷静な筆致できちきちと事実のみ書き連ねてあります。
やっぱり清朝は、満州族ということで漢民族からすると侵略王朝ということで
絶対悪になりやすいのかもしれません。
ただし、この筆の高鳴りもほんのちょっとだけで、本当に至って冷静な筆致です。
よく自分の史観、主観がもろに入った歴史書、歴史小説を書く人もいて
それは、それでおもしろいのですが、この冷静さ、フェアさが、
私が陳さんをチョイスする最も大きな理由となっております。
書かれているペースだと、二十数冊で完結というのも判るのですが、
(それぐらい丁寧)
やっぱり最後までというか、この続きを書いて欲しかったなぁと正直思います。